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中卒で裁判官になることは現実的に可能?
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中卒で裁判官になるにはどんな条件がある?
一般的に「裁判官=高学歴でないとなれない」というイメージがありますが、実は大学に進学せずとも裁判官を目指すことは可能で、中卒者も裁判官になれます。
本記事では、中卒から裁判官になる方法と手順を詳しく解説していきます。
裁判官に向いている人・向いていない人の特徴、裁判官になるメリット・デメリットも解説しているので、裁判官について詳しく知りたい方はぜひご一読ください。
中卒で裁判官になることはできる
中卒者は、以下のルートで裁判官を目指すことが可能です。
- 司法試験予備試験に合格する
- 司法試験(本試験)に合格する
- 1年間の司法修習を受ける
- 修了考査に合格する
司法試験を受験するためには「法科大学院の課程を修了する(要件を満たせば在学中も可)」もしくは「司法試験予備試験に合格する」必要があります。
中卒者の場合、司法試験予備試験(予備試験)に合格すれば、司法試験の受験資格を得られます。
まずは、第一関門として予備試験の合格を目指しましょう。
とはいえ、予備試験・司法試験に合格するだけでは裁判官にはなれません。
さらに1年間の司法修習を受け、「二回試験」と呼ばれる修了考査に合格すれば晴れて裁判官になれます。
裁判官になる基本条件
中卒者が裁判官になるためには、以下3つの試験に合格しなくてはなりません。
- 司法試験予備試験
- 司法試験(本試験)
- 二回試験(司法修習の修了考査)
日本弁護士連合会が公表しているデータによると、2022年度の司法試験予備試験の合格率は3.6%、2023年度の司法試験予備試験に合格した人の司法試験(本試験)の合格率は92.6%という結果が出ています。
予備試験の合格率はかなり低いものの、予備試験さえ突破できれば司法試験には高い確率で合格できることがわかります。
取得する難易度が高いイメージが強い法律系の資格において、司法試験予備試験に合格するのはどのくらいの難易度なのでしょうか。
今回は、司法書士試験と行政書士試験の令和5年度の合格率を比較してみました。
試験名 | 合格率 | 受験者数/合格者数 |
司法試験予備試験 | 3.60% |
受験者数13,004人 |
司法書士試験 | 5.19% | 受験者数13,372人 合格者数695人 |
行政書士試験 | 13.98% | 受験者数46,991人 合格者数6,571人 |
ご覧の通り、司法試験予備試験は法律系の資格のなかでもかなり難易度の高い試験です。
ちなみに、司法試験の本試験に合格するまでに必要な勉強時間は、約2,000~5,000時間といわれています。1日5時間勉強すると仮定した場合、最低でも1~3年はかかります。
一方で、司法書士試験は約3,000時間、行政書士試験は約600時間で試験に合格できる知識を習得可能です。
勉強時間の目安を踏まえると、司法試験に合格するまでの道のりはかなり険しいです。
さらに、司法試験に合格したあとは、1年間の司法修習で裁判官になるための実践的な訓練を受けます。
司法修習を修了後、修了考査に合格できれば裁判官としての資格を得られます。
二回試験の合格率は毎年約99%なので、司法試験の本試験さえクリアできればほぼ確実に合格できるといっても過言ではありません。
日本弁護士連合会「弁護士等の実勢」(参照 2024-06-18)
法務省「令和5年度司法書士試験の最終結果について」(参照 2024-06-25)
行政書士試験研究センター「令和5年度行政書士試験実施結果の概要」参照 2024-06-25)
法務省「司法修習生採用者数・考試(二回試験)不合格者数」(参照 2024-06-25)
中卒で裁判官になる方法と手順
ここでは中卒で裁判官になる方法と手順ついてそれぞれ詳しく解説していきます。
- 司法試験予備試験に合格する
- 司法試験(本試験)に合格する
- 1年間の司法修習を経て修了考査に合格する
仮に予備試験に1発で合格したとしても、勉強期間を含めれば裁判官になるまでに約3〜4年はかかります。
裁判官になるためにどのような手順が必要なのか理解を深めていきましょう。
手順①司法試験予備試験に合格する
中卒で裁判官になる手順として、まずは司法試験予備試験に合格して、司法試験の受験資格を得る必要があります。
予備試験は受験資格が設定されていないため、年齢や学歴を問わず誰でも受験できるのが特徴です。
試験の流れは、「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」という順で実施されます。
試験形式 |
科目 |
日程 |
短答式試験 | 【計8科目】 民法、民法、民事訴訟法、憲法、行政法、刑法、刑事訴訟法、一般教養科目 |
毎年7月頃 |
論文式試験 | 【計9科目】 ・必須科目 憲法、行政法、刑法、刑事訴訟法、法律実務基礎科目(民事・刑事)、民法、商法、民事訴訟法 ・選択科目 倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)から1科目選択 |
毎年9月頃 |
口述試験 | 【計3科目】 民事訴訟実務、刑事訴訟実務、法曹倫理 |
毎年翌年1月頃 |
予備試験は、試験科目数が多いうえに出題範囲がかなり広いです。
法律の知識がまったくない人が独学で予備試験の合格を目指すのはほぼ不可能なので、予備校に通ったり通信講座を受講したりして継続的に勉強を進めていく流れが一般的です。
予備試験に合格すると、次のステップである司法試験(本試験)に進めます。
法務省「司法試験予備試験」(参照 2024-06-18)
手順②司法試験(本試験)に合格する
予備試験に合格したら、司法試験(本試験)を受験して合格を目指します。
司法試験は、「短答式試験」と「論文式試験」の2種類あり、毎年7月頃に4日間かけて実施されます。
試験形式 |
試験科目 |
短答式試験 | 【計3科目】 憲法、民法、刑法 |
論文式試験 | 【計4科目】 公法系科目、民事系科目、刑事系科目、選択科目 |
なお、司法試験の受験期間は、予備試験合格発表後の最初の4月1日から5年間という制限が設けられています。司法試験が開催されるのは年1回なので、受験にチャレンジできるのは「最大5回まで」ということになります。
法務省で公開されている令和4年度・令和5年度の司法試験の合格者数を受験回数別にまとめたデータをもとに、受験回数別で合格率を算出しました。
令和4年度 (合格者数1,403人) |
令和5年度 (合格者数1,781人) |
|
1回目 | 74.6%(1,046人) | 88.9%(1,584人 ) |
2回目 | 12.8%(180人) | 6.9%(123人) |
3回目 | 6.3%(88人) | 2%(35人) |
4回目 | 3.3%(47人) | 1.3%(24人) |
5回目 | 3%(42人) | 0.8%(15人) |
令和4年度・令和5年度ともに1回目の受験者の合格率が圧倒的に高く、受験回数が多くなるにつれて合格率が下がっているのがわかります。
後ほど、司法試験に合格するための試験対策法をご紹介するので、1回目で合格できるようにしっかり対策を進めていきましょう。
法務省「司法試験」(参照 2024-06-18)
法務省「令和5年司法試験の採点結果」(参照 2024-06-18)
手順③1年間の司法修習を経て修了考査に合格する
司法試験に合格したあとは、司法修習を受講します。
司法修習とは、司法試験の合格者が法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)になるための教育制度を指します。
司法修習の期間は、2024年時点で1年間です。
司法修習生は、裁判所から月額13万5,000円の基本給付金が支給されます。
最初は埼玉県和光市にある司法研修所に約1カ月間通い、座学を中心に基礎的な部分を学んでいきます。
そのあとは、指定された都道府県で約8カ月間に及ぶ実務修習を受ける流れです。実務修習では、裁判官・検察官・弁護士それぞれの立場で実際の仕事を経験し、法曹三者に欠かせない実務能力と高い倫理観を習得します。
実務修習の配属先の地域は、希望を出せるものの、必ずしも通るとは限りません。
自分が住んでいる地域から遠くのエリアに配属されるケースも珍しくなく、司法修習の期間中は住居を何度か変えざるを得ない可能性が高いです。
自分でアパートを借りている人を対象に3万5,000円の家賃補助もありますが、司法修習生は金銭的にもスケジュール的にも余裕がない生活を送ることになります。
司法修習を修了したのち、2月~3月頃に2回に分けて二回試験と呼ばれる「修了考査」が行われ、無事に合格できれば法曹として働くことが正式に認められます。
合否は、司法修習の成績と考査の結果をもとに決められ、とくに実務修習中は好成績を残せるように努力しなければいけません。
とはいえ、予備試験・司法試験に合格できる実力さえあれば、司法修習期間も修了考査も問題なく突破できるといわれているので、「ここを乗り切れば裁判官になれる!」という強い気持ちを持って走り抜けてください。
なお、1年間の司法修習期間において、欠席日数が45日を超えると修習を修了できなくなるので、体調管理に気を付けましょう。
中卒で裁判官になるための司法試験の対策方法
ここでは、裁判官になるうえで必ず合格しなければいけない司法試験の対策方法をご紹介します。
中卒者の場合、司法試験(本試験)の受験資格を得るために、司法試験予備試験に合格する必要があります。2022年度の予備試験の合格率は3.6%と難易度がかなり高いため、しっかり試験対策を行わないと合格は厳しいです。
しかし、予備試験合格者が司法試験を受けた際の合格率は92.6%という数字が出ていることから、予備試験さえ突破できれば司法試験も合格できるといえます。
効率的に学習を進めていき、司法試験の合格を目指しましょう。
日本弁護士連合会「弁護士等の実勢」(参照 2024-06-18)
勉強のスケジュールを立てる
司法試験は、膨大な出題範囲をカバーする必要があるため、計画的に学習を進めることが大切です。
短期・中期・長期の学習スケジュールを立て、定期的に進捗を確認しながら勉強していきましょう。
司法試験の科目は、「公法系(憲法・行政法)」「民事系(民法・商法・民事訴訟法)」「刑事系(刑法・刑事訴訟法)」の7つに分類されます。
予備試験は7科目すべて、司法試験(本試験)は憲法・民法・刑法の3科目から出題されます。
科目の勉強順序に正解はありませんが、以下のように学習を進めると効率的です。
- 参考
- 【公法系科目】
憲法…法律を理解するために必要な基礎知識です。
行政法…憲法の知識を習得しておくのが前提となる部分が多いため、憲法を先に勉強しておくのがおすすめです。
【民事系科目】
民法…他の民事系科目の基盤となります。
商法…商法は民法の延長上にあるため、民法を理解していることが前提です。
民事訴訟法…民法・商法の知識を活用するので、最後に学習するのが効果的です。
【刑事系科目】
刑法…刑事系科目の基本となります。
刑事訴訟法…刑法の知識を活用するため、刑法を学習後、刑事訴訟法の勉強を行うのが効率的です。
また、予備試験・司法試験(本試験)ともに、短答式試験と論文試験があります。
難易度の高さを踏まえると、まずは論文試験の対策に時間を割くのがおすすめです。
論文試験は、法令・判例の理解を深めたうえで論理的思考力や問題解決能力が求められます。
そのため、時間をかけて繰り返し問題を解き、自分の見解を論理的に展開していく力を身に付けなければいけません。
そう簡単に習得できる力ではないので、早めに論文の基礎的な書き方を理解したあと、どんどん論文を書いていきましょう。
基礎知識を積み上げて問題演習を繰り返す
司法試験を勉強する際は、「基礎知識のインプット→問題演習」の繰り返しが基本です。
基礎知識を学習したのち、きちんと習得できているかどうか確認するために参考書などを使って過去問題を解いていきます。
過去問題を解くことで、出題傾向や問題形式に慣れるのはもちろん、時間を計ることで本番を想定した実践練習ができる点もメリットです。
このように、繰り返し学習すれば「自分の苦手な分野」を把握できます。
出題範囲が広い司法試験は、いかに早く自分の苦手分野を理解して克服する時間に充てられるかどうかも合格する重要なポイントです。
なお、短答式試験と論文式試験では勉強方法のポイントが異なります。
以下の内容を参考にしながら、効率よく学習を進めていきましょう。
- 参考
- 【短答式試験の勉強方法】
1.基礎知識をインプットした範囲の過去問を解く
2.試験直前に短答式試験全体の過去問を解く
【論文式試験の勉強方法】
1.論文の書き方を習得する
2.論証を覚える
3.論点の出し方を習得する
4.あてはめ(論証を活用して実際の事案の事実を見極めて判断する)を行う力を習得する
5.時間を計りながら解いてみる
予備校を利用して模擬試験を受ける
司法試験の合格率を上げるためには、予備校に通うのが必要不可欠です。
司法試験は、医師・公認会計士に並ぶ難関国家試験といわれており、法学の知識を持ち合わせていない中卒者が独学で合格するのは極めて困難です。
法科大学院進学者でも大学の授業や独学のみだと限界を感じるケースが多く、予備校を活用しています。
【予備校に通うメリット】
- 経験豊富な指導者から直接学べる
- 模擬試験の結果を通じて、自分の実力を確認できる
- 同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨することでモチベーションを維持できる
予備校では、定期的に模擬試験を実施しているため、本番さながらの試験対策を行えるのが魅力です。
模擬試験を経験しておけば、当日は落ち着いて試験を受けられるのはもちろん、自分の学力レベル、得意・不得意の分野などが理解できます。
模擬試験の日程は予備校によって大きく異なりますが、2~6月あたりに開催する場合が多いです。
試験対策に役立つので、ぜひ予備試験に通って模擬試験も受けてみてください。
中卒で裁判官になったあとのキャリアパス
ここでは、中卒で裁判官になったあとの代表的なキャリアパスを3つご紹介します。
裁判官として活躍する以外にも、他の法曹に就いたり、法律の知識を活かせる別業界に転職したり、仕事の選択肢はさまざまです。
5年後、10年後、20年後にどういったキャリアを歩んでいたいのか考えながらチェックしていきましょう。
裁判官として昇進する
裁判官の代表的なキャリアパスは、実務経験を積んで昇進を目指す流れです。
裁判官のポストは、以下の種類があります。
※役職が高い順
- 参考
- ・最高裁判所長官
・最高裁判所判事
・高等裁判所長官
・判事
・判事補
裁判官になったあとは、まず判事補として10年程度従事し、判事に任命されれば裁判長を務めることが可能です。
判事に昇進すると、「高等裁判所の階席裁判官」または「地方・家庭裁判所の中小規模支部の支部長」として活躍する傾向にあります。
判事になって20年経った頃から、裁判所の所長に任命される人も出てくるようになり、さらに優秀な人は「高等裁判長官」をはじめさらに上位のポストに昇進できる仕組みです。
ちなみに、簡易裁判所判事は法曹資格がなくても、推薦委員会からの推薦を受けたうえで内部試験に合格すれば任官できます。
これは、簡易裁判所の数に対して法曹資格取得者が不足している状況を解消するための特例として実施されています。
主に、裁判所事務官・調査官・書記官といった裁判所の職員、法律学の教授・准教授、検察官・弁護士から選ばれる傾向です。
なお、給与は昇進するにつれて大幅にアップし、最高裁長官の月収は約201万円、年収は約3,084万円ともいわれています。
裁判官が昇進できるかどうかは、毎年実施される人事評価によって決まります。
人事評価は、基本的に所属先の裁判長が行いますが、重視している主なポイントは以下の通りです。
- 事件処理能力
- 部等を適切に運営する能力
- 裁判官として職務を行ううえで必要な一般的資質及び能力
人事評価で良い評価が得られるかどうかが、裁判官としてキャリアアップする重要なポイントといえます。
弁護士に転職する
裁判官から弁護士に転職するキャリアパスもあります。
日本弁護士連合会が公開した「年度別弁護士登録者数とその内訳」によると、2022年度の弁護士登録者数2,679人のうち、58人が元裁判官です。
裁判官の業務経験がある弁護士の強みは、裁判のノウハウを知っていることです。
裁判所の内部事情や判決の決め手などを理解しているため、依頼者に対して適切なアドバイスができたり、裁判官が納得できる弁護ができたり、弁護士として活かせる場面がたくさんあります。
多少時間はかかりますが、適切な手順を踏めば裁判官から弁護士に転身できます。
【裁判官から弁護士になる手順】
- 裁判官を退職
- 日本弁護士連合会(日本弁連)に申請
- 弁護士登録の審査
- 弁護士会への加入
ただし、元裁判官の採用を想定している法律事務所は少ないため、転職活動が難航する可能性がある点に注意しなければいけません。
弁護士としてどんなキャリアを築いていきたいのか熱弁できるように考えておけば、その熱意が法律事務所に伝わり、採用されやすくなります。
日本弁護士連合会「年度別弁護士登録者数とその内訳」(参照 2024-06-26)
公証人として働く
裁判官から公証人に転身することも可能です。
- 【公証人とは】
- 遺言書や任意後見契約といった法的に重要な文書の作成・確認を行う人を指します。
公証人は、原則裁判官や弁護士として法律実務を経験した者の中から公募を募り、法務大臣が任命します。
公証人を任命する主な判断基準は、「過去の法律実務経験」「個人の業績」の2点です。
特に、過去の法律事務経験は、幅広い法的知識が求められる公証人において、かなり重要視されます。
たとえば、遺言書を作成するためには契約法・相続法といった民事法の知識が欠かせません。
また、商業登記の手続きを行う際は、会社法・商業登記規則などにも熟知している必要があります。
幅広い法的知識を習得するためには、多くの経験を積まなければなりません。実際に、公証人に任命されるのは30年以上の実務経験がある人ばかりです。
そのため、裁判官として定年を迎えたあとのキャリアパスとして人気となっています。
中卒で裁判官に向いている人・向いていない人
ここでは、裁判官に向いている人・向いていない人の特徴をご紹介します。
裁判官は、自分自身が下した判決によって直接的に当事者の人生や生活が激変する可能性がある職業です。
裁判官を目指す前に、自分に適性があるのかどうか確認しておきましょう。
裁判官に向いている人 |
裁判官に向いていない人 |
忍耐力がある人 |
責任感がない人 |
公正公平な判断ができる人 |
人を裁く重圧に耐えられない人 |
勉強熱心な人 |
向上心がない人 |
中卒で裁判官になるのに向いている人の特徴
中卒で裁判官になるのに向いている人の特徴は、以下の3つです。
- 忍耐力がある人
- 公正公平な判断ができる人
- 勉強熱心な人
中卒者が裁判官を目指す場合、司法試験予備試験と司法試験(本試験)にそれぞれ合格し、さらに1年に及ぶ司法修習を修了しなくてはなりません。
裁判官になるまでに3〜4年はかかるといわれており、高いモチベーションで勉強し続けるための忍耐力が求められます。
また、裁判官になれば、多くの重要な決断を下す役割を担うので、そのプレッシャーに負けない意味でも強い忍耐力が必要です。
そして、裁判官は常に公正公平な判断をしなくてはなりません。
全ての当事者に対して先入観や個人的な感情を一切排除し、冷静に判断できる人が裁判官に適しています。
とはいえ、人間味や思いやりまで排除する必要はありません。
むしろ公正な立場で物事を正しく判断していくうえで、人間味のある心の温かさは必須です。
くわえて、法律は定期的に新規制定・改正が行われるのが特徴です。
裁判官は、最新の法律に基づいて判決を下すことを求められるため、常に知識をアップデートできる勉強熱心な人が向いています。
中卒で裁判官になるのに向いていない人の特徴
中卒で裁判官になるのに向いていない人の特徴は、以下の3つです。
- 責任感がない人
- 人を裁く重圧に耐えられない人
- 向上心がない人
裁判官は、複雑な事情が絡む案件に対しても、冷静かつ客観的に判断を下し、最後まで適切に処理しなくてはなりません。
どんなに内容が重い案件であっても、途中で投げ出さず職務をやり遂げられる意思の強さが求められるので、責任感のない人は裁判官の仕事は厳しいです。
また、先述した通り、裁判官は自分の判決によって当事者の人生や生活に大きな影響を与える可能性がある職業です。
他人の運命を自分の判断一つで左右できる立場であることから、その重圧に耐えられない人は裁判官を目指すのは不可能です。
さらに、裁判官として活躍し続けるためには、自分自身が持つ法的知識や判断力を向上させていかなければなりません。
法律は新しいものができたり、改正がされたりと変化も多いので、自主学習を怠りがちな人は、職務遂行能力が低下する恐れがあります。
常に法律に関する知識の習得が求められ、裁判官になる前もなったあとも日々の勉強が必要不可欠です。そのため、裁判官になって満足してしまうような向上心のない人は、裁判官を目指すのは難しいといえます。
中卒で裁判官になるメリット・デメリット
ここでは、中卒で裁判官になるメリット・デメリットをご紹介します。
中卒で裁判官になるメリット |
中卒で裁判官になるデメリット |
年収が高い |
常に重い責任を背負う |
誇りとやりがいを感じられる |
業務量が多い |
法律に関する仕事に転職しやすい |
数年おきに転勤がある |
裁判官は金銭面・社会的信用面におけるメリットが非常に大きいですが、責任の重い仕事であるがゆえに、人によっては生活面でデメリットを感じてしまうことがあります。
せっかく裁判官になれたとしても、裁判官の仕事にデメリットを感じて辞めてしまうのはもったいないです。
メリット・デメリットの両方を理解したうえで、自分は裁判官を目指すべきか判断しましょう。
中卒で裁判官になるメリットは3つ
中卒で裁判官になるメリットは、以下の3つです。
- 年収が高い
- 誇りとやりがいを感じられる
- 法律に関する仕事に転職しやすい
裁判官は高度な専門知識を求められる職業であり、それに見合った高額の報酬も受け取れるため、年収も高くなりやすいのが特徴です。
裁判官の報酬は、「裁判官の報酬等に関する法律 第二条」の表に基づいて決められています。
さらに、簡易裁判所判事・判事補・判事の場合、人事評価に応じて号数が振り分けられます。
たとえば、判事補の一号に該当する裁判官の月額報酬は42万3,000円です。その他ボーナスや手当などを含めると、年収は約700万円以上になります。
裁判官の年収は、職位が上がるにつれて大幅にアップするため、経験を積んでいけば年収1,000〜2,000万円も夢ではありません。
また、裁判官の仕事は、大きな誇りとやりがいを感じられるのも魅力です。
日々さまざまな争いが起きている中で、当事者同士では解決できない事件を自らの手で解決に導くことができるのは、まさに裁判官の特権といえます。
そして、法律関係であれば、裁判官以外の仕事に転職しやすいメリットもあります。
たとえば、弁護士や検察官といった法曹と呼ばれる専門職、法律系の大学の教授、民間企業で企業法務・法務コンサルタントを担当するなど多数の選択肢のなかから選べます。
裁判官として何十年も活躍した人は、公証人になれる可能性もあるので、職業選択の幅が広がるのが魅力です。
e-eov法令検索「裁判官の報酬等に関する法律」(参照 2024-06-26)
中卒で裁判官になるデメリットは3つ
中卒で裁判官になるデメリットは、3つです。
- 常に重い責任を背負う
- 業務量が多い
- 数年おきに転勤がある
裁判官の職務は、常に大きな責任が伴います。
万が一自分が下した判決が誤判だった場合、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
仕事のプレッシャーが重くのしかかるため、精神的なストレスが蓄積しやすい職業です。
また、裁判官は、適切な判決を行うために、裁判がない日や退庁時間が過ぎた時間帯といったすき間時間を利用して、担当する裁判の記録の読み込み・争点整理・判決の起案などを行います。
証人が多い大規模な事件になると、裁判のみで1日が終わるケースも珍しくないため、残業したり休日出勤をしたりして業務を終わらせる裁判官もいます。
業務量が多くハードなスケジュールになりやすい点は、裁判官の大変なところです。
そして、裁判官の場合、中立の立場として地域住民との過度な交流を避ける目的で、定期的に転勤が発生します。新任の期間であれば2~3年、長くても5年を目安に配属先が変わるため、生活の基盤が定まりにくいというデメリットがあります。
家族がいる場合、転勤や転校による家族の負担を考慮して、単身赴任を選択する裁判官が多いです。
定期的に住まいを変えることに抵抗がある方は、裁判官の仕事は大変に感じやすいです。
裁判官以外で転職を検討するならナイト系がおすすめ
裁判官は、中卒者も目指せる職業であるものの、司法試験予備試験と司法試験(本試験)の両方に合格して、1年間の司法修習を受けて修了考査に合格する必要があります。
さらに、予備試験の合格率は5%未満で、司法書士試験や行政書士試験よりかなり難易度が高い試験です。
-
もっと目指す難易度が低い職業に就きたい
-
資格を取らなくても働ける仕事をしたい
このような中卒者には、ナイト系の仕事をおすすめします。
ナイト系の特徴は以下の通りです。
- 応募条件に学歴・経歴・資格を問わない求人がほとんど
- ナイト系は18歳以上であれば応募可能(高校生不可)
- 未経験でも月給30万円スタートの求人多数
ナイト系は、特別な資格を取らなくても中卒で働ける仕事ばかりで、異業種から転職しやすいのが魅力です。
ナイト系の職種は、店舗スタッフ、Webデザイン、ドライバー、サイト運営など豊富にあるので、気になる方は一度チェックしてみてください。
中卒で裁判官になるためのおさらい
中卒で裁判官になるために知っておくべきポイントは以下の通りです。
- ポイント
- 【中卒で裁判官になる方法と手順】
1.司法試験予備試験に合格する
2・司法試験(本試験)に合格する
3・1年間の司法修習を経て修了考査に合格する
【中卒で裁判官になるのに向いている人】
・忍耐力がある人
・公正公平な判断ができる人
・勉強熱心な人
中卒者で裁判官を目指すのは決して簡単なことではありませんが、時間をかけて着実に勉強を進めていけばなれる職業です。
人の今後の人生を左右する可能性が高い裁判官は、精神的にも肉体的にもタフで、中立な立場で物事を判断できる人が向いています。
本記事をきっかけに裁判官になりたいと感じた方は、さっそく今日から予備試験の勉強から始めてみましょう!