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高卒で水族館飼育員って目指せるの?
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資格や専門知識がなくても水族館で働ける?
高卒未経験が水族館飼育員を目指すのは難しいというイメージを持つ人が多いでしょう。実際、魚類や海洋哺乳類といった水中生物に関する知識が必要なので、目指すまでの道のりが大変な仕事であることは間違いありません。
しかし、高卒で働いている人も一定数おり、努力次第で目指せるのもまた事実です。
今回は高卒で水族館飼育員になる際に役立つ資格やスキル、狙い目の求人、キャリアパスなど詳しく解説します!
高卒も水族館飼育員になれる

水族館飼育員は、特別な資格がなくても目指せる職業です。実際に、高卒未経験が応募できる求人も存在します。
ただし、高卒未経験が応募できる求人の数は少なく、そのほとんどは契約社員もしくはアルバイトの求人です。そもそも水族館飼育員は、欠員が出た時くらいしか募集をかけない傾向にあり、雇用形態を問わず求人自体が珍しいのが実情です。
また、水族館飼育員は水中生物に関する知識が求められるため、多くの水族館は専門学校や大学で水産学・生物学を学んだ人を優先して採用します。
高卒未経験がいきなり正社員になるのはほぼ不可能なことから、まずは契約社員やアルバイトからスタートし、経験を積んだあとに正社員を目指すのが最も現実的なルートと言えます。
水族館飼育員になる数少ないチャンスを掴むためには、潜水士やCカード(ダイビングライセンス)、普通自動車第一種運転免許といった業務に役立つ資格を取得しておくのがおすすめです。
公営の水族館飼育員として働くには公務員試験に合格する必要がある
水族館は、民間企業が立ち上げた「民営」と自治体が立ち上げた「公営」に分類されています。公営の水族館飼育員として働きたい場合、地方公務員試験の合格が必須です。
公営水族館に応募できる条件は、自治体によって実務経験の年数や資格の有無、年齢などが異なります。
どの自治体も、基本的に日本動物園水族館協会加盟の水族館で一定期間の飼育業務の経験を条件としています。高卒未経験は、まず契約社員もしくはアルバイトで経験を積むことが必要です。
ただし、飼育業務を外部に委託する公営水族館も珍しくありません。自治体から業務委託された民間企業に入社できれば、公務員試験を受けなくても公営水族館で働ける可能性があります。
水族館飼育員の学歴内訳
実際に水族館飼育員として働いている人の学歴内訳をご紹介します。
学歴 | 割合 |
---|---|
中卒 | 4.3% |
高卒 | 13.0% |
専門卒 | 56.5% |
短大卒 | 8.7% |
大卒 | 43.5% |
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「水族館飼育員」(参照 2025-04-29)
※全ての数字を合計しても100%になるとは限りません
水族館飼育員として働く割合が高いのは専門学校卒と大卒です。水族館飼育員になるうえで水中生物の専門知識が必要不可欠であることから、専門学校や大学で生物学や飼育学などを学んだ人がそのまま就職しているケースが多いためだと考えられます。
高卒で水族館飼育員になっている人の割合は、13.0%です。決して高い数値ではないものの、現場で役立つ資格を取得して契約社員やアルバイトを募集している求人に応募すれば、高卒で水族館飼育員になれる可能性はあります。
高卒で水族館飼育員を目指すならどんな求人がねらい目?

高卒で水族館飼育員を目指す場合、以下の求人が狙い目です。
- 中小規模の地方水族館の求人
- 新設またはリニューアル直後の水族館の求人
- アルバイト採用がある水族館の求人
まず、地方にある中小規模の水族館は、時期によって人手不足に陥る傾向があります。特にゴールデンウィークやお盆休みといった長期休暇は来館数が多くなるため、繁忙期に入る前に人員を確保する目的で求人を出すのです。
また、新設もしくはリニューアル予定の水族館は、飼育員を含め大量の人員が必要です。飼育業務が未経験でも応募OKの求人を出すケースもあるので、オープニングスタッフを募集する水族館は狙い目と言えるでしょう。
さらに、アルバイトの採用枠を設ける水族館も要チェックです。特に「飼育補助」を募集する水族館であれば、仕事に役立つ資格を持っていなくても応募できる可能性があります。
ただし先述した通り、高卒未経験で応募できる水族館の求人はかなり少ないです。応募できる求人を見逃さないように、こまめにチェックすることが大切です。
高卒で水族館飼育員になったあとのキャリアパス

水族館飼育員として経験を積むと、キャリアパスの選択肢が広がります。ここでは高卒で飼育員になったあとのキャリアパスをご紹介します。
- 段階的にキャリアアップして施設運営に携わる
- 海獣トレーナーを目指す
なお、上記は正社員の水族館飼育員になったことを想定したキャリアパスです。契約社員やアルバイトの人は、まず正社員を目指しましょう。
正社員の水族館飼育員になる方法は主に以下の2点です。
- 在職中の水族館で正社員を目指す
- 中途採用OKの水族館に転職する
非正規でも実務経験を積めれば、正社員の水族館飼育員として理想のキャリアパスを築くことは可能です。どんなキャリアパスがあるのか詳しく解説します。
キャリアパス①段階的にキャリアアップして施設運営に携わる
水族館飼育員になったあと、実務経験を積んでマネジメント業務に携わり、最終的には施設の運営業務を担当するキャリアパスがあります。
水族館飼育員としてキャリアアップする場合、まず一般社員から現場をまとめる主任やチームリーダーに昇進して、マネジメント業務を行うのが一般的です。
そしてさらに実績を積んで社内で高い評価を獲得できれば、管理職として予算管理やプロジェクトの企画・立案といった施設運営に携われる可能性があります。
水族館の運営業務を行うためには、生物に関する知識やスキルを習得するのは大前提として、以下のスキルも求められます。
- コミュニケーション力
- 問題解決力
- マーケティング力
「将来水族館の運営に関わってみたい」という人は、日頃から上記のスキルを磨くように意識してみてください。
キャリアパス②海獣トレーナーを目指す
水族館飼育員として経験を積んだあと、イルカやアザラシといった海獣のトレーナーを目指す道もあります。
海獣トレーナーは、主にショーやパフォーマンスの企画・実施、動物のトレーニング、健康管理などを担当します。
ほとんどの水族館は、飼育業務とトレーナー業務を兼任するパターンが多いです。そのため、専門的な知識やスキルさえあれば飼育員から海獣トレーナーへ転身できるでしょう。
ただし、海獣トレーナーは、基本的に欠員が出ないかぎり募集しない傾向にあります。勤め先の水族館で海獣トレーナーを目指す場合、少ないチャンスを掴むために日頃からトレーナー志望であることを周囲にアピールしておきましょう。
高卒で水族館飼育員への就職やキャリアアップに役立つスキル・資格

水族館飼育員は、専門性の高い仕事です。高卒未経験から目指す場合、事前に業務に役立つ資格を取得したり、知識を習得したりすると就職に有利になります。
▼水族館飼育員への就職に役立つ資格・スキル
- 潜水士
- Cカード(ダイビングライセンス)
- 普通自動車第一種運転免許
- 水族館の生物に関する知識・飼育スキル
また、キャリアアップを狙う際におすすめの「水族飼育技師」についても併せてご紹介するので、高卒未経験で水族館飼育員になりたい人はぜひチェックしてみてください。
潜水士
潜水士は、潜水器やボンベなどを使って潜水業務を行う際に必要な国家資格です。学歴や年齢といった受験資格がなく、筆記試験に合格すれば取得できます。
水族館飼育員は、水槽の掃除や海洋生物の調査など、潜水作業も仕事内容に含まれます。潜水士の資格を取れば、大型水槽の清掃も可能になり、業務の幅が広がります。
潜水士の資格取得を採用条件にする水族館も珍しくないので、高卒未経験で水族館飼育員を目指すなら優先して取っておきたい資格です。
Cカード(ダイビングライセンス)
Cカード(Certification Card)は、本格的にスキューバダイビングを行う際に必要なライセンスの一つです。民間団体が発行する認定証で、ダイビングショップで3日程度の実技・学科講習を受けて試験に合格すれば取得できます。
潜水士の資格試験には、実技がありません。Cカードは、実際に水の中に潜れることを証明できる資格なので、潜水士と一緒に取得しておくとより採用されやすくなるでしょう。
普通自動車第一種運転免許
水族館飼育員を目指すなら、普通自動車第一種運転免許を取得しておきましょう。業務中は、以下のように車の運転が必要になる場面が出てきます。
- 機材や餌の運搬
- 他の水族館などへの出張
また、歴史ある水族館の場合、古い機種の社用車しかないケースも珍しくありません。古い車はMT(マニュアル)車の割合が高く、「MT免許がない=業務中に車の運転ができない」という事態に陥りやすいので、可能であればMT免許を取得しておくのがおすすめです。
水生水族館の生物に関する知識・飼育経験
高卒未経験で水族館飼育員になるためには、水族館に展示されている生物に関する知識を習得することが欠かせません。
魚類や海洋哺乳類など、展示されている生物の生態や特徴を理解しておくと、飼育業務や来館者への対応など幅広い場面で役立ちます。
▼水族館の生物に関する知識を身に付ける方法
- 水族館へ訪問する
- 飼育の専門誌やWebサイトを読む
- 水族館のボランティア活動に参加する
また、金魚や熱帯魚など水生生物の飼育経験がある人は、水槽管理をはじめとした飼育スキルが身に付いている傾向にあります。
水族館飼育員の選考において大きなアピール材料になるため、水生生物の飼育経験がある人は必ず自己PRに盛り込みましょう。
水族飼育技師
水族飼育技師は、水族館での飼育スキルを証明できる民間資格で、飼育員としてキャリアアップしたい時に有効です。
受験資格を得るためには、社団法人日本動物園水族館協会に加盟する施設で、2年以上の飼育経験を積む必要があります。
将来水族飼育技師の資格取得を視野に入れている人は、社団法人日本動物園水族館協会に加盟する水族館の求人に応募しましょう。
また、上長や館長から飼育業務に携わっていると認められれば、非正規でも水族飼育技師の資格試験を受験できる可能性があります。
契約社員やアルバイトの時点で水族飼育技師の資格を取っておけば、就職活動において大きな強みになるでしょう。
高卒で水族館飼育員になるメリット・デメリット

高卒未経験で水族館飼育員を目指す場合、メリットとデメリットの両方を理解しておくことが大切です。
理想と現実のギャップを縮めるためにも、これから紹介するメリット・デメリットを参考に、自分に合った仕事かどうかを判断してください。
高卒で水族館飼育員になるメリット | 高卒で水族館飼育員になるデメリット |
---|---|
生き物と深く関われる | 非正規で採用される可能性が高く、平均年数も低い |
社会貢献度の高い業務が多い | 他業種へのキャリアチェンジが難しい |
将来性がある | 身体的な負担が大きい |
メリット①生物と深く関われる
水族館飼育員になる大きな魅力は、生物と深く関わりながら働けるところです。
生物が元気に成長する姿を見守れたり、時には新たな生命の誕生に立ち会えたりできるのは、まさに飼育員の特権と言えます。
また、水族館飼育員は、仕事を通して生物の生態や飼育方法について学べます。
これらの知識やスキルは、専門誌やWebサイトの情報だけでは得るのが難しいケースがほとんどです。そのため、自身の成長を実感しながら働ける点もメリットでしょう。
メリット②社会貢献度の高い業務が多い
社会貢献度の高い業務が多いのも、水族館飼育員になる長所です。
水族館飼育員は、生物の飼育業務だけでなく、環境汚染に伴う水中生物の環境変化の調査や研究に関わる場合もあります。自然環境や生態系を守る手助けができるため、やりがいを持って働けるでしょう。
また、水族館飼育員は、来館者に生物の特徴や魅力を伝えるという役割も担います。来館者から感謝される機会が多いため、高いモチベーションで働きやすい点もメリットと言えます。
メリット③将来性がある公務員として就職すれば雇用が安定しやすい
水族館飼育員は、担当生物の健康状態に応じて餌の内容を調整したり獣医師に相談したりする必要があります。
AIで置き換えるのが難しい業務がほとんどなので、飼育員に関する高い専門スキルを習得できれば、安定して働き続けられる職業と言えるでしょう。
また、水族館は老若男女を問わず人気があり、教育的観点から見ても需要がある施設です。近年は、アミューズメントの要素を取り入れる水族館も増えていることから、今後も安定した集客が予想されています。
日本の水族館事業が衰退する可能性が低い点も、将来性が期待できる要因の一つです。
デメリット①非正規で採用される可能性が高く、平均年収も低い
高卒未経験で水族館飼育員になる場合、最初は契約社員やアルバイトといった非正規からスタートするパターンが多いです。そのため、正社員になれなければ、不安定な就労状態が続くリスクがあります。
また、水族館飼育員は、給与水準が全業種平均よりも低めである点もデメリットです。令和5年分民間給与実態統計調査によると、全国平均年収が460万円に対し、水族館飼育員の平均年収は374万円程度です。
これは、水族館は運営コストや維持費がかかるため、従業員の給与が上がりにくい点が原因として考えられます。
高卒未経験が最初から正社員として働くのは難しい点や、たとえ正社員になれたとしても日本の平均年収より低い可能性がある点は、水族館飼育員になる際の注意点と言えます。
参考:
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」(参照 2025-04-29)
職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「水族館飼育員」(参照 2025-04-29)
デメリット②他業種へのキャリアチェンジが難しい
水族館飼育員は、他業種へのキャリアチェンジを図る際、今まで培ったスキルを活かせない可能性があります。
主に習得できる水中生物の飼育スキルは、特定の分野や用途に特化しているため、他業種で応用するのが難しいです。
また、水族館によって飼育方針が大きく異なる場合も珍しくなく、別の水族館に転職した時に前の施設で学んだ飼育スキルが通用しない可能性も考えられます。
技術の汎用性が低いのは、水族館飼育員を目指す際の懸念点となるでしょう。
デメリット③身体的な負担が大きい
水族館飼育員は、身体的な負担が大きい業務が多いです。
飼育業務をする際、以下のような体力が求められる作業が発生します。
- 水槽の清掃業務
- 生物への餌やり
- 水槽や機材の移動
どれも重いものを運んだり、全身を動かしたりする頻度が高いので、それらに耐えられる体力を身に付けておく必要があります。
また、水族館飼育員は、大事な生物の命を預かる仕事です。水族館にとって飼育している生物は大事な資産になるので、もしものことが起きないように一つひとつの業務に対して責任を持って取り組まなければなりません。
水族館飼育員の仕事は、体力的にも精神的にも負荷がかかる可能性がある点に注意してください。
高卒で水族館飼育員になるためのおさらい

高卒で水族館飼育員として働くことは可能です。ただし、未経験の場合、いきなり正社員になるのは非常に難しく、最初は契約社員やアルバイトからスタートするケースがほとんどです。
また、飼育員を通年募集する水族館はほぼなく、基本的に欠員が出た時くらいしか求人を出しません。高卒未経験で水族館飼育員として採用されるためには、事前に業務に役立つ資格を取得したりスキルを磨いたりするのがおすすめです。
さらに、時期によって人手不足に陥りやすい中小規模の地方水族館や、大量の人材募集をかける新設もしくはリニューアル予定の水族館の求人に応募すれば、採用されるかもしれません。
水族館飼育員になる道のりは険しいものの、高卒未経験でも努力と工夫次第で目指せる職業です。
本記事を参考に、ぜひ夢への一歩を踏み出してみてください!