高卒で消防士になるには?消防士試験の受験資格と年収、就職のメリット・デメリット

※最終学歴が中卒・高卒の男性を対象とした転職情報サイトです※

高卒で消防士になるには?消防士試験の受験資格と年収、就職のメリット・デメリット

  • 高卒で消防士になるにはどうしたらいい?

  • 高卒で消防士に就職するメリットとデメリットはある?

今回は消防士への転職方法について知りたい高卒者に向けて、転職を成功させるポイントを解説します。

この記事でお伝えする内容

  • 消防士の仕事内容
  • 高卒から消防士になるまでの手順
  • 消防士試験の受験資格・受験内容
  • 高卒消防士が年収を上げる方法
  • 消防士になるメリット・デメリット
  • 消防士に向いている人・向いていない人の特徴
  • 消防士になる注意点

高卒と大卒で消防士になる場合の採用試験や年収の違いについても詳しくご紹介しています。
高卒で消防士を目指したい方は、本記事をぜひ参考にしてみてください。

消防士の4つの仕事内容

消防士の仕事内容は、火災現場に駆けつけ消火活動をしたり、人命救助を行ったりとさまざまです。

ここでは、消防士の4つの仕事内容について解説します。消防士になるとどのような仕事を行うのか、イメージを掴んでおきましょう。

  • 消火活動・火災調査
  • 急病人・ケガ人の搬送
  • 火災を未然に防ぐ予防活動・指導
  • 災害時の救助救援

消火活動・火災調査

消防士の代表的な仕事として、火災が発生した際の消火活動が挙げられます。

通報を受けたら、消防車ですばやく火災現場に出動して、現場の状況を把握したうえでポンプ隊と呼ばれる隊員が中心となって消火活動を行うのが主な役割です。

建物の中に取り残された人がいた場合、人命救助を優先させなければいけないため、主に救助活動を担当する救助隊をはじめ他の部隊と連携しながら消火活動を行います。

また、鎮火後に、火災の原因を調査したり、再び火災が発生しないように小屋根や押し入れといった対象物に火種や煙が残っていないかどうかを確認する「残火処理」を行ったりするのも消防士の仕事です。

消火活動中はもちろん、消火後の火災調査中も火災によってもろくなった建物の一部が崩れたり、煙や有毒ガスを吸ってしまったりする可能性があるため、危険と隣り合わせの状況が続きます。

消火活動や火災調査を行うためには、迅速な判断力とチームワークを意識した行動力、最後まで気を抜かない集中力が求められます。

急病人・ケガ人の搬送

要請を受けて救急車で現場に駆けつけた後、急病人や怪我人の応急処置をして病院に搬送するのも主な業務で、この業務を行う部隊は救急隊と呼ばれています。

救急隊は、消防士として実務経験を積んだ後、消防学校で250時間以上に及ぶ救急の講習を受けた救急隊員が担当しており、「隊長」「機関員」「隊員」の3名で構成されています。

なお、救急救命士の資格を保有していれば、医師の指示のもと、緊急救命処置を行うことが可能です。

救助活動は、消防署全体の出動理由の半分以上を占めるほど頻度が高い仕事です。緊急性が高く一刻を争う場面が多いからこそ、瞬発力が高い人や冷静な判断力がある人に向いています。

火災の予防活動・指導

消防士は、火災発生時のみならず火災を未然に防ぐための活動も行います。

建物や店舗の防火査察や防火設備の点検などを行い、必要に応じて正しい防火・防災対策に向けた指導をするのが主な仕事です。また、学校や会社で実施する防災訓練の指導や地域の防災計画策定の協力、火災原因の調査や消防行政への報告など、予防活動の内容は多岐にわたります。

消防士は火災発生時以外でも火災と向き合い、高い防災意識を持ちながら地域や人々の安全を守ることが求められます。

災害時の人命救助・救援

火災や土砂崩れ、地震や津波、交通事故やテロなどあらゆる災害発生時における人命救助・救援活動も消防士の仕事です。災害現場で逃げ遅れた人や建物の下敷きになった人、交通事故で車からの脱出が困難な人などの救助・救援を行います。

救助活動を担当するのは、消防署の救助隊や特別救助隊に所属しており、訓練を受けて専門の知識やスキルを習得している救助隊員です。災害現場での救助活動は一刻を争う出来事ばかり起こるので、体力や運動能力はもちろん、迅速かつ正確な判断力や高度な救助技術も求められます。

人命救助のスペシャリストとして活躍するためには、体力面でも精神面でも高い能力が必要ですが、強い使命感を持って働けるやりがいのある仕事と言えます。

高卒が消防士になるための手順

消防士は、人命に関わるさまざまな業務をこなすため、強靭(きょうじん)な体力と高度な知識・スキルが求められます。一見難易度の高い職業に思われがちですが、高卒者も消防士になれます。

ここでは、高卒者が消防士になるための手順について解説していきます。消防士を目指したい方は、ぜひ参考にしてください。

  • 就職先の自治体を決める
  • 消防官採用試験に合格する
  • 消防学校に入校して消防士になる

ステップ1.就職先の自治体を決める

消防士は地方公務員の一つであり、地方自治体の消防局や東京消防庁が就職先になるため、試験を受ける前にあらかじめどの自治体で働くか決めておくようにしましょう。

自治体の選び方に決まりはありません。「自分の生まれ育った地域で就職したい」「採用人数が多い地域で挑戦したい」「都市部で働きたい」など、選ぶ理由は人によってさまざまです。

ただし、数名程度しか採用枠を設けていない自治体もあるため、場合によっては採用倍率が高い自治体に挑戦することになるかもしれない点に注意してください。

ステップ2.消防官採用試験に合格する

就職先の自治体が決まったら、その自治体で行われる消防官採用試験を受けます。自治体によって日程や受験資格、試験内容などは異なるため、希望の自治体で行われる採用試験の日程や受験資格は必ず事前にチェックしておきましょう。

また、消防官採用試験は難易度が非常に高いです。令和4年度の職員採用選考試験における消防官のⅢ類(高卒程度学力)の合格倍率は6.4倍という結果が出ています。

合格するのは決して簡単ではありませんが、試験対策をしたうえで勉強を続けていけば合格できる可能性は十分にあります。

後ほど、消防官採用試験の詳細や合格するための対策方法をご紹介するので、ぜひご覧ください。

消防士採用試験の最終合格者は、採用候補者の名簿に登録され、入庁の意志や希望の業務があるかどうか意向聴取が行われます。その後、正式に採用者として内定をもらえます。

参考:東京消防庁「令和4年度 職員採用選考・試験結果/消防官」(参照 2024-01-25)

ステップ3.消防学校に入校して消防士になる

採用試験に合格して消防士として採用された後、最初の半年間は全寮制の消防学校に入校します。入校時期は4月と10月です。
消防学校では、主に以下の3つを軸に消防士に必要なスキルや知識を習得するためのカリキュラムを受けます。

参考
■基礎教育:消防士に必要な知識や制度を学ぶ
■実務教育:安全管理や火災に関することを学ぶ
■実科訓練:救助訓練や消防活動訓練などを行う

規則は、消防学校によって異なりますが、平日の外出や週末の外泊は禁止されている場合がほとんどです。また、5〜10分前行動は当たり前で、決められたスケジュール通りに動く必要があるため、行動を制限される生活を過ごさなければいけません。

限られた期間内にシビアな環境下で知識やスキルを習得しなければいけないプレッシャーがあるものの、厳しい教育と寮生活を乗り越えることが市民の命を守る消防士になるための第一歩と言えます。
半年間の消防学校を修了すると、いよいよ各配属先で消防士として現場で働けるようになります。

消防士における高卒と大卒の違い

高卒でも消防士になることはできますが、学歴によって消防官採用試験の受験資格や採用枠数は異なります。
ここでは、消防士における高卒と大卒の以下の違いについて解説します。

  • 消防官採用試験の受験資格の違い
  • 採用予定者数の違い
  • 消防官採用試験の試験内容の違い
  • 高卒と大卒消防士の収入の違い

消防官採用試験の受験資格の違い

消防士は、最終学歴によって採用区分が異なります。採用区分は、「Ⅰ類(上級)」「Ⅲ類(初級)」「専門系」の3つに分けられ、高卒者の場合、「Ⅲ類(初級)」の応募資格を持っています

ここでは、東京消防庁の令和6年度採用試験の受験資格を紹介しますが、自治体によって内容が異なる場合もあるため、希望の自治体の受験資格は必ず事前に確認しておきましょう。

採用区分 学歴 対象者(年齢)
Ⅰ類(上級) 大学の卒業者(見込み者) 22歳以上36歳未満
Ⅲ類(初級) 高校の卒業者(見込み者) 18歳以上22歳未満
専門系 大学の卒業者(見込み者) 22歳以上36歳未満
参照元:東京消防庁「令和6年度採用試験(選考)について」(参照 2024-02-02)

ご覧の通り、高卒でⅢ類の採用試験を受験する場合、18歳以上22歳未満の年齢制限があるので注意が必要です。大卒者が受けられるⅠ類もしくは専門系の年齢制限が22歳以上36歳未満なのを踏まえると、いつでも消防士を目指せるわけではないことが分かります。

採用予定者数の違い

消防官採用試験の採用予定者数も、学歴(採用区分)によって異なります。以下の表は、東京消防庁の令和6年度採用試験の採用予定者数です。
なお、消防官採用試験はⅠ類が年2回、Ⅲ類が年1回行われます。

採用区分 採用予定者数
Ⅰ類(1回目) 350名
Ⅰ類(2回目) 100名
Ⅲ類 310名
専門系 10名
参照元:東京消防庁「令和6年度採用試験(選考)について/採用区分及び採用予定者数」(参照 2024-01-25)

高卒者向けのⅢ類の採用予定者数は310名ですが、大卒者向けのⅠ類のほうが採用枠は多い傾向にあります。そのため、大卒よりも高卒のほうが狭き門と言えるでしょう。

消防官採用試験の試験内容の違い

前述の通り、最終学歴に応じて採用区分が変わり、大卒者は「Ⅰ類」「専門系」、高卒者は「Ⅲ類」の受験資格を持っています。

試験内容も採用区分に応じて異なり、ここでは大卒者が受験対象となる「Ⅰ類」と比較して試験内容を紹介していきます。

第1次試験

東京消防庁における消防官採用試験の第1次試験の内容は、Ⅰ類とⅢ類で以下のように異なります。

Ⅰ類(大卒者向け)

※1回目は「教養試験方式」「適性検査方式」のどちらかを選択可能

Ⅲ類(高卒者向け)

教養試験方式

適性検査方式

 

教養試験

適性検査(能力検査・性格検査) 

教養試験

論文試験

論文試験

作文試験

資格・経歴評定

資格・経歴評定

資格・経歴評定

適性検査(性格検査)

適性検査(性格検査)

出典元:
東京消防庁「令和6年度から東京消防庁 消防官採用試験(選考)」(参照 2024-02-02)
東京消防庁「消防官採用試験案内 Ⅲ類」(参照 2024-02-02)

Ⅰ類とⅢ類の試験内容の違いは、受験方式の選択ができるかどうかです。

東京消防庁の場合、令和6年度よりⅠ類の第1次試験は1回目に限り「教養試験方式」と「適性検査方式」のどちらかを選択できるようになっています。一方で、Ⅲ類の第1次試験は「教養試験」「作文試験」「資格・経歴評定」「適性検査(性格検査)」の4項目と決められているのが特徴です。

また、Ⅰ類は論文試験、Ⅲ類は作文試験となっており、難易度がやや異なります。教養試験とは筆記試験のことで、Ⅰ類は大学卒業程度、Ⅲ類は高校卒業程度の学力が必要です。

第2次試験

東京消防庁における消防官採用試験の第2次試験の内容は、Ⅰ類・Ⅲ類ともに「身体・体力検査」と「口述試験」が行われます。

消防士になるためには、消火活動に耐えられる体力や救助活動できる身体能力が必要なので、消防官採用試験では身体・体力検査を実施して適性があるかどうか判断します。
とは言え、合格後に入校する消防学校で訓練を重ねれば、消防士として活躍できるレベルの体力がつくものです。そのため、採用試験の段階では、そこまで厳しい基準を設けない傾向があります。

口述面接は、Ⅰ類が個人面接および集団討論、Ⅲ類が個人面接のみで、それぞれ面接方法に違いがあります。

高卒と大卒消防士の初任給の違い

高卒と大卒では、消防士になった際の初任給にも違いがあります。

都道府県別の高卒と大卒の初任給を比べた表が以下の通りです。なお、ここでは政令指定都市を含む都道府県と東京都を取り上げています。

都道府県名

高卒

大卒

北海道

約151,891円

約183,673円

宮城県

約146,100円

東京都

約172,300円

約203,700円

千葉県

約160,571円

約194,871円

神奈川県

約170,467円

約202,533円

埼玉県

約162,033円

約190,967円

新潟県

約169,900円

静岡県

約153,733円

約185,967円

愛知県

約152,700円

約183,033円

京都府

約153,840円

約181,060円

大阪府

約166,060円

約196,867円

兵庫県

約165,117円

約195,901円

岡山県

約149,800円

約179,575円

広島県

約160,250円

約182,200円

福岡県

約163,620円

約188,850円

熊本県

約146,100円

参照元:総務省「令和4年 地方公務員給与の実態|第4表 初任給」(参照 2024-01-25)

いずれの都道府県においても、高卒よりも大卒のほうが初任給は高い傾向にあります。消防士を目指す際は、高卒と大卒とで収入差が出てくる点を踏まえて就職するかどうか検討しましょう。

最も収入差が大きい自治体は千葉県で約34.300円、最も収入差が少ない自治体は広島県で約21,950円という結果が出ています。このように、各自治体によっても収入差が異なるため、希望の自治体の公式サイトで初任給を確認しておくことも大切です。

なお、消防士は基本給にくわえて夜間勤務手当や休日勤務手当、特殊勤務手当、宿日直手当などの諸手当がつきます。

高卒の消防士で年収1,000万円は稼げる?

高卒者の中には、消防士として年収1,000万円を目指したいとお考えの方もいるでしょう。

結論として、消防士は公務員である以上、給与形態や給与額がある程度の上限が設けられている傾向があるため、学歴に関係なく年収1,000万円を稼ぐのは難しいです。

「令和4年地方公務員給与実態調査」によると、消防職の平均給与額が約40.3万円で、賞与にあたる「期末手当」約85.9万円と「勤勉手当」66.1万円を含めると、平均年収が約635.6万円という結果が出ています。

一部の政令都市の自治体かつ消防総監や消防司監といった幹部のトップになれれば、年収1,000万円も目指せなくはないものの、かなり厳しい道のりと言えます。

高卒で年収1000万を目指すのにおすすめな仕事をご紹介しているためそちらをご参照ください!

高卒で年収1000万円の仕事と就職方法、必要資格や就職までの流れ

あわせて読む

参照:「令和4年地方公務員給与実態調査|第5表 職種別職員の平均給与額」(参照 2024-02-05)

高卒者が受ける消防官採用試験の内訳と詳細

先述したように、高卒の場合、消防官採用試験のうち受験資格があるのはⅢ類になります。自治体によって受験可能な年齢は異なるものの、東京消防庁の場合は18歳以上22歳未満の高校卒業者、または卒業見込み者が受験できます。

ここでは、東京消防庁の消防官採用試験を参考に、高卒者が受験できる試験の内容を解説します。試験の出題内容を確認して、合格に向けて準備しておきましょう。

第1次試験:筆記試験・作文・適性検査

高卒が受験できる消防官採用試験の第1次試験の科目と内容は以下の通りです。

科目

内容

出題数

所要時間

教養試験

知能分野:文章理解、英文理解、判断推理、空間概念、数的処理、資料解釈

22題

2時間程度

知識分野:人文科学(国語、歴史、地理)

社会科学(法学、政治、経済、社会事情)

自然科学(数学、物理、化学、生物)

23題

作文試験

課題式(800字以上、1,200字程度)

1題

1時間半程度

資格・経歴評定

保有資格や経歴についての評定

適性検査

消防官としての適性についての検査

参照元:東京消防庁「令和5年度 消防官採用試験案内 Ⅲ類」(参照 2024-01-26)

第1次試験では、「教養試験」「作文試験」「適性検査」の3つが実施されます。教養試験では、消防士として必要な一般教養について、高校卒業程度の学力が問われます。学力にもよるものの、約1年を目安に教養試験の対策を行うのがおすすめです。

教養試験の勉強と同時に、作文試験に向けて文章を書く練習も必要です。作文試験の課題テーマは各自治体で決めていますが、「自然災害について」「チームワークを高める方法について」「自分の強みについて」といった消防士や自分自身に関するテーマが出題される傾向があります。

「資格・経歴評定」ではスポーツ・音楽分野において高校生以降に出場した全国大会以上の大会やプロ選手経験といった経歴、大型自動車免許やTOEICなどの資格が評定対象となります。評定対象となる資格・経歴を持つ方は、事前の申請が必要です。

第2次試験:身体体力検査・個人面接

高卒が受験できる消防官採用試験の第2次試験の科目と内容は、以下の通りです。

科目

内容

身体・体力検査

視力:視力(矯正視力を含む)が0.7以上、かつ、一眼でそれぞれ0.3以上

   なお、裸眼視力に制限なし

色覚:石原式色覚検査を実施

※石原式色覚検査で異常があった場合は、赤色、青色および黄色の色彩識別検査を実施

※色彩識別検査で異常があった場合は、後日、眼科医による診断を受診

聴力:オージオメータを使用し、純音聴力検査を実施

体力検査:1km走、反復横跳び、上体起こし、立ち幅跳び、長座体前屈、握力、腕立て伏せ

その他:尿検査、胸部X線検査、心電図、血液検査

口述試験

個人面接

参照元:東京消防庁「令和5年度 消防官採用試験案内 Ⅲ類」(参照 2024-01-26)

石原式色覚検査とは
混合しやすい色を組み合わせて描かれた数字を読めるかどうかで、色覚異常の有無を判断する検査のこと。

第2次試験では身体・体力検査と個人面接による口述試験が行われます。身体・体力検査は学歴による基準の違いは特になく、消防士として業務遂行に必要な身体、体力および健康度を測定することが目的です。

口述試験では、志望動機や自己PRなど採用面接で聞かれがちな質問をされる傾向があります。自治体によっては、「他の公務員になろうとは思わなかったのか?」「住民の信頼を得るにはどうすればいいのか?」といった変化球な質問をされるケースもあるので、事前に自分の考え方を明確にしておくことが大切です。

高卒の消防官採用試験の対策方法4選

消防官採用試験では教養や思考力、身体能力、体力などさまざまな知識や能力、消防士としての適性が問われることが分かりました。そのため、試験合格に向けて事前の対策と準備が欠かせません。

ここでは、高卒の消防官採用試験の対策方法についてご紹介します。消防士を目指す方は、今のうちから対策を行っていきましょう。

教養試験の過去問題をチェックする

第1次試験の関門(かんもん)とも言える教養試験の対策として、過去問題のチェックが有効です。

自治体によっては、公式ホームページに過去の試験問題や答えを公開している場合があるので、まずは過去の試験問題を解くことから始めてみましょう。また、消防官教養試験の過去問題をまとめた参考書を購入して解くのもおすすめです。

過去の問題を解くことで、教養試験の出題傾向や難易度を把握できて、今後の学習計画が立てやすくなります。また、自分の得意分野と苦手分野も分かるので、どの分野を重点的に勉強すべきか明確になるメリットもあります。

教養試験で出題される科目数は多く、幅広い分野を勉強しなければいけないため、いち早く出題傾向や難易度などを理解して、効率よく勉強を進めていくのが合格するコツです。

第三者に作文を添削してもらう

第1次試験では、800字~1,200字程度の作文試験もあるため、日頃から作文を書いて文章力や表現力を鍛える必要があります。その際は、ただ一人で文章を書き続けるより第三者に添削してもらうのがおすすめです。

第三者に見てもらうことで、「自分の作文を誰かに読まれる」という緊張感が生まれて、より丁寧かつしっかりした文章が書けるようになります。また、自分の文章を読んだ第三者から客観的な感想をもらえるため、文章の特徴やクセ、直すべきポイントなども理解できて文章力や表現力の向上につながります。

作文を上手く書けるようになるコツとして、思考力を鍛えることも重要です。作文試験では、決められたテーマに沿って書かなければいけないので、文章力や表現力だけではなく、自身の経験や知識をもとに考える力も必要になってきます。
思考力を鍛えるためには、以下のように「なぜ」について自問自答しながら自分の気持ちを掘り下げていく方法がおすすめです。

問い 答え
①「なぜ消防士になりたいのか」 「社会や人の役に立つ仕事がしたいから」
②「なぜ社会や人の役に立つ仕事がしたいのか」 「人に感謝してもらえるから」
③「なぜ人に感謝されたいのか」 「気分が満たされて向上心が高まるから」

なお、第2次試験で行われる口述試験で面接官からの問いに対して端的に答えたい時にも、思考力が役立ちます。

自己分析をしたうえで第三者と面接練習を行う

第2次試験で実施される口述試験に合格するためには、面接練習が欠かせません。
志望動機や自己PRなど事前に予想できる質問に回答できるようにしておくのはもちろん、さまざまな角度から質問されるのを想定して、自己分析を行うことも重要です。

長所や短所、趣味や特技など、あらためて自分のどんな人間なのか分析しておけば、自分のアピールポイントが明確になります。さらに、面接担当者から自身に対して掘り下げた質問をされた時にスムーズに答えやすくなるメリットもあります。

また、面接練習をする際は、第三者に面接官役をお願いするのもおすすめです。より実践的な練習ができたり、その場でアドバイスをもらえたりするので、一人での面接練習では気づけなかった改善点が見つかりやすくなります。

日頃から体を鍛えて体力をつける

第2次試験では身体・体力検査もあるため、日頃から運動や筋力トレーニングを行って体を鍛えておきましょう。先述したように、身体・体力検査の検査項目は以下の通りです。

  • 1km走
  • 反復横跳び
  • 上体起こし
  • 立ち幅跳び
  • 長座体前屈
  • 握力測定
  • 腕立て伏せ

このように、身体・体力検査の内容は自宅でも練習しやすい検査項目ばかりです。また、この検査は、消防士になるために必要最低限の体力や身体能力があるかどうかを判断するために実施されるので、上記の項目の練習以外にもさまざまな筋力トレーニングに取り組み、身体能力を高めておく必要があります。
勉強と運動のルーティンをバランスよく取り組むことが、消防官採用試験に合格するコツと言えます。

高卒の消防士が収入を上げる方法3選

消防士は公務員のため安定した収入を得られますが、高卒は大卒よりも初任給が低い傾向があり、始めから高収入を稼げる環境とは言えません。そのため、高卒の消防士として収入アップを目指すポイントを知っておくことが重要です。

ここでは、高卒で消防士になって収入を上げるための方法について解説します。

経験を積んで上の階級に昇任する

消防士は、年に1回昇給が行われますが、その昇給額は階級によって決まります
階級が上がれば上がるほど収入も高くなるため、まずは消防司令長や消防士長など上の階級に昇任するのが年収を上げるコツです。

階級を上げるためには、昇任試験に合格する必要があります。階級別の受験資格は自治体によって異なりますが、主に実務経験や職務成果、勤続年数で定められている場合が多いので、全員が平等に階級を上げるチャンスが与えられているわけではない点に注意しましょう。

ちなみに、階級の中には、さらに数十段階の号俸が設けられており、勤続年数や職務成果、経験に応じて上がった号数分が給与に反映されます。そのため、すぐに上の階級に昇任できなくても、勤続年数や経験を積み重ねることで、ある程度の収入アップは期待できます。

規模の大きい消防本部に勤務する

消防士として年収アップのチャンスが得やすい環境で働きたいなら、規模の大きい消防本部に就職するのがおすすめです。

消防本部の規模は自治体によってさまざまで、大規模になればなるほど階級が細かく分類されやすいです。「階級数が多い=昇任のチャンスが多い」ということなので、消防士として収入を上げたい人にとってモチベーションが上がる環境と言えます。

また、規模の大きい消防本部は小規模の消防本部に比べて出動件数やその他の業務量が多い傾向にあり、その分給料も高めに設定されているのも特徴です。そのため、消防士としてなるべく給与が高い自治体で働きたい人は、規模の大きい消防本部への就職が向いています。

規模の大きい消防本部は、職員数がトップクラスの東京消防庁を始め都市部に集中しています。希望の勤務エリアがないのであれば、都市部の消防本部への就職を目指してみましょう。

救急救命士の資格を取得する

救急救命士の資格を取得することで収入アップが期待できます。消防士の仕事内容でもご紹介した通り、救急救命士の資格保有者は、医師の指示を受けながら急病人や怪我人の緊急救命措置を行えるのが特徴です。

救急救命士の資格を持つ消防士は、主に消火活動を行う消防士に比べて、時間内外を問わず出動数が多い傾向にあります。1回の出動につき出動手当または勤務時間外手当が支給されるため、収入アップが狙えます。
消防士として働きながら救急救命士の資格を取得する流れは以下の通りです。

  • 5年以上もしくは2,000時間以上の救急業務に従事する
  • 救急救命士養成所で6カ月以上の研修を受ける
  • 救急救命士国家試験に合格する

このように年単位の実務経験が必要なのはもちろん、消防士として働きながら研修を受けたり国家試験の勉強をしたりしなければいけません。険しい道のりではあるものの、救急救命士の資格を取得できれば、救急活動の貴重な戦力として活躍の幅が広がり、収入アップにつながります。

高卒で消防士になる4つのメリット

そもそも高卒で消防士になることに、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、高卒で消防士になるメリットについて解説します。消防士を志すべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

  • 人の命に関わる業務が多く大きなやりがいがある
  • 生涯にわたって地域貢献できる
  • 民間企業の正社員よりも高卒の初任給が高い傾向がある
  • ほとんどの自治体は休日が多い勤務形態を採用している

人の命に関わる業務が多く大きなやりがいがある

人の命に関わる業務が多い消防士は、大きなやりがいを感じやすいメリットがあります。人から感謝される機会が多い仕事なので、達成感や充実感が得やすいのが特徴です。

また、消防士は仕事の目的がはっきりしている仕事なので、日々高いモチベーションで業務に取り組みやすいです。このように、大きなやりがいを感じやすい仕事は、自身の心の安定にもつながります。

「今の仕事がイマイチ楽しくない」「もう少しやる気が上がる仕事に就きたい」という方におすすめの職業です。

生涯にわたって地域貢献できる

消防士は地方公務員のため、地域密着型の働き方が基本であり、管轄する地域以外への転勤もほぼありません。そのため、消防士として働いている限りは生涯にわたって地域貢献できるというメリットがあります。

また、地方によっては消防士に適した若い人材が不足していることから、地域活性化につながる意味で自分の存在意義が見いだせるでしょう。

「自分が生まれ育った町や愛着のある地域に貢献できる仕事に就きたい」という人は、消防士に向いています。

民間企業の正社員よりも高卒の初任給が高い傾向にある

消防士は年収1,000万円を稼ぐことは難しいですが、民間企業よりも高卒の平均収入は高い傾向にあります。以下の表は、高卒者を対象とした東京消防庁Ⅲ類の初任給と民間企業を含めた高卒の平均初任給を比較したものです。

初任給の内訳  
高卒の消防士の初任給※東京消防庁Ⅲ類の場合 約221,800円
高卒の平均初任給 約181,200円

参考:
東京消防庁「令和5年度 消防官採用試験案内 Ⅲ類」(参照 2024-01-26)  
厚生労働省「令和4年度賃金構造基本統計調査 結果の概要|新規学卒者」(参照 2024-01-26)

同じ高卒だったとしても、消防士と民間企業の初任給に約4万円程度の収入差があります。ただし、自治体の中でも特に東京消防庁の初任給は高めに設定されており、受ける自治体によって初任給が異なるため、必ずしもすべての自治体が該当するとは限りません。

ほとんどの自治体は休日が多い勤務形態を採用している

多くの消防士は、年間240日程度の休日があり、1年の約2/3が休みになります。これは、多くの自治体が消防士の勤務形態を交替制勤務にしている点が関係します。

交替制勤務とは?
法律で定められた法定労働時間である8時間を超える場合に採用される働き方のことです。消防士の場合は、朝から翌朝まで約24時間勤務を行い、次の日は休日になります。24時間勤務とは言え、仮眠や休憩の時間も設けているので、実労働時間は16時間程度です。

1日働いて1日休む働き方は、人によって向き不向きがあるものの、年間240日程度の休日があるのは大きなメリットと言えます。

ちなみに、交替制勤務を導入する自治体のほとんどは、職員を2つのグループに分けて交互に勤務する2部制と、3つのグループごとに順番に勤務する3部制のどちらかで体制を組みます。2部制と3部制の勤務サイクルは以下の通りです。

参考
・2部制:勤務→休み→勤務→休み(数サイクル後)休み→休み→休み…
・3部制:勤務→休み→休み→勤務→休み→休み(数サイクル後)日勤→勤務→休み→休み…

ただし、総務業務や予防業務など業務内容によっては、法定労働時間内で週5日働く毎日勤務が導入されているケースもあります。

高卒で消防士になる3つのデメリット

高卒で消防士になるメリットはたくさんある一方で、デメリットもある点にも注意しなければなりません。

ここでは、高卒で消防士になるデメリットについて解説します。メリットとデメリットを比較したうえで、消防士を目指すか判断するための参考にしてみてください。

  • 命がけの仕事である
  • 一般的な企業に比べ上下関係が厳しい
  • 経歴や経験を活かした転職が難しい

命がけの仕事である

消防士は災害現場で人命救助や消火活動を行うため、時には危険を伴う命がけの仕事と言えます。以下の表は、総務省消防庁が公表した令和4年度における消防士の公務による死傷者の状況です。

消防職員数 167,861人
死者 2人
負傷者 1,786人
死者・負傷者率 1.066%

参考:
総務省消防庁「令和5年版 消防白書|第2章 消防防災の組織と活動|第1節 消防体制」(参照 2024-01-26)
総務省消防庁「令和5年版 消防白書|第2章 消防防災の組織と活動|第3節 消防職団員の活動」(参照 2024-01-26)

ご覧の通り、約1%の消防士が死傷しているのが分かります。消防士の仕事は大きなやりがいを感じられる一方で、命を落とす危険性もあることも理解しておかなければなりません。

一般的な企業に比べ上下関係が厳しい

消防士は、体育会系に近い考え方の人が多い傾向があるため、厳しい上下関係が出来上がっている職場が多いのが特徴です。組織が一丸となって円滑に任務を遂行することが求められる仕事なので、チームワークが必要不可欠ではあるものの、上司や先輩の指示に忠実に従わなければいけない風潮があります。

そのため、厳しい上下関係がある環境で働くことに抵抗がある人や、対人ストレスに弱い人は注意が必要です。

経歴や経験を活かした転職が難しい

消防士は専門性の高い仕事です。消化技術や火災原因調査の知識など消防士として身につけたスキルは他の職種に活かしにくいものばかりなので、民間企業への転職に苦労するかもしれません。

ただし、消防士は公務員であることから収入面や将来面で安定した職業でもあります。さらに、日本の治安を守るうえで欠かせない存在なので、需要が衰退する心配もありません。消防士の仕事に不満がない人であれば、他職種へ転職しづらいというデメリットは、そこまで気にしなくていいでしょう。

高卒から消防士として働くことが向いている人

専門性の高い職業である消防士は、向いている人・向いていない人の差がはっきりしています。

ここでは、消防士として働くことが向いている人の特徴を解説していきます。消防士に興味がある方は、特徴が当てはまっているかどうか、ぜひ確認してみてください。

  • 正義感やメンタルが強い
  • すばやい判断力と冷静な対応力がある
  • 集団行動が得意

正義感やメンタルが強い

人の命に関わる業務が多い消防士は、強い正義感とどんな状況でも負けない精神力を兼ね備えた人におすすめです。

正義感の強さは、救助活動のスピードに直結します。火災をはじめとした災害発生時には迅速な救助活動や消火活動を行う必要があるので、「自分がやらなければいけない」といった強い責任感が活躍するうえで大きな原動力につながります。

また、メンタルが強い人は、何事にもポジティブ思考で精神的に余裕があるのが特徴です。災害現場では、目を背けたくなるようなつらい状況に遭遇する場合もあります。そんな時でも、常に前向きに作業を行える精神力があれば、消防士としてよりやりがいを見いだせるでしょう。

すばやい判断力と冷静な対応力がある

消防士は、消火活動や人命救助など1分1秒を争う現場で、すばやい判断力と冷静な対応力が求められます。

秒単位の迷いが人の命を左右する場合もあるからこそ、判断や対応に迷うような素振りを見せれば、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。そのため、現場の状況をすばやく把握するとともに、瞬時に最適な判断をくだすことが欠かせません。

また、災害現場ではあらゆる状況が想定されます。現場の状況に合わせて臨機応変な対応ができる瞬発力も必要です。

集団行動が得意

消防士の仕事は、基本的に複数人がチームとなって消火活動や救助活動などを行います。そのため、集団行動が得意な人は消防士に向いているでしょう。

消防士にはチームワークと協調性が求められます。被害を最小限に抑え、1人でも多くの人を助けるためには、常に報連相を意識しながらチーム一丸となって仕事に取り組まなければいけません。

自分勝手な個人行動は業務の妨げとなるリスクもあります。強い正義感で率先して人命救助を行うことは大切ですが、チームの一員である自覚を持った行動も必要なのです。

他者の気持ちを思いやることができる

消防士は救助活動の一環として、心身ともに衰弱している救助者に対するケアも欠かせません。他人の気持ちを汲み取って思いやりのある行動ができる人は、消防士として活躍できるでしょう。

消防士として働くのであれば、「救助者が何を思っているのか」「どうしてほしいのか」を考えて、常に救護対象に寄り添いながら接することが大切です。

また、消防士は協調性が重視される業務が多いので、周囲とのコミュニケーションが求められます。自分勝手な行動をせず、チーム一丸となって業務を遂行できる人も向いている仕事と言えます。

高卒から消防士として働くことが向いていない人

消防士は、他職種と比べて特殊な職業であるがゆえに、適性がない人が業務を行うとさまざまなリスクが伴います。

ここでは、消防士として働くことが向いていない人の特徴を解説します。自分が消防士に向いているのか不安な方は、チェックしていきましょう。

  • 運転が苦手だったり方向音痴
  • 極度な高所や閉所恐怖症がある
  • 血や汚れなどへの耐性がない
  • 他者の気持ちを考えるのが苦手
  • 働くことの第一目的がお金と考えている

運転が苦手だったり方向音痴

消防士の仕事の一つとして、消防車や救急車といった特殊車両の運転も挙げられます。そのため、車の運転が苦手な人は、できる業務の幅が狭まる可能性があります。

自治体や車両の種類によって異なりますが、緊急時の運転は、21歳以上で各車両の免許を取得して2年以上経過している人の中から選定するのが一般的です。消防車や救急車を運転する人のことを「機関員」と呼びます。

機関員は、ただ消防車を運転するだけではなく、管轄地域の消防地水利を把握しておく必要があります。

消防地水利とは?
消防地利と消防水利のこと
消防地利は消防上の対象となるもの、消防水利は消防時に使用できる水の供給設備を示す

下記引用

(1) 消防地理 地形、道路、橋りょう、建築物、工作物及びその他消防上の対象になるものをいう。
(2) 消防水利 次に掲げる水利をいう。
ア 公設水利 市が維持管理している消火栓及び防火水槽をいう。
イ 指定水利 消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第21条の規定に基づき消防署長(以下「署長」という。)が指定した水そう、池、プール等をいう。
ウ その他の水利 海水、河川、池その他水量20トン以上のもので、消防水利として使用できるものをいう。

出典: 消防地水利規程(参照 2024-01-26)

消防署によっては、カーナビを搭載していない消防車も存在するので、方向音痴な人や道を覚えるのが苦手な人は難しい業務と言えます。

また、スーパーや学校など消防点検が必要な施設へ立ち入り検査を行う時も、基本的に車で向かいます。こちらは普通車を使うため、普通運転免許を持っている人であれば運転可能です。

機関員以外の消防士が車の運転を行う場面も珍しくないため、運転が苦手な人や方向音痴な人は苦労するかもしれません。

極度な高所や閉所恐怖症がある

消防士は、マンションやビルといった建物の高層階に取り残された人を救助するために、はしごを使って高所に向かったり、高所からロープを使って救助者と一緒に降下したりします。また、震災で倒壊した建物の狭い空間に取り残された人を捜索・救助する時は、自らその空間に入ることもあります。

このように、消防士は高所や閉所に対して臆することなく救助活動を行わなければいけないので、極度の高所や閉所恐怖症の方には難しい職業かもしれません。

また、消防士になった後も、さまざまな訓練が日常的に行われており、その一環として高所や閉所での救助活動を想定した訓練も実施されています。現場はもちろん、訓練の段階で高い場所や狭い空間に滞在する機会があるので、苦手意識がある人は克服する必要があるでしょう。

血や汚れへの耐性がない

消防士は、死者が続出する災害現場での救助活動や電車の人身事故時に轢死体の後処理を担当する場合があります。傷病者の血液や体液、糞尿や嘔吐物といった凄惨な光景を目にすることも珍しくありませんが、それに動じず冷静かつ迅速な対応が求められます。

しかし、あまりのショッキングな場面に耐えられず、PTSDを発症するほどトラウマになり退職してしまう人も少なくありません。そのため、血液や汚れへの耐性がない人は、消防士に向いていない可能性があります。

働くことの第一目的がお金と考えている

高卒の消防士の収入は、民間企業に就職した高卒者よりも高い傾向があるものの、その分専門的な知識やスキルが求められたり、時には自身の命が危険にさらされたりする場合があります。

先述したように、強い正義感やメンタルを持ち、なおかつ救助対象への思いやりを持って救助活動を行う必要があるため、お金を稼ぐ目的を重視する人にとって消防士はリスキーな仕事と言えます。

また、大災害やその他イレギュラーな事件が発生した際は、休日出勤を命じられるケースも珍しくありません。休日出勤で、残業代や休日出勤手当の有無ばかり気にするようなことがあれば、業務に支障をきたすリスクがあります。

一刻を争う現場において、人の命を助けることよりもお金のことが真っ先に頭に浮かぶような人は、消防士に向いていない可能性が高いです。

消防士ならではの待遇と福利厚生

消防士は一般職に比べてリスクが高く心身ともに負担のかかる職業であるだけに、消防士ならではの待遇や福利厚生が用意されています。

ここでは、消防士ならではの待遇と福利厚生について解説します。待遇や福利厚生が気になっている方は、しっかり確認しておきましょう。

万が一に備えた補償制度がある

消防士の仕事は危険を伴うため、職務中に怪我や殉職をする可能性があります。そのため、万が一に備えて、消防士にはさまざまな補償制度が用意されているのが特徴です。

消防士における補償制度は以下の通りです。

参考
・療養補償:職務中に発生した怪我や病気の治療費を補償する
・休業補償:社会復帰までにかかる費用を補償する
・傷病補償年金:職務による怪我の治療開始後1年6カ月以上治らない場合、障害の状態に応じて支給される
・介護補償:傷病補償年金または障害補償年金を受給者で、且つ常に介護を受けている状態の人を補償する
・障害補償:障害が残った場合、障害の程度によって支給される
・遺族補償:殉職した場合、対象者の遺族に支給される
・葬祭補償:殉職者の葬祭費用を補償する

このように、療養や介護などにかかる費用の負担をはじめ、万が一怪我を負った際も治療に専念しやすいした補償制度が整っています。

手当の種類が豊富で収入が上がりやすい

消防士は、公務員且つ専門職であるがゆえに、支給される手当が豊富なのが特徴です。地域手当や住居手当といった民間企業でも支給されるものから、消防士ならではのものまで、手当の種類は多岐にわたります。

ここでは、消防士で支給される特殊勤務手当の一部をご紹介します。なお、自治体によって手当の種類や内容が異なる可能性があるため、あくまで参考程度でご覧ください。

参考
・消防深夜業務手当:22時~翌日5時の深夜帯に出勤した際に支給される手当
・火災等現場出勤手当:火災消火等のために現場へ出勤した際に支給される手当
・救急業務手当:救急患者の搬送業務を担当した際に支給される手当
・機関員手当:消防車または救急車の整備管理を担当する際に支給される手当

各種手当の支給額は自治体によって異なりますが、毎月数万円~10万円以上支給されるケースも珍しくありません。これらの手当が給料に上積みされることによって、おのずと収入も上がっていきます。

退職金が多い傾向にある

消防士は退職金が多い傾向です。これは、消防士だから特別高いというわけではなく、勤続年数が長い職員が多いことが関係しています。

高卒者の場合、消防士を目指せる年齢が20代前半までと限られているため、遅くとも20代前半には働き始めて、そのまま定年まで勤めれば、おのずと勤続年数も長くなります。

勤続年数が長ければ長いほど支給される退職金も増えていくので、「消防士は退職金が多い」と言われているのです。

高卒が消防士になる3つの注意点

ここまで高卒が消防士になるメリットやデメリット、向いている人・向いていない人の特徴についてご紹介しました。消防士の仕事について知れば知るほど、果たして自分が消防士を目指していいのかどうか迷いが生じている方もいるでしょう。

ここでは、高卒が消防士になる3つの注意点を解説します。消防士を目指すべきか検討する際の参考にしてみてください。

注意点
・当直がある
・消防官採用試験を受けられるチャンスは限られている
・消防士は本当になりたいか検討する必要がある職業

当直がある

高卒で消防士になるメリットでもご紹介した通り、消防士は24時間いつでも救援要請があった際にすぐ対応できるように、ほとんどの自治体では交替制勤務を採用しています。朝から翌朝まで丸1日勤務した次の日に丸1日休む形が多く、当直しなければいけません。

業務内容によっては、法定労働時間内で週5日働く毎日勤務を採用する自治体もあるものの、多くの消防士は当直しています。

慣れないうちは生活リズムの乱れによる心身の不調が出やすいのはもちろん、完全週休2日制の民間企業で働く人との休みを合わせづらいことから、プライベートの融通が利きづらい点もデメリットと言えます。

消防官採用試験を受けられるチャンスは限られている

高卒で消防士を目指す場合、決して何度もチャレンジできるわけではない点を理解しておきましょう。

高卒者が受験できる消防官採用試験は、原則として年に1回開催されます。また、高卒は大卒と比べて受験資格の年齢制限が厳しく、ほとんどの自治体は20代前半までと定められています。そのため、希望の自治体の採用倍率によっては、受験可能な年齢に達しても合格できない可能性もあるのです。

さらに、自治体によってはそもそも高卒者の募集を行っていないケースもあり、必ずしも希望の地域で消防士になれるとは限りません。

消防官採用試験に不合格だったり希望の自治体で高卒者を募集していなかったりした場合、次に消防士になれるチャンスがくるのは約1年後となります。試験合格に向けて勉強や体力づくりに集中するのもありですが、経済的に生活が厳しくなるのであれば、民間企業への就職して働きながら試験対策を行うのも検討してみてください。

高卒でもできる仕事13選!就職しやすく高収入が目指せる業界・職種公開!

あわせて読む

消防士は本当になりたいか検討する必要がある職業

今一度、心の底から本当に消防士になりたいかどうかを考えてみましょう。

消防士は人の命を救う仕事で、大きなやりがいがあります。その一方で、災害現場の第一線で活動するということは、常に危険と隣り合わせの環境に身を置くということでもあるので、怪我を負ったり殉職したりする可能性はないとは言い切れません。

さらに、凄惨な光景を目の当たりにすることで、精神的なダメージも負うリスクもあります。人によっては、PTSDを発症して退職に追い込まれるほどトラウマになるケースも珍しくありません。

日頃からトレーニングや訓練に励んで体を鍛えるといった地道な努力も求められます。また、大規模災害やその他非常事態が発生した場合は休日や深夜を問わず出動しなければならず、気が休まる時間が少ない職業と言えます。

リスクの大きい大変な職業であるだけに、覚悟がない人は早期退職に至る可能性もあるため、「なぜ消防士になりたいのか」「消防士になって何を達成したいのか」を繰り返し自問自答したうえで、本当に消防士を目指すかどうかを検討してみてください。

高卒で体力に自信があるならナイト系の求人もおすすめ!

消防士を目指す理由が「民間企業より稼げそうだから」「体力に自信があるから」という方は、ナイト系もおすすめです。

ナイト系の仕事の多くは18歳以上(高校生不可)から就職可能で、高卒者も含めて幅広い人材を募集しているのが特徴です。また、実力主義の業界のため、学歴や経験を問わずスピーディーに昇給・昇格を目指せるメリットもあります。努力次第で高卒者も数年で店長になるチャンスがありますし、幹部や経営者になれば年収1,000万円を実現することも夢ではありません。

中には過去に消防士からナイト系に転職して2年で店長候補になった人もいるので、持ち前のスキルや体力を活かした活躍ができるでしょう。

また、ナイト系は社会保険の加入はもちろん、寮の用意や食事補助など福利厚生が充実している企業もあるため、好待遇が受けられる職場で働きたい方にもおすすめです。

学歴・経験不問の求人も多く出ており、高卒ですぐに応募可能な企業ばかりなので、高収入を目指したい方はナイト系への就職も視野に入れてみてください。

高卒で消防士になるためのまとめ

最後に消防士になるためのポイントをまとめたので、おさらいしていきます。

ポイント
【高卒から消防士になる方法】
・希望する自治体が実施する消防官採用試験に合格する
・採用後は全寮制の消防学校に通う必要がある(原則として半年間)

【消防士になるメリット】
・命に関わる業務が多く大きなやりがいがある
・地方公務員なので生涯にわたって地域貢献できる
・民間企業の正社員として働く高卒よりも初任給が高い傾向がある
・1年の約2/3を休みにする勤務形態を採用する自治体が多い

【消防士に向いている人の特徴】
・強い正義感やどんな状況でも負けない精神力がある
・すばやい判断力と冷静な対応力がある
・集団行動が得意

消防官採用試験では高卒程度の学力と体力が求められるので、勉強と体づくりをしっかり行えば高卒で消防士を目指すことは可能です。

ただし、消防士は大きなやりがいがある一方で、さまざまなリスクを伴う大変な仕事なので、向き・不向きがはっきりしています。消防士になったことを後悔しないためにも、「自分に消防士としての適性があるのかどうか」「心の底から消防士になりたいのか」などを改めて考えてみましょう。

メリットやデメリットを理解したうえで消防士を目指したいと思った方は、本記事を参考にさっそく準備を進めてみてください。

ネクスト編集部

この記事の執筆者をご紹介

ネクスト編集部

メンバニ公式メディアのネクスト編集部。最終学歴が高卒・中卒(18歳以上高校生不可)の転職先を探している男性に向けたお役立ち情報を発信しています。

CATEGORY

当メディアサイトについて

『メンズバニラネクスト』では最終学歴が高卒・中卒(18歳以上高校生不可)の転職先を探している男性に向けた求人情報を発信しています。ご紹介する高収入男性求人は、いずれも応募資格として学歴不問を掲げながら、大卒並み、あるいは大卒以上の収入を安定して稼げる求人ばかりです。さらに業界未経験であったり、特別なスキルがなかったりしても採用に前向きな求人が多いのも特徴。誰にでも平等にチャンスがあるため、実力次第でスピード昇給・昇進も実現できます。安定した高収入を得られたら生活に余裕ができ、やりたいことや将来の夢が広がることでしょう。そのほかにも転職活動にあたって気になる情報や知っておきたい知識、面接対策などを解説したコラムも掲載しています。「学歴に関係なく評価してくれる仕事に就きたい」「高卒でも安定して稼げる仕事を探している」という方はぜひチェックしてください。

ページ最上部に戻る