高卒で公務員になる方は少なからず存在しており、一般的には「勝ち組」と呼ばれることが多いです。しかし中には、高卒で公務員になったことを後悔する方がいるのをご存じでしょうか。
高卒の公務員にはたくさんのメリットがありますが、人によってはデメリットと感じてしまう点もあります。さらに、「そもそも自分が公務員に向いていないかもしれない」と思い、このまま公務員を続けて良いのかと悩んでしまう方もいるのです。
今回はそんな高卒で公務員になった方が後悔してしまう理由や、悩みの解決に向けたやるべきことなどについて詳しく掘り下げていきます。
なぜ高卒公務員はすごいと言われるのか?
まずは大前提として、なぜ高卒で公務員になることがすごいのかを解説します。
何となく「公務員になるってすごいよね」という感覚的なもの以外にもいくつかの明確な理由が存在します。
高卒で公務員になれる人はごくわずかだから
数年前のデータではありますが、人事院「2020年度 一般職試験(高卒者試験)」によると、2019年の高卒者の公務員の採用予定者数は1,469名です。
それに対して文部科学省「令和2年3月新規高等学校卒業予定者の就職内定状況」によると、同年の高卒の就職内定者は167,021名です。
高卒で公務員になれた人は、就職者のわずか0.9%の割合で、100人に1人を切っているということになります。このように、実際高卒から公務員になる人はかなり限られた人数なので、「高卒で公務員になれるなんてすごい」と評価されることが多いのです。
人事院「2020年度 一般職試験(高卒者試験)」(参照 2023-12-14)
文部科学省「令和2年3月新規高等学校卒業予定者の就職内定状況」(参照 2023-12-14)
高卒公務員は民間企業の社員と比べて年収が高くなりやすいから
公務員の年収は長い目で見ると民間企業より高くなる傾向があります。
下記は高卒の一般公務員と民間企業の社員の月収とボーナスを合計したおおまかな初年度の年収の金額です。
- 参考
- ・高卒の一般公務員:約250万~300万円
・民間企業の社員:約250万円~約300万円
給料が低いというイメージが先行しがちな公務員ですが、実は民間企業と比べて極端に少ないわけでもありません。
むしろ公務員は勤続年数が増えるほど月収とボーナスが上がるという大きなメリットがあります。
長く勤め続ければ、民間企業に勤めるよりもはるかに高い年収を得られる可能性があるのが公務員なので、「高給取りですごい」と言われやすいと考えられます。
総務省「地方公務員給与の実態 令和4年4月1日地方公務員給与実態調査結果 第7表の1 職種別,年齢別,学歴別職員数及び平均給料月額」(参照 2023-12-14)
人事院「令和5年国家公務員給与等実態調査の結果 第 7 表 適用俸給表別、経験年数階層別、給与決定上の学歴別人員及び平均俸給額」(参照 2023-12-14)
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況(産業別)」 第5表 産業、性、年齢階級別賃金及び対前年増減率(参照 2023-12-14)
高卒公務員は勝ち組に見られやすいから
高卒で就職する場合、どうしても専門学校・短大・大学などを卒業して就職する場合と比べると就職先の選択肢の幅が狭くなります。
そして、高卒の就職先は身体を使う肉体労働の仕事が多い傾向にあります。しかし、公務員はどちらかというとオフィスワークが中心ですので、それだけでも「勝ち組」として捉えられやすいです。
さらに、公務員は国や地方自治体に勤めるため、国やその地域が財政破綻などをしない限り、真面目に働いていればリストラの可能性は限りなく低いです。一方で多くの民間企業は経営状態が景気や情勢に左右されるため、会社からリストラされたり希望退職を迫られたりする可能性が常に潜んでいます。
また、公務員は各種手当の充実ぶりや残業が少ない傾向にあるといった魅力的なポイントもあります。
このような理由から「安定した雇用と収入が見込める公務員は勝ち組として見られやすい」のです。
高卒公務員を後悔してしまう理由とは
ここまで紹介したように高卒公務員にはさまざまなメリットがあり、「勝ち組」と思われやすい職業です。
それなのになぜ高卒で公務員になって後悔してしまう方がいるのでしょうか。その理由を詳しく解説していきます。
高卒公務員は大卒公務員に比べて年収が低いから
一般的に大卒の公務員よりも高卒の公務員は年収が低いです。
参考までに令和5年4月の大卒程度と高卒程度の国家公務員の初任給を比較すると、大卒程度は196,200円~200,700円に対し、高卒程度は166,600円と約3万円の差があり、最初の年の基本給だけですでに約36万円も差があります。
さらに生涯年収で考えるとその差は顕著で、大卒で22歳から60歳まで働いた場合と、高卒で18歳から60歳まで働いた場合、毎月3万円の差があるという単純な計算でも何と1,000万円以上の差が生まれます。
一方で多くの中小企業・ベンチャー企業・歩合制の営業職・資格の有無で給料アップが期待できる工場作業員などの民間企業で働いた場合、単純に学歴だけで年収の差は生じません。
上で挙げた企業や業種は実力主義で、個人の成果が収入に直結するケースが多いため、大卒以上の年収を手にすることも頑張り次第で十分可能です。
同様に、当サイトでおすすめするナイト系も頑張りと成果次第でスピード昇給や昇格が狙える業種ですので、大卒の公務員よりも高収入を稼ぎたい方は検討してみる価値はあります。
参考:人事院「国家公務員の初任給の変遷(行政職俸給表(ー)(参照 2023-12-19)
大卒公務員と高卒公務員では待遇と昇進できる役職に差があるから
高卒と大卒の公務員は、待遇や昇進できる役職にも違いが出ます。
大卒だとはじめから幹部候補として採用されるケースが多く、初任給が高いだけでなく、出世のスピードも速い傾向にあります。昇格すればその分給与も高くなるため、生涯賃金や退職金の金額にも大きな差が生まれるのです。
一方で、高卒の場合は課長クラスから上に昇進するケースは非常に少ないです。そのため、昇給による収入アップや退職金の金額が大卒の人に劣ってしまう可能性があります。
さらに公務員の昇給は年に1回、そして昇給額もルールで決まっているため、一気に昇給や昇格はまず不可能です。
しかし、先述の通り、民間のベンチャー企業やナイト系は昇給も昇格も随時実施しており、実力次第でドンドン上を目指せるというところが多いです。「収入アップも役職も自分の手で掴みたい」というハングリー精神のある方はベンチャー企業やナイト系に就職することも検討してみると良いかもしれません。
キャンパスライフを楽しむ同世代と比較してしまうから
高卒で公務員になった人の同級生の多くは、大学や専門学校などへ進学していることが多いです。自由時間が多いので、学業・サークル・恋愛・旅行・アルバイトなど、学生時代にしか楽しめないことを毎日謳歌している友人も多いのではないでしょうか。
一方で、高卒で公務員になった人は、有給休暇が付与されるまでは基本的に土日祝日以外の休みがありません。
のびのびとキャンパスライフを送る同級生と、仕事に追われる自分とを比較してしまい、「みんな楽しそうで羨ましいな、就職せずに大学に行けばよかったかもしれない」と後悔してしまう人は一定数います。
特に一度でもキャンパスライフに憧れを持ったことのある人はこのように感じてしまう傾向が強いです。
2~4年ごとに人事異動があるから
公務員には、「特定の個人や団体との癒着を防ぐため」「さまざまな業務を経験するため」といった目的で人事異動という部署の異動や転勤の制度があります。
人事異動は毎年実施されていますが、だいたい2年から4年ごとに自分が人事異動の対象になるケースが多いです。
公務員は法律によって「職務命令に従う義務」が定められているので、個人的な理由では拒否ができません。人事異動を言い渡されると、異動先で再び人間関係を構築する必要があったり、ようやく慣れた仕事から離れて異動先の新しい仕事を覚えないといけなくなったりします。
この人事異動が嫌で、高卒で公務員になったことを後悔する人もいます。
将来的なAI化に対して不安を感じるから
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公務員のオフィスワークって近いうちにAIに取って代わられるんじゃないか
このように考えている方は少なくありません。
近年話題になったChatGPTをはじめ、昨今のAIの進化は目覚ましいものがあります。近い将来、単純な事務作業などがAIで対応できるようになれば、公務員のなかでも特に事務職の環境も変わる可能性は高いです。
AIの進化を目の当たりにした人の中には、いずれAIに仕事を取られてしまい、最後には自分がリストラされるかもという不安が募り、「公務員にならなければよかった」と後悔する人もいるかもしれません。
しかし結論からいうと、財政面で行政のAIの本格導入がまだまだ難しいことや、そもそも解雇に関する法律面の観点から、公務員が簡単にリストラされることはありませんのでご安心ください。
それでも不安を払拭できないという方は、AIを使いこなすスキルを身に付けてみてはいかがでしょうか。本当にAIがオフィスワークの中心となった場合、そのAIを扱えるスキルの価値が高まることは間違いないので、将来を見据えて今のうちから準備を進めておくのも一つの手です。
高卒公務員であることを後悔したままにしない方法
ここからは高卒で公務員であることを後悔したままにしないために、おすすめの方法をご紹介します。
高卒で公務員になることはとても立派なことであり、容易に真似できるものではありません。そんな誇るべき職業ですが、「どうしても自分は後悔の気持ちが消えない」という方もいるでしょう。
そんな方はぜひ次で紹介する方法を検討してみてくださいね。
第三者に相談して客観的な意見を聞く
友人・知人・家族など、第三者に相談して話を聞いてもらうのはとても有効です。ここでいう第三者とは、今回のケースであれば公務員の人以外が該当します。
高卒で公務員になったことを後悔している理由が明確であれば、自分の感覚がズレていないか、第三者の客観的な意見を聞いてみましょう。
しかし、中には後悔している理由がハッキリと分からない方もいます。特に若いうちはこの傾向が少なくありません。
ただ何となく「公務員にならなければよかった」という気持ちだけで公務員を辞めてしまうと、さらに後悔してしまうことになる可能性もあります。周りの人に悩みを打ち明けて、まずは後悔している明確な理由を突き止めることが大切です。
公務員になったことを後悔している理由が明確な方も不明な方も、第三者からの意見を参考にして自分の考えを整理してみてください。もしかしたら、公務員を辞めずに今の悩みを解決できる方法が見つかる可能性もあります。
辞めてしまうことはいつでもできます。その前に一度自分を見つめ直し「本当に公務員を辞めてしまって良いのか」と落ち着いて考えてみるのがおすすめです。
民間企業に転職する
思い切って民間企業に転職する方法もあります。
公務員は年功序列に基づいた昇給・昇格制度が根強く残っていて、どれだけスキルを身に付けて頑張って働いても成果に見合った昇給や昇格がしづらいです。
民間企業なら成果がしっかりと評価される実力主義の会社がありますので、自分の実力で収入アップを掴み取りたい方は検討してみても良いでしょう。
しかし、公務員から民間企業への転職は容易な道ではありません。
まず公務員の業務内容は民間企業では通用しづらいのが大きなポイントで、転職先の業務に直結するスキルを持っていない場合は、キャリア採用といった方法で中途採用してもらうのが難しいからです。
さらに、公務員は待遇が良く、民間企業が用意している待遇との差にギャップを感じてしまうかもしれません。公務員は雇用と収入が安定しており、離職率がとても低い職業です。そのため、民間企業に就職した際に待遇の違いを目の当たりにすると「公務員ってすごく良い職業だったんだ」と、むしろ公務員を辞めてしまったことを後悔してしまうケースもあります。
公務員から民間企業への転職を考える場合は、じっくりと考えてからにしたほうが良いでしょう。
また、現職が警察官や消防士などの体力を使う職種の公務員で「スキルはないけど体力やガッツに自信がある」という方は、待遇も給与も良いお店が多いナイト系への転職もおすすめです。実際に消防士からナイト系に転職して成功した方もいます。
大学や専門学校へ入学する
高卒で公務員になったことを後悔する方は、大学や専門学校に入るのも一つの方法です。
「キャンパスライフに憧れていた」という方はまずは大学へ入って、4年間たっぷりとキャンパスライフを楽しみましょう。そして、興味のある分野を専攻して専門知識をつけたり、特定の職業や資格の応募・受験資格を得たりすることで、自分の理想の仕事へ就職できる可能性が高まります。
本当に自分がやりたい仕事がより専門的なスキルや知識を求められるのであれば、専門学校へ入るのもありです。
多くの専門学校の在籍期間は2年間ですが、この限られた期間で集中してスキルや知識を学べます。しっかりとスキルや知識を身に付ければ再就職の際に有利になるばかりではなく、キャリアの幅が広がるという明確なメリットがあります。
また、進学をすれば最終学歴が大卒・専門学校卒になるので、学歴コンプレックスがあるという方は進学をするのも手です。
ただし、進学には学費がかかるほか、在籍中は無収入となる可能性が高いです。社会人としてのキャリアも一旦ストップすることになるので、学費や生活費、将来のキャリアの計画を立ててから実行することをおすすめします。
高卒公務員に向いている人物像
高卒で公務員になるのに向いている方について解説します。
結論からいうと「安定志向」の強い方は公務員に向いています。
詳しく紹介していきますので、内容に共感できる、自分の考え方によくあてはまるという方は、すぐに公務員を辞めるべきではないかもしれません。
安定した収入がほしいと思っている人
公務員と聞いてまず思い浮かべるのが安定した収入ではないでしょうか。
公務員は実力に関係なく一定の金額の給料がもらえるのは、人によっては大きなメリットといえます。給料が安定していると、家や車といった大きな買い物の計画や子どもの進学にかかる費用、そして老後のための貯金などの計画が立てやすいです。
さらに公務員には「年金払い退職給付」という制度があります。これは一般でいうところの企業年金に近いもので、通常よりも多くの年金がもらえます。
老後までずっと安定した暮らしを望む方は公務員が向いているといえるのです。
国や地域のためになる仕事をしたい人
一般の会社員は基本的に会社の利益を追求するために働く人が多いですが、公務員は国やその地域のために働く職業です。
職種によって仕事内容は異なりますが、福祉や災害の対応など市民の生活を支援する業務や、法律や政治に関わる業務があります。国やその地域に住む人にとって欠かせない仕事であり、人によっては非常にやりがいや誇りを感じる仕事です。
「そこに暮らす人々の役に立つ仕事をしたい」といった高い意識を持っている方は、公務員はとても向いている仕事といえます。
定年まで安心して働き続けたい人
公務員は定年まで基本的に安定して働き続けられるという大きなメリットがあります。
公務員の雇い主は国や地方自治体です。一般企業と違って営利目的ではないので、業績不振からのリストラや倒産はまずあり得ません。また、国家公務員法や地方公務員法などにより、法的に正当な理由がなければ解雇はされないことになっています。
「転職や副業はしたくない、できれば一つの職場でずっと働き続けたい」という方は、公務員に向いているといえます。
とはいえ、先述した人事異動による転勤が2年から4年間隔であるという点だけ念頭に置いておいてください。
高卒公務員になり後悔してしまう人の特徴
公務員に向いていない方についても解説します。
結論からいうと「上昇志向」の強い方は公務員には向いていない傾向にあります。
その理由を一つずつ解説していくので、公務員が自分に合っているのかどうか迷っているという方は参考にしてみてください。
専門的なスキルアップを目指したい人
公務員は特定のスキルを習得して専門性を高めることが難しいとされています。
公務員には2年から4年周期で人事異動があるため、せっかく仕事に慣れてきてある程度スキルが身に付いてきたと思ったら人事異動というケースが多いです。そして全く違う部署で全く違う仕事に配属された場合、またイチからのスタートとなってしまいます。
基本的なPCスキルやコミュニケーションスキル、マネジメントスキルなど、ある程度どの業界・職種でも必要なスキルは高めることが可能ですが、「専門的なスキルを身に付けてその道のエキスパートになりたい」と考えている方は公務員には向いてないといえるでしょう。
お金をとにかく稼ぎたい人
公務員の給料は安定していますが、たくさん稼ぎたいからと成果を出してもすぐに給料は上がりません。
逆に成果を上げなくても給料は下がらないため、公務員の給料は「良くも悪くも安定している」ともいえます。
民間企業の場合は成果がすぐに評価されて昇給・昇格できたり、成果に応じた収入が得られるインセンティブ制度が用意されていたりと、自分の頑張りが給料アップに繋がるケースがあります。
さらに民間企業では副業OKという企業も多いですが、公務員は基本的に副業は禁止です。
つまり、自分の頑張りで給料を上げたいという方は公務員には向いていません。
出世欲が強い人
公務員は年功序列の考えが根強く残っており、出世には勤続年数や年齢などが強く影響します。そのため早くから出世することはまず不可能です。
一方で民間企業の場合は、昇格の条件に勤続年数や年齢などは不問としているところも珍しくなく、実力次第で入社直後から部署のリーダーや役職に抜擢されることもあります。特にベンチャー企業のような若い会社ではこの傾向がより顕著です。
「仕事を頑張って成果を出してドンドン出世したい」という方は、公務員ではなく、民間企業に就職する方が向いているといえます。
高卒公務員で後悔するかは考え次第!キャリアを見据えて行動しよう
高卒の公務員がすごいといわれる理由、高卒で公務員になって後悔する理由などを解説してきました。
高卒で公務員になれるのはすごいことです。しかし万人にとって最適な職業というのは存在せず、特に給料や昇格の面で公務員が合わないという方もいます。
本記事を参考にして、自分が公務員に合っているのか合っていないのか、今一度自分を見つめ直してみましょう。公務員が合わない方は、今後のキャリアプランを考えながら、民間企業への転職や大学・専門学校への進学といった手段をとることも可能です。
また、実力次第で昇給や昇格を目指せる仕事が良いという方は、ナイト系の仕事もおすすめです。多くのお店が完全実力主義なので、「自分の力で今すぐ高収入も役職も手に入れたい」という方はぜひ検討してみてください。