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中卒で介護福祉士を目指すにはどんなことをすればいい?
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中卒から転職して介護福祉士になるメリットってある?
今回は介護福祉士への転職をお考えの中卒者に向けて、転職を成功させるポイントを解説していきます。
中卒から介護福祉士になるまでの条件や具体的な手順、介護福祉士試験に合格するための対策方法、さらには、介護福祉士に向いている人の特徴や中卒から目指すメリットやデメリットを網羅的にご紹介します。
中卒から介護福祉士になるためのマニュアルとして、本記事をぜひお役立てください。
中卒で介護福祉士になることはできる
中卒でも介護福祉士になることができます。
介護福祉士になるには介護福祉士の資格を取得しなければなりませんが、試験は一定の要件を満たせば学歴不問で受験が可能なので、中卒者も目指すことができます。
介護福祉士とは、介護職で唯一の国家資格を保有している介護士を指します。高齢者や障がい者の食事や入浴、排泄といった生活全般のサポート、利用者本人やその家族に対してアドバイスや指導を行うのが主な仕事内容です。
介護福祉士になれば介護業界において従事できる仕事の幅が増え、ケアマネージャーなどへのステップアップを狙えます。
介護業界は人手不足の傾向があり、高齢化社会に伴って介護職の需要はどんどん高まっている業界です。実際、介護職は学歴・経験不問の求人も多いことから、中卒・未経験からでもチャレンジしやすい仕事と言えます。
介護福祉士になる基本条件
介護福祉士になるには、介護福祉士国家試験に合格することが必須です。
介護福祉士国家試験を受験するには、以下の4つのルートのいずれかにおいて、資格要件を満たしている必要があります。
介護福祉士になれるルート | 介護福祉士国家試験の受験条件 |
養成施設ルート | 指定された養成施設に2年間通学して卒業する |
実務経験ルート | 3年以上の実務経験を積むおよび実務者研修を修了する |
福祉系高等学校ルート | 福祉系高校(2009年度以降入学)で、定められた科目・単位を取得して卒業する |
経済連携協定(EPA)ルート |
経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアやフィリピン、ベトナムといった締約国からのEPA介護福祉士候補者が受験可能。日本人は対象外 |
「養成施設ルート」や「福祉系高等学校ルート」は、介護福祉養成施設や福祉系高校に入学して所定の課程を修了しなければなりません。
そのため、中卒・未経験の場合は、「実務経験ルート」で一定の要件を満たし、受験資格を取得するのが一般的です。「実務経験ルート」で介護福祉士を目指す方法については、後ほど詳しく解説します。
中卒で介護福祉士になる方法と手順
介護福祉士になるには、先述したように4つのルートがあります。
中卒で介護福祉士になるなら、実務経験ルートが一般的です。そのため、ここでは実務経験ルートに絞って方法と手順について解説します。
主な工程は以下の3つです。
- 3年以上の実務経験を積む
- 介護福祉士実務者研修を修了する
- 介護福祉士国家試験に合格する
それぞれ詳しく見ていきます。
中卒で介護福祉士になる方法①3年以上の実務経験を積む
実務経験ルートで介護福祉士になるためには、「3年以上の実務経験」を積む必要があります。
具体的には、従業期間3年以上(1095日以上)かつ従業日数540日以上の実務経験が必須です。
受験資格で定められている実務経験を積める施設・事業と職種の一部をご紹介します。
分野 |
受験資格となる施設・事業 |
受験資格となる職種 |
児童分野 |
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障害者分野 |
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高齢者分野 |
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その他の分野 |
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介護等の便宜を供与する事業 |
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上記のような指定内のいずれかの施設・事業および職種で540日以上の実務経験を積むことで、現場での実務経験の条件をクリアできます。
ただし、なかには対象の施設での仕事であっても、受験資格の対象外となる職種もあります。基本的に介護が主な業務ではない職種は対象外となるので、希望の職種が受験資格の対象となるかは、必ず事前に確認しておきましょう。
中卒で介護福祉士になる方法②介護福祉士実務者研修を修了する
実務経験を積むルートで介護福祉士試験の受験資格を得るには、「介護福祉士実務者研修の修了」も必要条件です。
介護福祉士実務者研修とは、介護に関する専門的な知識や基本的な技術能力の習得を目的とした資格です。内容は全20科目の座学とスクールに通学必須の演習で構成されています。
介護福祉実務者研修を修了するには、所定のカリキュラムを450時間受けなければなりません。修了までの期間は約6ヶ月程度が目安です。
介護福祉実務者研修は受講要件が設けられていないため、中卒・未経験でも受講が可能です。ただし、介護の専門的な内容がカリキュラムに含まれるので、初心者には難易度が高い研修と言えます。
そのため、未経験であれば介護の基礎知識について学べる「介護職員初任者研修」から受講するという手もあります。介護職員初任者研修を修了していれば、介護福祉実務者研修のカリキュラムが一部免除され、320時間の受講で介護福祉実務者研修を修了することが可能です。
介護福祉士実務者研修のポイント
- スクールに通うことで取得できる資格
- スクールによっては振替制度もあるので、働きながらでも取得可能
- 初任者研修修了者をすでに取得している場合は、カリキュラムが少なくなり受講料も安くなる
- 教育訓練給付制度の対象のため、受給要件を満たしていれば研修費用に対して国から補助を受けられる
中卒で介護福祉士になる方法③介護福祉士国家試験に合格する
実務試験を積んで職場で申請できる「実務経験証明書」、介護福祉士実務者研修後に発行される「実務者研修修了見込証明書」や「実務者研修修了証明書」を得られたら、ようやく介護福祉士国家試験を受験できるようになります。
介護福祉士試験は年に1回しか実施されません。上記の書類は応募時に必須なので、受験勉強だけでなく受験準備も早めに行うようにしましょう。
なお、介護福祉士国家試験は第1次試験(筆記試験)と第2次試験(実技試験)がありますが、実務経験ルートを選択している場合は実技試験が免除されます。
そのため、筆記試験に合格できれば介護福祉士の資格を取得可能です。
中卒で介護福祉士になるための資格試験の対策方法
介護福祉士国家試験を実務経験ルートで受験する場合は、筆記試験に合格しなければなりません。
ここでは、中卒で介護福祉士になるための資格試験の対策方法について解説します。試験に合格するために、今からしっかり対策を行っていきましょう。
介護福祉士国家試験合格のための対策①筆記試験の全体像を知る
はじめに介護福祉士試験の全体像を理解してから勉強を始めるのが重要です。全体像を知ることで、今後の学習のスケジュール立てがしやすくなり、勉強を効率良く進められるようになります。
介護福祉士国家試験における筆記試験は全11科目群から出題され、各科目群すべてで1問は得点しなければなりません。出題範囲が広いので、覚えることが非常に多いです。
それぞれの科目で出題される問題の傾向を把握するために、過去数年分の問題集に目を通しておきましょう。試験の全体像のイメージが掴めれば、自分にとって得意な分野や苦手な分野、重点的に勉強すべき分野が分かり、勉強の方針を立てやすくなります。
- 参考
- 【介護福祉士試験の筆記試験の概要】
・マークシート方式で、基本的には5つの選択肢から回答を選択する
・試験問題は全125問
└「人間と社会」「介護」「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」の4分野・11科目群の中から出題される
【筆記試験の合格基準】
総得点(125点)の60%程度(75点)
※問題の難易度によって補正される
【例年の合格率】
合格率は70%前後
参考:社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 出題範囲・合格基準」(参照 2024-02-01)
介護福祉士国家試験合格のための対策②得点が取れる分野を優先的に勉強する
筆記試験の出題傾向を掴んだら、得点が取れる分野から優先的に勉強していきましょう。
筆記試験はすべての科目で点数を取らなければならないので、得意科目だけでなく苦手科目もしっかり勉強しなければなりません。しかし、得点を取るのが難しい苦手科目ばかりに時間を費やしていると、本来なら得点が取れるはずの分野で点数を落としてしまう可能性があります。
特に苦手科目は満点を目指す必要はないので、最低限の得点がとれるような目標で勉強できれば問題はありません。確実に点数を稼ぐためにも、伸びしろのある得意科目をしっかり勉強していくのが得策です。試験に頻繁に出る分野や出題範囲を重点的に勉強していくことで、点数を伸ばしやすくなります。
また、テキストの内容をしっかり暗記することも受験勉強で必要な手法ですが、テキストに書かれている内容のすべてを暗記するのは難しいです。やみくもに丸暗記しようとするのではなく、実際に業務で知識を使う場面を想像しながらビジュアルと一緒に覚えていくのもおすすめです。
介護福祉士国家試験合格のための対策③過去問を解いて対策する
勉強をある程度進められたら、実際に過去問題集を解いてみましょう。
過去問題集を解くことで、出題される問題の内容をより具体的に把握できるだけでなく、今の自分の実力も確認できます。
自分の実力が分かれば、合格ラインに到達するまであと何点取らなければならないのか、どの分野をより重点的に勉強すべきかが明確になります。間違った問題に関しては復習を行い、過去問を繰り返し解いて頭に定着させるようにしてください。
介護福祉士試験は、総得点の60%程度が合格基準とされています。合格率は約70%と比較的高い傾向にあるので、しっかり対策すれば1回で合格を目指せます。
介護福祉士に向いている人・向いていない人
介護福祉士は学歴・経験不問で活躍できる職業ですが、人によって向き・不向きがあります。ここでは、介護福祉士として求められる人物像や能力について解説します。
向いている人 | 向いていない人 |
人と接したり人のためになることが好きな人 | 汚れや臭いが耐えられない人 |
観察力と用心深さを兼ね備えた人 | 土日祝日に休みを取りたい・夜勤NGな人 |
体力に自信がある人 | 自分のペースで仕事を進めたい人 |
介護福祉士に向いている人の特徴3つ
介護福祉士に向いている人の特徴を絞ると、以下の3つです。
- 人と接することや人のためになることが好きな人
- 観察力と用心深さを兼ね備えた人
- 体力に自信がある人
介護福祉士は、介護する相手(被介護者)と密に接しながら生活のサポートを行います。言葉でのコミュニケーションがとれない場合もあり、試行錯誤しながら介護を行う必要があります。時には被介護者の家族と接する機会もあり、勤務中は他のスタッフとの連携も欠かせません。
そのため、根本的に人と接することが好きな人や、他人のためになる仕事にやりがいを感じる人に向いている仕事です。逆に人と接するのが苦手な人にとってはストレスを感じやすく、長く続かない仕事であるとも言えます。
また、介護は相手のわずかな表情の動きや仕草で求めていることを察したり、日々症状が変化する被介護者の様子を観察しながら対応したりする必要がある仕事です。細かな変化を見逃してしまうとそれが事故につながることもあるので、観察力がある人や用心深い人に向いています。
そして、介護現場で働くうえで体力は欠かせません。入浴や排泄をはじめとした被介護者の生活のサポートは身体的に負担がかかりやすく、体力を必要とします。体力に自信がある人なら、スムーズに業務をこなせるだけでなく、介護業界ならではの変則的な勤務にも対応しやすいです。
介護福祉士に向いていない人の特徴3つ
介護福祉士に向いていない人の特徴は、以下の3つです。
- 汚れや臭いが耐えられない人
- 土日祝日に休みを取りたい・夜勤NGな人
- 自分のペースで仕事を進めたい人
介護福祉士は利用者の入浴や排泄のサポート、食事の介助などを行います。臭いや汚れなどが避けては通れない仕事で、いわゆる潔癖な人は抵抗を感じるケースが多いです。施設によっても介助の内容や範囲は異なるので、事前に具体的な業務内容を確認しておくことをおすすめします。
また、介護の仕事は24時間体制で行われることも多く、土日祝日の勤務や夜勤がある職場がほとんどです。不規則な勤務となったり、プライベート面で融通が利きにくかったりするため、家族や友人と休みを合わせるのが難しい傾向にあります。土日祝日に必ず休みを取りたい人や夜勤をしたくないと考えている人は、介護福祉士には向いていないと言えます。
さらに、介護は被介護者やそのご家族の要望を優先する「サービス業」です。マニュアル通りやスケジュール通りに仕事が進まないことも多く、基本的に自分のペースやこだわりが譲れないという人には向きません。接する相手は年齢や症状によっては意思疎通が難しい方もいるので、常に相手に寄り添って対応方法を考えていく必要があります。介護福祉士は要望や状況に応じて対応方法を模索する柔軟性も大事な仕事なのです。
中卒で介護福祉士になるメリット・デメリット
中卒で介護福祉士になるメリット・デメリットは、それぞれ以下の3つが挙げられます。
メリット | デメリット |
資格手当がつくので無資格の介護士よりも給料が高い | 体力仕事のため身体に負担がかかりやすい |
日本全国で通用する資格なので就職先を探しやすい | 勤務時間や休日が不規則になりがち |
スキルアップやキャリアアップのチャンスがある | 資格取得までに必要な工程が多い |
介護福祉士を目指すか悩んでいる中卒者は、これから詳しく解説するメリット・デメリットをしっかり理解したうえで決断するようにしてください。
中卒で介護福祉士になるメリットは3つ
中卒で介護福祉士になるメリットは、以下の3つです。
- 資格手当がつくので無資格の介護士よりも給料が高い
- 日本全国で通用する資格なので就職先を探しやすい
- スキルアップやキャリアアップのチャンスがある
多くの介護施設では資格手当制度が設けられており、介護福祉士の資格を取得していれば資格手当がつく可能性が高いです。資格手当が支給されれば、無資格の介護士よりも高い給料をもらえます。
さらに介護福祉士は日本全国で通用する国家資格です。介護福祉士は資格更新の必要がなく、一度取得すれば一生使える資格なので、就職や転職の際にも有利に働きます。日本は高齢化が進んでいるため、高齢者向けの介護業界などは今後ますます需要が高まり、仕事に困る可能性も少ないです。
また、介護福祉士の資格はスキルアップやキャリアアップにも役立ちます。資格があれば現場のリーダーなどの重要なポジションを任せてもらいやすくなり仕事の幅も広がるので、昇給・昇格につながりやすいです。ちなみに、介護福祉士の資格を持っていれば、ケアマネージャーや認定介護福祉士などの資格取得も目指せるようになり、年収をアップさせたい方やキャリアを積みたい方にとっては必須の資格とも言えます。
介護業界は無資格でも就職できますが、介護福祉士の資格があれば受けられるメリットがかなり多いです。介護業界へ転職するなら、できるだけ早めに介護福祉士の資格を取得しておくことをおすすめします。
中卒で介護福祉士になるデメリットは3つ
中卒で介護福祉士になるデメリットは、以下の3つです。
- 体力仕事のため身体に負担がかかりやすい
- 勤務時間や休日が不規則になりがち
- 資格取得までに必要な工程が多い
繰り返しになりますが、介護の仕事は体力仕事です。女性でも働ける仕事なのでそこまで腕力を必要とするわけではありません。しかし、基本的に立ったり座ったりと姿勢を頻繁に変えたり、被介護者の体重を支えたりするため、体力がないとかなりきつい仕事になります。
施設によっては人手不足から一人あたりの業務量が多くなる場合もあり、相当な体力が求められます。
また、多くの職場で土日祝日の勤務や夜勤もあることから、休みが不規則になりがちです。心身ともにきつさを感じやすい勤務形態であり、慣れるまでは抵抗感を感じる人もいます。家族や友人と休みを合わせにくいため、家族との時間や交友関係を重視したい人には見逃せないデメリットと言えます。
そして、介護福祉士は中卒から国家資格を取得してなれる職業ですが、資格習得のためには介護の実務経験を3年積んだうえに、スクールに通って介護福祉士実務者研修を修了する必要があります。高校、専門学校、大学などに通う必要はなく、資格試験の合格率も比較的高いものの、今すぐ稼ぎたい・転職したいという中卒者には少し条件が多いと感じられるかもしれません。
介護福祉士以外で転職を検討するならナイト系がおすすめ
介護福祉士は中卒・未経験でも就職しやすい職業で、資格を取得していればスキルアップやキャリアアップも狙えるというメリットがあります。しかし、資格手当が支給されるとはいえ、介護職はそれほど給料が高くはないのですぐに高収入を目指すのは難しい職種です。
「学歴不問で働ける仕事に就きたい」「今より収入アップを目指したい」という理由で転職先をお探しであれば、ナイト系への転職もおすすめです。
ナイト系は18歳以上(高校生不可)であれば応募可能で、学歴・経験不問の求人も多いのが特徴です。実力主義の業界なので、学歴に関係なく早期から昇給・昇格を目指せます。また、管理職や経営者にステップアップすれば、年収1,000万円を稼ぐことも夢ではありません。
転職先の選択肢を広げるなら、ぜひナイト系への転職も視野に入れてみてください。
中卒で介護福祉士になるためのおさらい
最後に、介護福祉士になるためのポイントをまとめました。
- ポイント
- 【中卒から実務経験を積んで介護福祉士になる方法】
・3年以上の実務経験を積む
・介護福祉士実務者研修を修了する
・介護福祉士試験に合格する
【介護福祉士になるメリット】
・資格手当がつくので無資格の介護士よりも給料が高い
・日本全国で通用する資格なので就職先を探しやすい
・スキルアップやキャリアアップのチャンスがある
介護福祉士は学歴不問・未経験歓迎の求人も多く、中卒から介護福祉士を目指すことは可能です。
ただし、体力面に不安がある方やそもそも人と接する仕事が苦手な方には向かない仕事でもあるので、「本当に介護福祉士になりたいのか」を今一度考えてみてください。それでも介護福祉士になりたいと思った方は、さっそく準備を進めていきましょう!