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高卒でコンサルタントに転職するためにはどうすればいいの?
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コンサルタントに転職する際に高卒ならではの強みとは?
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コンサルタントへの転職で高卒が取るべき資格はある?
コンサルタントとは、主に企業が抱える課題の改善に向けてサポートする役割を担う職業を指しますが、高卒で転職するためには何をすればいいのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、コンサルタントに転職したい高卒の方に向けて、以下の内容を解説していきます。
- 高卒でもコンサルタントに転職できる理由
- 高卒でコンサルタントに向いている人の特徴
- 高卒でコンサルタントに転職する方法
- 高卒でコンサルタントに転職する際に有利になる資格
高卒がコンサルタントに転職する際の優位性もご紹介するので、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
コンサルティング業界とは

コンサルティング業界とは、企業をはじめクライアントが抱えるさまざまな課題を解決する役割を担う「コンサルタント」の業界を指します。
- 【「コンサルティング」と「コンサルタント」の違い】
- 「コンサルティング」は課題解決のための助言や指導を行う行為自体を指し、その業務を行う専門家のことを「コンサルタント」と呼びます。
コンサルタントの仕事内容は、携わる分野によって異なりますが、主に企業の経営戦略の立案、業務改善、人事・組織改革、人材サポートなどが挙げられます。
クライアントの現状を多角的に分析したうえで改善案を提案する必要があるため、専門分野に関する豊富な知識や高い調査力の習得などが求められます。
なお、コンサルティング業界は、主に以下のように分類されるのが一般的です。
- 戦略系コンサルティング
- ITコンサルティング
- 会計系コンサルティング
- 人事系コンサルティング
- シンクタンク系コンサルティング
- 事業再生コンサルティング
- 医療系コンサルティング
どの領域のコンサルティングに携わりたいかによって就職先のコンサルティング会社も変わってくるので、高卒で転職する際は目指す分野を明確にさせておくのが大切です。
難易度は高いが高卒でもコンサルタントに転職できる

高卒からコンサルタントに転職する難易度は高いものの、決して不可能ではありません。
コンサルタントになるうえで必要な資格は定められていないため、高卒者も目指すことは可能です。
コンサルタントに求められるのは、クライアントが抱える悩みに対して適切な改善策を提案し、実行に移す能力です。このスキルを鍛えるためには、専門領域に関する豊富な知識を習得したり実務経験を積み重ねたりしなければいけません。
学歴より実績が重視されるからこそ、高卒者もコンサルタントとして活躍するチャンスは十分にあります。
ただし、実際にコンサルタントとして働く人のほとんどは大卒者なのが実情です。コンサルティング業界の給与相場は、他業界より高く設定されている傾向にあるため、学歴より経験重視の職業とは言え、高学歴者も多く集まってきます。
高卒者が高い競争率を勝ち抜いてコンサルタントに転職するためには、「大卒者より早く社会人として実務経験やスキルを積んでいる」という強みを上手くアピールすることが重要です。前職で得た豊富な知識や経験についてアプローチできれば、特に未経験OKの企業から採用される可能性が高まります。
高卒でコンサルタントに向いている人の特徴5選

コンサルタントに向いている高卒の人の特徴を5つ紹介します。
- 論理的思考力・分析力がある人
- コミュニケーションが得意な人
- 好奇心旺盛な人
- プレゼンが得意な人
- 体力がある人
先述した通り、コンサルタントはさまざまな角度から企業をサポートする重要な役割を担っているため、向き・不向きがはっきりした職業と言えます。
コンサルタントへの転職を目指す前に、そもそもコンサルティング業務に適した性格かどうかチェックしていきましょう。
論理的思考力・分析力がある人
論理的思考力と分析力がある人は、高卒のコンサルタントとして活躍できる可能性があります。
コンサルティングは、クライアントが抱える課題に対する解決策を論理的かつわかりやすく説明することが必要です。この解決策に至るまでの経緯を明確にしたうえで自分の考えを示せるようになれば、より説得力のある提案ができるため、クライアントから信頼されるコンサルタントになれるでしょう。
論理的思考力を活かして提案を行う際は、クライアントに関するあらゆるデータを参考に、問題点の原因を洗い出さなければいけません。分析力がある人は、一つの情報からさまざまな傾向やパターンを読み解くのを得意としており、問題の根本的な原因を見つけ出せる可能性が高いため、コンサルタントに向いています。
論理的思考力や分析力は、実務経験の積み重ねやスキルアップを通して鍛えられる能力です。高い論理的思考力と分析力を兼ね備えておけば、高卒者もコンサルタントに転職できると言えます。
コミュニケーションが得意な人
高卒者がコンサルタントとして活躍するためには、高いコミュニケーション力を持っていることも重要です。
コンサルティングをする際は、クライアントが抱える課題や悩みを解決するために入念なヒアリングが欠かせません。クライアントとスムーズに意思疎通ができなければ、課題や悩みを正確に把握できず、今後実施すべき施策を練るのも難しくなります。
的確な改善案が提案できないと、クライアントからの関係に悪影響を及ぼしたり、自分のキャリアに傷がついたりする可能性もあるのです。
また、コンサル業務のほとんどは、1つのプロジェクトに対して複数人のコンサルタントが携わります。プロジェクト目標の達成に向けて、チームメンバー内でコミュニケーションを取りながら円滑に進めていく必要があります。
コンサルティングは「人対人」の仕事であり、「聞く力」と「話す力」の両方が必須です。社内外でスムーズな意思疎通が求められるため、コミュニケーションが得意な人はコンサルタントに向いているでしょう。
好奇心旺盛な人
何事にも好奇心旺盛な人も、コンサルタントに向いている特徴の一つと言えます。
クライアントの課題は、明確な答えがない場合が多いです。確実な答えがないからこそ、課題に対してさまざまな角度から客観視し、クライアントの希望に沿える解決策を提案する必要があります。
クライアントが満足できる成果を出すためには、高い知的好奇心や探求心を持ちながら「なぜ」に対して粘り強く追及していくことが大切なのです。
また、コンサルティングの仕事を続けていくうえで、常に専門領域の知識についてアップデートしていくことも欠かせません。案件によっては、自分の専門領域とは異なる分野について調査するケースも珍しくなく、新しい知識を習得する機会が多いです。
知的好奇心がある人は、新しい学びを得られるのに対してポジティブに受け取れる場合がほとんどなので、常に学び続ける環境に適していると言えます。
ジャンル問わずチャレンジする意欲が高い人や何事にもポジティブに物事をとらえられる人は、高い知的好奇心を持っている可能性が高いです。これらの特徴に当てはまる知的好奇心がある高卒者であれば、コンサルタントに向いているでしょう。
プレゼンが得意な人
コンサルタントには、クライアントに解決策や戦略をわかりやすく伝えるためのプレゼン力が必須です。
たとえ優れた分析力で最適な案を作れたとしても、それをクライアントに納得してもらえるように説明するスキルがなければ、結果を出すことが難しくなります。
コンサルタントとしてプレゼンを行う際に上手くいくポイントは、以下の通りです。
- 調査・分析したデータの情報を整理する
- 重点的に伝えたい要点をまとめる
- 説明する順番を考える
- ジェスチャーを交えながら演者になりきる
また、コンサルティングをする時は「PowerPoint」や「Excel」といったソフトを使って、プレゼン用の資料を作成します。
業務用ソフトを使いこなせるのはもちろんのこと、クライアントに自分の案のメリットが明確に伝わるプレゼン資料を作れるかどうかも、コンサルタントをするうえで重要です。
コンサルタントは、仕事柄、特に高いプレゼン力が求められる職業です。先述した「論理的思考力・分析力」「コミュニケーション能力」があるのにくわえて、「複数人の前で話すのが苦にならない人」「資料作成に慣れている人」であれば、高卒でコンサルタントに転職できる可能性があります。
体力がある人
コンサルタントと言えば「知的労働」というイメージが強いですが、実は体力も必要な仕事でもあります。
コンサルティングは、「サービス業」に該当します。クライアントのところに訪れて打ち合わせやプレゼンを行ったり、クライアントが希望する納期までに情報収集や分析、改善策の立案、資料作成などを終わらせたり、顧客優先の働き方が求められます。
プロジェクトの進行状況によっては、昼夜問わず業務に追われることも珍しくないため、不規則な労働環境に耐えられる体力がなければ難しいです。
実際に、コンサルティング業界で長く活躍している人の中には、休日にジョギングや筋トレなど積極的に体を動かして、不規則労働に耐えられるスタミナを維持している人も存在します。
また、複数のプロジェクトを同時に抱えるケースが多いコンサルタントは、各クライアントに合わせて柔軟に対応しながら、いくつもの締切に追われる状況下で適切な判断をする必要があります。
体力と同じくらい精神力の強さも必要不可欠な職業なので、どちらも兼ね備えている人であれば、高卒者もコンサルティングの仕事を続けられるでしょう。
高卒でコンサルタントに転職する際の優位性

ここでは、コンサルタントに転職する際、高卒者が大卒者より優位性を持つポイントをご紹介します。
- 大卒よりも社会人経験が豊富
- 実務経験・スキルがある
高卒でコンサルタントに転職するのは不利だと感じている方もいるかもしれませんが、実際のところ極端に不利というわけではありません。
高卒者ならではの強みを理解して、コンサルタントへの転職活動に役立てていきましょう。
大卒よりも社会人経験が豊富
高卒で社会に出ていることは、コンサルタントに転職する際の大きな強みになる可能性が高いです。
高校をストレートで卒業している場合、10代で社会人になります。大卒者より早く社会人経験を積むことでさまざまな能力が身に付きます。
- 前に踏み出す力
- 自分で考える力
- チームで行動する力
これらの能力は、いろいろな人と仕事をしていくうえで欠かせない要素であり、「社会人基礎力」とも呼ばれています。もちろん学生のうちからでも鍛えられる能力ではあるものの、実際に働いている社会人のほうが能力を伸ばせる機会は多いです。
クライアントの悩みに寄り添う姿勢が求められるコンサルタントは、人並み以上の社会人基礎力を習得できているのが大前提です。社会人基礎力に優れている人材であれば、たとえ業界未経験の高卒者だったとしても採用される可能性が高まります。
また、社会に出ると、自分で考えて行動する場面も多くなるため、自立心が高くなる傾向にあります。コンサルタントとして活躍する際は、自分の裁量で業務を進めていけるかどうかが重要なポイントです。
失敗を怖がって指示待ち人間になりやすい人には難しい仕事なので、社会人経験の積み重ねによって高い自立心を持つ高卒者であれば、コンサルタントに転職できるチャンスがあります。
実務経験・スキルがある
高卒で就職し、すでに実務経験を積んでいるのであれば、コンサルタントに転職できるチャンスがあります。
多くのコンサルティング会社では、学歴より前職で得た知識・スキルを重要視した採用基準を設けています。今まで培ってきた豊富な知識や経験をもとに、クライアントへ最適な提案を行う必要があるので、実務経験があるに越したことはありません。
たとえば、前職が営業マンとして優秀な成績を挙げていた場合、優れたコミュニケーション能力やプレゼン能力などを持っている点をアピールできるため、学歴に関係なく採用される可能性があります。
もちろん、コンサルティングの専門領域に関連する実務経験やスキルを持っているほうが、より採用されやすいです。しかし、「論理的思考力」「体力」などコンサルタントで求められるスキルが備わっている旨をアプローチできれば、高卒の未経験者でも転職できる場合があります。
高卒でコンサルタントに転職する具体的な方法

ここでは、高卒でコンサルタントに転職するための具体的な方法を解説していきます。
- どの業界・業種のコンサルタントを目指すか決める
- 未経験でも働けるコンサルティング会社を狙う
- 転職エージェントを活用する
コンサルタントは、高卒者も転職できる職業ではあるものの、難易度が非常に高いです。
高卒でコンサルタントになるうえで押さえておくべきポイントを詳しく解説するので、転職活動する際にお役立てください。
どの業界・業種のコンサルタントを目指すか決める
高卒者がコンサルタントに転職する際は、自分の実務経験やスキルを活かすうえでどの専門領域に携わるべきか決めておくのが大切です。
コンサルタントとして活躍するためには、前職で培った経験やスキルを活かせるかどうかがカギになります。高卒でコンサルタントを目指すなら、自分の実力を発揮しやすい分野へ転職できるのが理想です。
コンサルタントの種類別で主な仕事内容と有利になりやすい職種や経験を表でまとめました。
コンサルタント種類 | 主な仕事内容 | 転職に有利な職種・経験 |
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戦略系コンサルタント | 新規事業展開や市場拡大のための戦略を提案 | 営業職、経営企画・中間管理職の業務全般・複数のプロジェクト管理業務・チームのマネジメント業務・事業会社で経営全般の業務 |
ITコンサルタント | IT戦略やシステム運用、新規システム導入の提案 | システムエンジニア、プロジェクトマネージャー・システム開発の上流工程・事業会社でのIT戦略や立案業務 |
会計系コンサルタント | 会計法規の対応や会計業務の改善案を提供 | 公認会計士、税理士・事業会社での経理・財務業務・監査法人での監査・アドバイザリー業務 |
人事系コンサルタント | クライアントの人事評価や人材確保などの課題解決 | 人事職、営業職など・人事業務・法人向けの営業業務 |
シンクタンク系コンサルタント | 主に政府や民間企業をターゲットに社会問題や組織課題に対する解決策を提案 | シンクタンク、行政職・データ分析業務・マーケティング業務 |
事業再生コンサルタント | 経営状況の悪化を防いで企業存続のための提案 | 銀行員、金融職・投資銀行に関する業務・事業会社の融資業務 |
医療系コンサルタント | 病院やクリニックなど医療機関の独立開業や人手不足解消のための戦略提案 | 医療事務職、医療機器メーカー職、看護師、MR・医療に関する業務・医薬品に関する業務 |
現状の自分のキャリアでは採用されるのか不安に感じている場合、最初にコンサルタントへの転職に有利に働く業界で経験を積む方法もあります。
【未経験からコンサルタントまでのキャリア例】

自分の強みを発揮できる分野を選べば、実務を活かしてクライアントに価値を提供できるコンサルタントになれるでしょう。
未経験でも働けるコンサルティング会社を狙う
高卒でコンサルタントに転職するコツとして、専門分野の未経験者でも応募できる会社を狙うことも挙げられます。
コンサルティング会社のほとんどは、新しい人材を求めて通年募集をかけている傾向にあります。コンサルティングの経験がない人はもちろん、過去に専門分野に携わっていない人でも採用を検討する会社も存在しているため、高卒未経験でも応募できる求人は見つかりやすいです。
未経験OKのコンサルティング会社には、以下の特徴があります。
- 研修制度が整っている場合が多い
- 資格支援制度が整っている傾向にある
- 実績・スキル以外にもポテンシャルを重視した採用基準を設けている
未経験OKのコンサルティング会社は、ポテンシャルが高い人材を採用して、一人前のコンサルタントに育てていく環境が整っているケースがほとんどです。そのため、企業から社内育成で戦力になれる人材だと判断されれば、高卒未経験でもコンサルタントとして採用される可能性があります。
ただし、未経験でコンサルタントへの転職を目指すタイムリミットは、長く見積もっても30代前半までである点に注意が必要です。
ポテンシャル採用の対象となるのは、新卒数年目~社会人10年目程度の枠に収まる人材だと言われています。業界全体の年齢層が若いことも相まって、40代~50代の高卒者が未経験でコンサルタントに転職する難易度は高いです。
高卒でコンサルタントに転職したいのであれば、早めに行動しましょう。
転職エージェントを活用する
高卒でコンサルタントへの転職の成功率を上げたいなら、業界に特化した転職エージェントのサポートを受けましょう。
転職エージェントを利用すると、履歴書作成や面接対策、面接の手配、条件交渉、入社後のアフターフォローなど、応募から入社後までトータルでサポートしてもらえます。そのため、初めての転職活動を行う人にとっても心強い味方になるでしょう。
転職エージェントを利用する際は、コンサルティング業界に特化した転職エージェントを選ぶのがおすすめです。コンサルティング業界に精通したキャリアアドバイザーが在籍しているので、自分に合ったコンサルティング会社を紹介してくれたり、業界への疑問や悩みを聞いてもらえたりします。
転職エージェントは、未経験でコンサルティングに挑戦したい高卒者にとって活用して損はないサービスです。複数の転職エージェントに登録して、自分に適したコンサルタントの求人を見つけましょう。
高卒でコンサルタントに転職する際に役立つ資格7選

前提として、コンサルタントは資格がなくてもなれる職業です。
ただし、どの職種のコンサルタントを目指すかによっては、資格を取得したほうが有利に転職を進めやすくなる場合もあります。
ここでは、高卒でコンサルタントに転職する際に役立つ資格を7つご紹介します。
- 税理士
- 中小企業診断士
- MBA(経営学修士)
- 日商簿記
- ITストラテジスト
- 社会保険労務士
- TOEIC
税理士
税理士は、税務の専門家であることを証明できる国家資格です。
税理士には、「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」といった独占業務があります。税理士資格を取得すれば、税金のプロとして財務や税務に関するコンサルティングが可能となり、クライアントの税金の相談相手として立ち位置を確立できます。
税理士の資格を活かせる主なコンサルティングの種類は、以下の通りです。
- 会計系コンサルティング
- 事業再生コンサルティング
事業再生コンサルティングは、相続税や贈与税の知識を活かせます。
なお、税理士試験の難易度は非常に高く、令和6年度税理士試験における高卒者の合格率は「21.6%」です。また、高卒者が税理士試験を受ける際は、「日商簿記検定1級または全経簿記検定上級に合格する」「会計業務に2年以上従事する」の条件をクリアする必要があります。
高卒で税理士の資格を取得するまでにかなりの時間を要しますが、会計や事業再生のコンサルティングに役立つ知識やスキルが習得したい方におすすめできる資格です。
参考:国税庁「令和6年度(第74回)税理士試験結果表(学歴別・年齢別)」(参照 2025-01-23)
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営改善に向けて調査・分析・アドバイスができる人材に与えられる国家資格です。
コンサルティング会社が抱えるクライアントの中には、中小企業も含まれているため、中小企業診断士の資格はどの分野のコンサルティングでも活かせる資格です。
また、中小企業診断士しか作成できない書類もあり、他のコンサルタントと差別化を図ることも可能です。
【中小企業診断士が作成できる書類】
経営改善計画書 | 約5年間の損益を予測した計算書。企業がどんな経営でどのくらい儲けを出すか予測して記載する。 |
経営診断書 | 企業の経営状態や課題を記した書類。 |
中小企業診断士の資格を取得するためには、試験合格にくわえて、指導員の支援を受けながら実際に企業の経営コンサルティングをする「実務補習」を受ける必要があります。
資格取得前に実務経験を積めることから、未経験でコンサルタントを目指す高卒者にとってコンサル業務を体験できる貴重な資格と言えます。
中小企業診断士試験の合格率は5%という声もあるほどかなり難しい資格ですが、高卒者も受験可能なので、コンサルティングの分野を問わず業務に役立つ資格を取りたい方は検討してみてください。
MBA(経営学修士)
MBA(Master of Business Administration)は、「経営学修士号」または「経営管理修士号」とも呼ばれる学位の一つです。
特に戦略系コンサルタントで重宝される学位で、主に企業戦略を練ったり、新しい事業を創出したりする際に役立ちます。
MBAのカリキュラムは、経営戦略やマーケティングといった企業経営に必要な知識を学べるように組まれています。学習期間は2年間行われ、その間にコンサルタントに欠かせない「論理的思考力」や「実践的なビジネススキル」などが習得できるのが魅力です。
また、授業がすべて英語で行われるスクールもあり、語学力の向上も図れるメリットもあります。
なお、高卒者がMBAを習得するためには、入学資格審査で大卒者と同等以上の学力があると認められたうえで、MBAを取得できるビジネススクールに合格することが必要です。
MBAは、コンサルタントに必要な知識も重点的に学びながら学位も取得できるため、学歴を付けたい高卒者にもおすすめです。
日商簿記
日商簿記を取得すると、企業のお金の動きを理解することができます。
「簿記」とは、企業の収支を帳簿に記録し、決算の際に報告書に内容を記載する作業のことです。
企業や取引記録を詳しく見られるようになるため、コスト管理や財務状況に関するコンサルティングが可能となります。
財務諸表や損益計算書から企業の収益性や問題点を見抜き、課題を正しく把握して適切な解決策を考案できるようになります。
ちなみに、多くの企業から求められるコンサルタントになるためには、2級以上の資格取得がおすすめです。日商簿記2級では、「工業簿記」という領域の学習が必要で、「原価計算」の知識を得られます。
日商簿記の資格を活かせる主なコンサルティングの種類は、以下の通りです。
- IT系コンサルティング
- 会計系コンサルティング
日商簿記2級の勉強時間は、業界未経験者で350~500時間程度と言われています。働きながらすき間時間に試験勉強をすれば、高卒者も取得できる資格です。
ITストラテジスト試験
ITストラテジストは、経営戦略とIT戦略の両方の知識を習得できることを証明できる国家資格です。
ITストラテジストを取得すると「経営戦略に基づいたIT化」を実現できる人材として評価されるため、IT系のコンサルティングをする際に大いに役立ちます。
近年は、「DX化(デジタルトランスフォーメーション)」を推進する企業が増えてきており、どの業界においてもITの活用により力を入れている傾向にあります。ITストラテジストは、ITシステム全般の知識を活かして企業経営に関するアドバイスもできるスキルが身に付くので、高く評価されやすい資格です。
また、ITストラテジストの資格を取得すると、ITコンサルタントだけじゃなく、企業の技術部門トップである「CTO(最高技術責任者)」も目指せるほどの高度なIT知識を学べるのも特徴です。
ITストラテジスト試験の合格率は15%前後と言われているものの、その分取得価値が高い資格なので、IT系のコンサルティングに興味がある方はぜひチャレンジしてみてください。
社会保険労務士
社会保険労務士(社労士・労務士)は、「社会保険」や「労働」に関する業務を社会保険労務士法に基づいて行える国家資格です。
企業の人事や労務管理に関してアドバイスできるため、特に人事評価や人材確保の提案などが求められる「人事系コンサルタント」で評価されます。
ただし、社会保険労務士の資格は「高専卒」以上の学歴がないと受験ができません。
高卒で受験資格を得るためには、一定の条件を満たした環境で3年以上実務経験を積む必要があります。
- 国や地方公共団体の公務員として事務に3年以上従事する
- 社労士や弁護士の業務補助として3年以上従事する
- 労働組合の役員として3年以上専従する
社会保険労務士の資格を取得するまでには、800〜1,000時間の学習が必要とされています。とは言え、一度取得すれば更新する必要はなく、生涯にわたって活用できる資格なので、人事系のコンサルティングに興味がある人は挑戦してみてもいいかもしれません。
参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格及び受験資格証明書」(参照 2025-01-07)
TOEIC
TOEICは、ビジネスの現場で必要な英語力をスコア化するための試験です。
近年は海外企業との取引や海外拠点を持つ企業へのコンサルティングを行う機会が増えています。そのため、外資系企業へのコンサルティングに興味がある方にとって必須資格と言えます。
コンサルタントとして活躍するうえで必要なスコアは700点以上、グローバル案件を担当する場合は800点以上が目安です。
さらに、900点以上の高得点を獲得できれば、海外に駐在して日本のコンサルティング会社と海外のクライアントとのパイプ役として活躍できる可能性もあります。
ただし、TOEICスコアは自身の英語力の側面を示すものでしかありません。海外に関わるビジネスでは、海外クライアントとの商談や英文メールでのコミュニケーション、英語での資料作成など実践的なスキルも求められます。
TOEICの学習と並行して、より実践的な英語スキルを習得することが、グローバルで活躍するコンサルタントになるうえで重要です。
高卒でもコンサルティング業界へ転職できる可能性がある!

コンサルタントは、高卒者も転職することができます。
コンサルティング業界は、学歴が評価される世界ではありません。今まで培ってきた知識やスキルのレベルによって、活躍できるかどうか大きく変わってきます。
いち早く社会人経験を積んできた高卒者は、仕事を通して社会人基礎力が鍛えられている傾向にあります。自立心もあり将来を見据えた行動もできる場合が多いので、アピール次第でコンサルタントに転職できるでしょう。
高卒でコンサルティング業界へ転職する方法について、あらためてご紹介します。
- どの業界・業種のコンサルタントを目指すか決める
- 未経験でも働けるコンサルティング会社を狙う
- 転職エージェントを活用する
コンサルタントはすぐになれるわけではありませんが、高卒者も目指せる職業なので、興味がある方はぜひチャレンジしてみましょう。