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学歴がなくても歯科衛生士になれる?
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歯科衛生士に求められる条件や向いている人の特徴が知りたい
歯科衛生士は、患者の歯と口腔の健康を支える専門性が高い職業です。
本記事では、歯科衛生士に求められる学歴や必須条件、中卒で目指す難易度、向いている人と向かない人の特徴などを解説します。
学歴に自信はないけど歯科業界に就職したいと考えている方、手に職をつけて学歴ハンデを乗り越えたい方に役立つ情報をまとめているので、ぜひご覧ください。
中卒だと歯科衛生士になるのは難しい

中卒者が歯科衛生士になるのは極めて難しいと言われています。
歯科衛生士になるには、「歯科衛生士免許」を取得する必要があります。
しかし、この国家試験の受験資格は、文部科学大臣指定の「歯科衛生士学校」や都道府県知事指定の「歯科衛生士養成所」といった歯科衛生士養成機関に入学・卒業しなければ得ることができません。
専門学校や大学を卒業しないと、歯科衛生士として働くうえで必須の資格を得られないため、最終学歴が中卒のままでは、歯科衛生士になるのは事実上不可能なのです。
とは言え、必要な条件をクリアしていけば、現在中卒であっても歯科衛生士を目指せます。高卒と同程度の学力があると証明できれば、歯科衛生士学校に入学できる可能性があるので、必須条件を細かく見ていきましょう。
歯科衛生士になるための必須条件

中卒が歯科衛生士になるための必須条件は以下の3つです。
- 高卒認定試験に合格する
- 歯科衛生士養成機関を卒業する
- 歯科衛生士国家試験に合格する
ここでは、各手順や具体的な試験の内容をご紹介します。
高卒認定試験に合格する
歯科衛生士になるには、まず歯科衛生士養成機関を卒業しなければいけません。
歯科衛生士養成機関への入学条件は「学歴が高卒以上」または「高卒と同程度以上の学力があると認められた場合」です。
この条件を満たすには高校の卒業もしくは高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)を取る必要がありますが、最短で目指すなら高校認定の取得がおすすめです。
高卒認定試験は、中学1年から高校1年までの基礎レベルの問題が出題され、試験の難易度はそこまで高くないとされています。
しかし、受験科目が全8~10科目と多く、合格率は例年40~50%前後です。合格するためにはしっかり試験対策をしなくてはいけません。
歯科衛生士養成機関を卒業する
高卒認定試験に合格したら、歯科衛生士養成機関に入学し、卒業する必要があります。
歯科衛生士養成機関は以下の3種類です。
- 専門学校(3年制)
- 短期大学(3年制)
- 大学(4年制)
大学は受験勉強の負担が大きいので、中卒者の場合は3年制の専門学校に進むのが一般的です。
専門学校は、実習が充実している傾向にあり、卒業後の現場で役立つ知識・技術を効率的に習得できます。「夜間部」を設けている専門学校もあるので、社会人として働きながら歯科衛生士の勉強をしたい方にもおすすめです。
ただし、歯科衛生士に特化したカリキュラムになっている分、歯科衛生士以外への就職は難しいケースがある点には注意しましょう。
また、専門学校の入試は面接や書類選考がメインで、学科試験が必要な大学よりも入学難易度が低めなのもメリットです。入試形式や試験科目、対策方法は学校ごとに異なるので、入試要項を必ず確認してください。
歯科衛生士国家試験に合格する
歯科衛生士養成機関を卒業したら、いよいよ歯科衛生士国家試験を受験することになります。
歯科衛生士国家試験の詳細は、以下の通りです。
試験日程 | 例年3月初旬 |
試験形式 | ・マークシート方式(実技試験なし) ・午前・午後の部で2時間半ずつ、1日かけて計5時間実施 |
試験科目 | ・人体(歯・口腔を除く)の構造と機能 ・歯・口腔の構造と機能 ・疾病の成り立ち及び回復過程の促進 ・歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み ・歯科衛生士概論 ・臨床歯科医学 ・歯科予防処置論 ・歯科保健指導論及び歯科診療補助論 |
合格基準 | 正解率約6割以上(目安) |
合格率 | 例年90%以上 |
例年合格率は高いですが、試験科目が多い上に内容が専門的です。「過去問・参考書を活用する」「模擬試験を受ける」などして試験対策を万全に行いましょう。
なお、試験合格後に歯科衛生士名簿に登録すれば、免許証が交付されます。その後、就業地の保健所に免許の届出を出すと、歯科衛生士として就業可能になります。
中卒で歯科衛生士を目指す難易度

下記の理由から、中卒者が歯科衛生士を目指す難易度は高めです。
- 合格しないといけない試験が多い
- 歯科衛生士養成機関で3年以上勉強する必要がある
- 歯科衛生士養成機関の学費を用意する必要がある
中卒者は「高卒認定試験」「歯科衛生士養成機関の入学試験」「歯科衛生士国家試験」に合格しなくてはいけません。
特に高卒認定試験は科目数が多いので、年単位で勉強して試験に臨む人もいます。
歯科衛生士養成機関(専門学校)の入学試験や歯科衛生士国家試験は、それほど難易度が高いわけではありません。歯科衛生士国家試験の合格率は90%以上で、養成機関を卒業できる学力があり、試験勉強を積み重ねられる人なら合格できるはずです。
しかし、生活を維持しながら一定の学習時間を確保するというハードルがある点は無視できません。
また、歯科衛生士試験を受験するには、歯科衛生士養成機関に3年以上通って卒業する必要があります。卒業までにかかる学費は専門学校で300〜350万円程度と言われており、学費の工面もしなければいけません。
中卒から歯科衛生士を目指すメリット

中卒者が歯科衛生士を目指す難易度は高く、一筋縄ではいかないでしょう。しかし「中卒」という一般とは異なるルートから歯科衛生士を目指すからこそ、得られるメリットもあります。
ここでは、中卒から歯科衛生士になるメリットについて、具体的に3つ解説します。
- 早くキャリアをスタートできる可能性がある
- 安定した業界で手に職を付けられる
- 高卒や大卒に比べて学費がかからない傾向にある
早くキャリアをスタートできる可能性がある
中学卒業後すぐに高卒認定を取って歯科衛生士を目指せば、同年代の人よりも早く歯科衛生士として活躍できる可能性があります。
たとえば、4年制の大学を卒業したあとに歯科衛生士の資格を取得しようとすると、最短でも歯科衛生士の資格を取れるのは22歳です。
一方、中学卒業後すぐに高卒認定試験に合格して3年制の専門学校に入れば、最短21歳で資格を取得できます。
実務経験を多く積むと、早期に昇給・昇格を目指したり、より条件のいい会社に転職できたりするチャンスも生まれやすいです。比較的早くキャリアをスタートさせて実践的な技術が身に付けられるのはメリットと言えるでしょう。
安定した業界で手に職を付けられる
国家資格の取得が前提の歯科衛生士は、将来にわたって長く活躍できる仕事です。
専門性が高い職種なので、歯科医院や病院、介護福祉施設、保健所といった幅広い職場で活躍でき、就職先の候補も充実しています。
実際、求人倍率は毎年20倍を超えるほどの売り手市場で、約20の職場が1人の歯科衛生士を取り合っているという状況です。転職や職場復帰もしやすい状況と言えます。
さらに、医療現場は景気によって売上が左右されにくいので収入が安定しやすく、高齢化も相まって今後も需要が高いと予想されている業界です。
以上のことから、歯科衛生士は安定した収入を得ながら手に職を付けられる、中卒から目指してもメリットが多い職種です。
参考:全国歯科衛生士教育協議会「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」(参照 2025-04-11)
高卒や大卒に比べて学費がかからない傾向にある
中卒で高卒認定試験を取得して3年制の専門学校を卒業するルートを選べば、高校や大学卒業後に歯科衛生士を目指すルートよりも学費が浮く可能性が高いです。
高卒後に歯科衛生士を目指す場合は、高校と専門学校の学費を用意しなければいけません。
また、大卒後に歯科衛生士になるルートだと、私立なら500万円〜600万円程度、国公立でも350万円程度の学費がかかります。対して専門学校の場合は300〜350万円程度の学費で卒業できるので、大学に通うより負担を軽くできる傾向にあります。
できるだけ費用を抑えて歯科衛生士を目指したい中卒者は、3年制の専門学校を卒業して国家資格を取得するルートが最適と言えるでしょう。
中卒から歯科衛生士を目指す際の注意点

魅力的なメリットもたくさんある一方で、やはり中卒から歯科衛生士になるには多くの困難もあります。
実際に行動に移してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、今のうちから注意点を把握しておきましょう。
- 高卒資格か高卒認定を必ず取得する必要がある
- 時間・お金・メンタル面の負担が大きい
- 進学に必要な情報を見つけるのが難しい場合がある
高卒資格か高卒認定を必ず取得する必要がある
繰り返しになりますが、歯科衛生士になるには国家資格の取得が必須条件です。
資格試験の受験資格を得るには歯科衛生士養成機関の卒業が必須で、養成機関の入学試験を受験できるのは、高卒資格もしくは高卒認定を持つ人のみです。
つまり、最終学歴が中卒の場合は、高校卒業資格を得るために高校を卒業するか、高校認定に合格しなくてはいけません。
歯科衛生士を目指すには、労力や時間をかけないといけないため、中卒から目指すうえで少なからずハードルとなってしまいます。
今すぐ就職して収入を得たい人には回り道に思えてしまうかもしれません。
時間・お金・メンタル面の負担が大きい
中卒者が歯科衛生士として働くには、歯科衛生士養成機関に最低3年間通い、国家資格を取得する必要があります。希望すればすぐに就労できる職種に比べると、就職までのハードルは高いです。
目指してから実際に働けるようになるまでに時間がかかるため、どうしても時間的・経済的・精神的な負担が大きく、途中で挫折してしまう事例もあります。
負担を少しでも軽くするには、周囲のサポートが欠かせません。自分の現状や困っていることを周囲の人に積極的に相談し、協力してもらいやすい環境を作りましょう。
また、養成機関によっては学費免除制度が用意されているので、学校に相談すれば経済的負担を軽減できる可能性もあります。
進学に必要な情報を見つけるのが難しい場合がある
中卒かつ社会人の場合、進路指導や学校の就職支援センターからのサポートがないので、歯科衛生士になるための情報収集をするのが困難なケースもあります。
歯科衛生士養成機関に入学したあとなら資格取得や就職活動の支援は受けられますが、歯科衛生士養成機関への進学に関する情報を得るのには苦労するかもしれません。
そのため、自ら積極的に動いて情報収集しなくてはいけません。
誰かから情報提供されるまで待つのではなく、インターネットを使って調べる、歯科衛生士養成機関に直接問い合わせるなどして、自分から情報を掴みにいきましょう。
歯科衛生士が向いている人と向いていない人の特徴

歯科衛生士は専門性が高い職業なので、人によって向き・不向きがはっきり分かれます。
歯科衛生士に向いている人・向いていない人の特徴は以下の通りです。
歯科衛生士に向いている人の特徴 | 歯科衛生士に向いていない人の特徴 |
---|---|
コミュニケーション能力が高い | 業務改善が苦手 |
手先が器用 | 柔軟な対応が苦手 |
持続的な集中力を持っている | 患者に分け隔てなく対応できない |
自分に歯科衛生士の適性があるかを確認し、就職後のミスマッチを防ぎましょう。
歯科衛生士に向いている人の特徴3つ
歯科衛生士に向いている人の特徴は、以下3つです。
- コミュニケーション能力が高い
- 手先が器用
- 持続的な集中力を持っている
歯科衛生士は、歯科医師や他のスタッフなど、多くの人と関わりながら仕事を行います。相手の気持ちに寄り添いつつ物事をわかりやすく伝えられると、周囲のスタッフと連携がとりやすくなり、柔軟な対応ができるようになります。治療に関するトラブルの予防にもつながるので、仕事ぶりを評価される可能性が高まるでしょう。
また、歯科衛生士は狭い口腔内で小さい歯や器具を取り扱うため、細心の注意を払いながら繊細な作業が求められます。手先が器用な人のほうが、スムーズに作業を進められる可能性が高いです。
そして、歯科衛生士は長時間にわたって細かい作業を行うので、持続的な集中力も欠かせません。根気強く物事に取り組める人に向いている職業と言えます。
歯科衛生士に向いていない人の特徴3つ
歯科衛生士に向いていない人の特徴は、以下の3つです。
- 業務改善が苦手
- 柔軟な対応が苦手
- 患者に分け隔てなく対応できない
歯科衛生士は、患者の口腔の健康に関わる責任の大きい仕事です。たとえ小さなミスだったとしても、責任の重さを理解して反省・改善しなければ、いずれ大きな医療ミスを引き起こしてしまう可能性があります。
ミスをしないように日頃から注意しつつ、ミスが起きた際には自分の行動を振り返って次に活かせる人でなければ、歯科衛生士として活躍するのは難しいです。
また、歯科医院に来院する患者は、世代・性別・症状がそれぞれ異なります。医療の仕事は治療が想定通りに進まないケースや、接するのが難しい患者さんの対応を任されるケースなどもあり、マニュアル通りにいかないこともたくさんあります。
どんな状況・相手であっても丁寧かつ柔軟な対応が求められるため、臨機応変に動くのが苦手な人や、相手によって態度や対応を変えてしまう人は評価されにくいでしょう。
歯科衛生士が向いている人におすすめの中卒でなれる仕事をご紹介

「歯科衛生士に向いている人の特徴」を持つ人は、医療・介護業界の仕事に適性があります。
歯科衛生士は、なるまでに時間や費用がかかることから、中卒から目指す難易度はかなり高い職業です。歯科衛生士になるまでのハードルが高いと感じている場合は、歯科衛生士と仕事内容が近い別の職業を検討するのも手でしょう。
歯科衛生士が向いている人におすすめの中卒でなれる仕事は、以下の3つです。
- 歯科助手
- 医療事務
- 介護福祉士
歯科助手
歯科助手は、歯科医院の受付や会計、歯科医師・歯科衛生士のアシスタント業務などを担当します。
- 業務は大きく分けて「事務」と「診療補助」がある
- 特別な資格や学歴を問わない求人が多い
- 歯科衛生士になるまでに歯科業界で経験を積める
最初は主に事務業務を担当し、患者の受付や予約対応をしながら受診後の会計処理、カルテの管理などを行います。慣れてきたら診療補助の業務も任されるようになり、歯科医師の指示のもとでアシスタント業務を行うケースも多いです。
歯科助手は医療行為を行えませんが、資格不要で働けるのに加えて、学歴に条件がない求人が多いため「早く歯科業界で活躍したい」と考えている中卒者にも向いています。
歯科助手として歯科業界で働きながら、歯科衛生士の資格取得を目指すのも手でしょう。
医療事務
医療事務は、医療機関において、患者対応、医療費の計算、保険請求、カルテの作成や整理などを行う事務職です。
- 業務は大きく分けて「受付」と「レセプト作成業務」がある
- 特別な資格や学歴がなくても働ける求人が多い
- 資格を取得すれば中卒者の平均年収を上回る可能性がある
基本的に診療補助をすることはなく、業務範囲は事務に絞られますが、歯科よりも医科の方が病院の規模や診療科目に幅があります。
医療事務として働くのに必須の資格はなく、実務経験なしでも働ける求人が多いので、中卒者もチャレンジしやすい職業です。
また、「医療事務管理士」や「医療事務認定実務者」といった民間資格を取得すると、資格手当が支給されて収入アップにつながるケースが多く、努力次第では中卒者の平均年収を上回る収入も得られます。
介護福祉士
介護福祉士は、高齢者や身体的・精神的に障がいがある人の日常生活をサポートする介護の専門職で、現場をまとめるリーダー的な役割を担います。
- 実務経験と研修で国家資格を取得できる
- ユニットリーダーや介護主任として活躍できる
- 業界での転職がしやすく待遇にも反映されやすい
介護福祉士になるには国家資格の取得が必要ですが、「3年以上の実務経験」と「介護福祉士実務者研修の修了」という2つの条件をクリアすれば資格試験を受験できます。
まずは資格や学歴、経験がなくても働ける介護士として実務経験を積みながら介護福祉士の国家資格の取得を目指せるので、養成機関への通学が必須の歯科衛生士よりも経済的負担は少なくて済みます。
また、介護福祉士は介護業界で唯一の国家資格で、業界でのキャリアを広げやすく、収入アップや就職・転職をしやすいのもメリットです。
中卒で歯科衛生士を目指すためのおさらい

歯科衛生士になるためのポイントをまとめたので、おさらいしていきましょう。
- ポイント
- 【中卒から歯科衛生士になるための必須条件】
・高卒認定試験に合格する
・歯科衛生士養成機関を卒業する
・歯科衛生士国家試験に合格する
【歯科衛生士になるメリット】
・早くキャリアをスタートできる可能性がある
・安定した業界で手に職を付けられる
・高卒や大卒に比べて学費がかからない傾向にある
中卒から歯科衛生士を目指すのは時間と費用がかかり、苦労が伴います。しかし、多大な努力が求められるからこそ、実際になれたときのメリットも複数あります。
歯科衛生士を目指したい方や、自分に向いていそうだと感じた方は、本記事を参考に歯科衛生士にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。