中卒・高卒・大卒は、生涯年収に大きな差が生まれていると言われています。実際に、中卒や高卒は、大卒と比べて就職時の選択肢が限られているという実情があります。
しかし、努力や工夫次第で学歴に関係なく収入アップを目指すことは可能です。
本記事では、学歴別の生涯年収データを紹介するとともに、学歴に左右されず大幅な年収アップを実現する具体的な方法やポイントを詳しく解説します。
高収入を目指したい中卒・高卒は、ぜひ参考にしてください。
中卒・高卒・大卒の生涯年収の現状

中卒・高卒・大卒では、生涯年収に明確な差が見られます。
以下の表は、学校を卒業後すぐに就職し、60歳で退職するまでフルタイムの正社員として働いた場合の生涯年収を学歴別でまとめたものです。
最終学歴 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
中卒 | 1億9,400万円 | 1億4,610万円 |
高卒 | 2億600万円 | 1億4,960万円 |
大卒・大学院卒 | 2億6,190万円 | 2億1,240万円 |
参考:労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2022|(参照2025-06-02)
生涯年収は、男女ともに中卒がもっとも少なく、高卒、大卒・大学院の順に金額が大きくなっています。
なお、このデータには退職金が含まれていないため、実際の収入差はさらに広がる可能性が高いです。
労働時間あたりの収入ではさらに差が出る傾向にある
中卒・高卒・大学の生涯労働時間を算出したうえで改めて生涯年収を見てみると、学歴による収入格差が広いことがわかります。
以下は、学校卒業後、定年までフルタイムの正社員として働いた場合の学歴別の生涯労働時間です。
最終学歴 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
中卒 | 99.8 | 90.4 |
高卒 | 92.1 | 84.8 |
大卒・大学院卒 | 80.3 | 76.8 |
(単位:千時間)
参考:労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2022」(参照2025-06-02)
中卒や高卒は大卒・大学院卒と比べて働き始める年齢が早いため、生涯労働時間も長くなる傾向にあります。
しかし、先述した通り、生涯年収は大卒・大学院卒が最も高いことから、中卒・高卒は長く働いている割に大卒・大学院卒より稼ぎにくいというのが実情です。
年収は生涯上がり続けるわけではない
年収は、生涯上がり続けるものではなく、ピークを迎えると徐々に下降していきます。
年収のピークは、キャリアの築き方によって異なります。
たとえば、管理職に就くキャリアを築いた場合、現場業務から徐々にマネジメント業務へとシフトしていくため、50代頃に年収のピークに達するのが一般的です。
一方、一般社員として単純労働を続けるキャリアを築いた場合、年齢を重ねるに連れて体力や知覚機能が衰えていき、思うようなパフォーマンスができなくなる可能性があります。
よって、老化を感じやすくなる40代中盤頃が年収のピークになるケースが多いです。
学歴に左右されず生涯年収を上げるためには、いつ年収のピークに達するのか把握し、高収入を得やすいキャリアプランを作ることが重要です。
大卒よりも中卒・高卒の生涯年収が低くなりやすい理由

中卒・高卒の生涯年収が大卒よりも低くなりやすい背景には、以下の理由があります。
- 大卒より就職時の選択肢が限られるから
- 専門知識を得にくい環境に置かれやすいから
- 初任給が低い傾向にあるから
- 昇給・昇格のスピードや上限が異なるから
- 非正規として働く人の割合が大きいから
ここでは、それぞれの理由について詳しく解説していきます。
大卒より就職時の選択肢が限られるから
職種によっては、一定以上の学歴を採用条件にしている企業が多く、中卒・高卒の就職先の選択肢が限られる傾向にあります。特に給与水準の高い大企業の採用条件は、「大卒以上」が基本です。
株式会社アイデムの調査によると、何かしらの採用フィルターをかけている企業は46.5%、学歴・学校名を選考基準に設けている企業は37.6%となっています。
従業員規模別に見ると、従業員3,000人以上の大企業が最も学歴フィルターをかけているという結果が出ています。
企業規模が大きくなればなるほど学歴重視の採用基準を設ける企業が多いのは、学歴が努力できる人材の指標として判断しやすいのが主な理由です。
中卒・高卒は給与水準が高い大企業への応募が難しく、年収が低い企業へ就職せざるを得ない点が、生涯年収に差が生じる原因と言えます。
参考:株式会社アイデム 人と仕事研究所「2018年卒新卒採用に関する企業調査」 (参照2025-06-02)
専門知識を得にくい環境に置かれやすいから
中卒や高卒は大卒と比べて、仕事に必要な専門知識やスキルを学ぶ機会が少ないため、高収入を得やすい専門職に就きにくく、平均年収が低くなりがちです。
大学は、履修の過程で難易度の高い国家資格や就職先の選択肢が広がる資格を取得できる場合も珍しくありません。
また、専門職によっては、採用条件を大卒以上に定めているケースも少なくありません。その結果、中卒や高卒は、専門性を求められない仕事に就く可能性が高くなります。
専門性を求められない仕事は、誰でも代わりの利く業務が多いせいか、大幅に昇給できるチャンスが少ないのが実情です。
さらに、就職後も専門性が高いスキルを習得しにくいため、自身の市場価値が上がりづらく、転職による収入アップやキャリアアップの機会を逃してしまうリスクもあります。
初任給が低い傾向にあるから
多くの企業では、最終学歴によって初任給が変わります。
以下の表は、「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに学歴別の初任給額をまとめたものです。
最終学歴 | 初任給の額(単位:千円) |
---|---|
中卒 | 220.7 |
高卒 | 197.5 |
大卒 | 248.3 |
参考:e-Stat 政府統計の総合窓口「新規学卒者の学歴別所定内給与額」(参照 2025-06-02)
大卒の初任給は中卒・高卒と比べて高く設定されている傾向にあることがわかります。このようにスタート時点ですでに賃金格差が発生している点も、生涯年収に大きな影響を与えているのです。
昇給・昇格のスピードや上限が異なるから
中卒・高卒は大卒より労働時間が長いにも関わらず、生涯年収が低い理由として、昇給・昇格スピードに大きな差があることがあります。
特に、管理職に就いている人の最終学歴を見てみると、その傾向が顕著に出ています。
以下の表は「ユースフル労働統計2022」のデータをもとに作成した役職者の比率です。
※「25~29歳」から「65歳以上」までの各比率を合算し、平均値を算出。
役職 | 高卒 | 大卒 |
---|---|---|
部長 | 2.8% | 9.1% |
課長 | 4.5% | 11.5% |
参考:ユースフル労働統計2022「19 役職関連指標」(参照 2025-06-02)
部長・課長ともに高卒より大卒のほうが役職比率が高くなっているのがわかります。これは、管理職登用を行う企業の中には「大卒以上」を条件とするケースも珍しくないことが考えられます。
中卒・高卒より大卒のほうが管理職に就ける可能性が高く昇進スピードも早いため、必然的に収入格差が生まれやすいのです。
非正規として働く人の割合が大きいから
中卒・高卒・大卒では、正社員として働く割合にも明確な違いが見られます。
厚生労働省が公表した「令和5年若年者雇用実態調査」をもとに、正社員として勤務している人とそうでない人の割合を学歴別でまとめた表は、以下の通りです。
最終学歴 | 正社員 | 非正規社員 |
---|---|---|
中卒 | 11.5% | 42.7% |
高卒 | 64.8% | 28.7% |
大卒 | 86.7% | 11.1% |
参考:厚生労働省 令和5年若年者雇用実態調査の概況「2 これまでの就業状況」(参照2025-06-02)
学歴が高ければ高くなるほど、正社員として働く人の割合が大きくなっていくのがわかります。
また、正社員と非正規社員では生涯年収に大きな差が生まれやすいです。
「ユースフル労働統計2022」によると、大卒で約1億円ほどの開きがあるという結果が出ています。
この傾向は中卒・高卒にも当てはまり、学歴にかかわらず、雇用形態の違いが長期的な年収格差を広げる大きな要因になっています。
参考:ユースフル労働統計2022「21 生涯賃金など生涯に関する指標」(参照 2025-06-26)
中卒や高卒が学歴に関係なく生涯年収を大幅に上げる方法

中卒・高卒の生涯年収は大卒に比べて低い傾向にありますが、これはあくまでも「平均値」に過ぎません。実際には、大卒の平均生涯年収を上回る中卒・高卒も多く存在します。
学歴に左右されずに大幅な年収アップを目指すためには、次のような方法があります。
- 個人の成果が評価される仕事に就く
- 専門性の高い仕事に就く
- 人材が不足している仕事に就く
- 副業や独立・開業で収入源を増やす
特に、個人の成果が正当に評価される仕事や、代わりが利きにくい専門性の高い仕事、人が敬遠しがちな分野でキャリアを築けば、学歴に関係なく高収入を実現できます。
また、副業や独立といった働き方も収入を伸ばす際の選択肢です。
ここからは、具体的な方法について詳しく解説していきます。
個人の実力や成果が収入に反映される仕事に就く
学歴に関係なく高収入を目指すなら、成果主義・実力主義の企業や職種を選ぶのが得策です。
営業職、ITエンジニア、ドライバー、クリエイティブ職、ナイト系などは、契約数や売上に応じたインセンティブ制度が導入されていることが多く、努力次第で大幅な年収アップが期待できるでしょう。
たとえば不動産営業の場合、住居用のマンションや投資用の不動産などをおすすめする仕事で、一度に動くお金が大きいです。他の営業職と比べて一度に得られる利益が大きい傾向にあるので、インセンティブで得られる報酬額も高くなります。
ただし、評価制度や給与体系は企業によって異なるため、転職時には事前にしっかり確認しておきましょう。成果が収入に直結する環境を選べば、学歴にとらわれず年収アップを実現しやすくなります。
専門性の高い仕事に就く
学歴に関係なく高収入を目指すためには、専門性の高い仕事に就くのも有効です。専門知識やスキルが求められる職種は代替が難しく、安定して高収入を得やすい特徴があります。
特に国家資格が必要な仕事は、一定水準以上の知識や技術を国が認定していることを証明できるため、社会的な信用も高まります。
最終学歴が中卒・高卒の人も受験可能な国家資格は、以下の通りです。
- 宅地建物取引士(宅建士):不動産取引に必要な資格
- 通関士:貿易手続き(通関書類の審査・提出)ができる資格
- 行政書士:許認可申請や契約書作成など、法律に基づく業務を代行できる資格
- 介護福祉士:介護の専門職
これらは国家資格がなければ従事できない仕事です。国家資格を取得すれば、将来にわたって安定した収入を得る強力な武器になります。
人材が不足している仕事に就く
人材不足の業界では、学歴不問で採用する企業が多く、未経験でもキャリアアップのチャンスを得やすい環境が整っています。
たとえば介護職や飲食店スタッフは、新人向けの育成マニュアルが整備されている職場も多く、未経験でもスムーズにスキルを習得しやすいです。
また、ITエンジニアは、自己学習によるスキルアップがしやすいのにくわえて、実力主義の世界なので、学歴に関係なく実力次第で昇進・昇給が目指せる可能性があります。
他にも、建設業界や製造業、運輸業界も人手不足が深刻だと言われています。
人手不足の業界は、ライバルが少ない環境だからこそ、学歴に関係なく早期でキャリアを築きたい人には狙い目でしょう。
副業や独立・開業で収入を増やす
独立・開業は、実力を極めた先で得られる選択肢の一つです。働いた分だけ収入に直結するため、他人が決めた会社のルールに縛られることなく、学歴を問わず収入アップを目指せます。
ただし、独立・開業は軌道に乗るまで安定して収入を得られる保証がなく、必ず成功するとは限りません。そこで、まずは副業から始めるのも一つの手です。たとえばWebライターやネット販売、プログラミング、動画編集などは副業からでも取り組みやすく、上手くいけば独立・開業を目指す道も開けます。
さらに、ナイト系の仕事をしながら目指すのも選択肢の一つです。ナイト系は独立支援や店舗経営のサポート制度が用意されているところも多いのが特徴です。仕事を通して、人脈づくりや経営スキルの向上にもつながるため、将来の独立や別業種へのキャリア展開にも役立ちます。
副業で収入の柱を増やしながら、独立のタイミングを見極めるのがおすすめです。
中卒・高卒が学歴に関係なく年収アップするためのポイント

学歴に左右されずに年収アップを実現するには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
- 将来を見据えたキャリアプランを立てる
- キャリアプランに沿った資格・スキルを取得する
- 学歴に関係なく評価されるスキルを身に付ける
- 中卒・高卒に強みを持つ転職エージェントを活用する
ここでは、学歴に左右されず収入アップを目指すための具体的な方法を紹介します。
将来を見据えたキャリアプランを立てる
学歴に関係なく年収を上げるためには、まず自分が生涯どのくらい稼ぎたいか目標を定め、キャリアプランを立てることが重要です。
現職の収入に不満がある場合は、転職によるキャリアアップが目標金額を達成する近道になります。特に、現在は単純作業がメインの仕事に就いている人であれば、目指せる収入額に限界がある可能性が高いため、転職を検討するのがおすすめです。
また、現職で昇給・昇格のチャンスがある場合、管理職や特定分野のスペシャリストを目指す道も有効です。
たとえば建築現場では、現場監督に昇進すれば管理職の経験を積むことができます。さらに、建築関連の専門資格を取得すれば、特定分野のスペシャリストとして社内で高い評価を得られます。
管理職の経験を積んだり唯一無二のポジションに就くことで、今の職場で大幅な収入アップを狙えるでしょう。
キャリアプランに沿った資格・スキルを取得する
キャリアプランに沿った資格やスキルを取得するのも、学歴を問わず年収を上げる手段の一つです。
資格は自分のスキルを客観的に証明できるため、転職や昇進の際に有利に働きます。特に、学歴を問わず働ける仕事の場合、資格取得によるスキルアップが人材価値を高めることにつながり、収入を上げる近道になります。
たとえば、ガソリンスタンドの店員の場合、必ず危険物取扱者の資格保有者を配置する決まりがあることから、資格を取っておいたほうが業界内で重宝される存在になれるでしょう。
また、介護職の場合、無資格のままだとできる業務が限られてしまうため、介護福祉士や社会福祉士といった専門職の資格を取ってスキルアップを狙うのも得策です。
自分が思い描くキャリアプランや目標に合わせて、スキル習得を意識しましょう。
高卒認定取得が生涯年収アップにつながることもある
中卒は、高卒より応募できる求人が限られている傾向にあります。中卒という学歴で就職や転職に支障が出ていると感じているのであれば、高卒認定試験(高認)に合格するのがおすすめです。
高卒認定を取得すれば、高卒と同等の学力があることを証明できるため、取得できる国家資格の種類が増えたり、大学・専門学校へ進学できたりして将来の選択肢が広がります。
また、高校卒業以上の応募条件を設ける正社員求人にも応募できる可能性があります。
ただし、高卒認定を取得しても最終学歴は「中卒」のままです。高卒認定を取った中卒を高卒と同じ扱いをするかどうかは企業によって異なるので、応募する前に事前に問い合わせましょう。
学歴に関係なく評価されるスキルを身に付ける
近年、多くの企業で学歴よりも実力を重視する傾向が強まっています。特に、仕事で成果を出すうえで重要なスキルを身につけることで、昇給や昇格に直結しやすくなります。
たとえば以下のようなスキルは、ほとんどの職種において評価されやすいです。
- コミュニケーションスキル(円滑な人間関係を築く力)
- リーダーシップ(チームをまとめる力)
- セルフプロデューススキル(自分の強みをアピールする力)
- 論理的思考力(物事を筋道立てて考える力)
- 文章作成力(分かりやすく伝える力)
- ITスキル(パソコン操作やデジタルツールの活用力)
これらを意識的に高めることが、キャリアアップにつながる鍵になります。
中卒・高卒に強みを持つ転職エージェントを活用する
中卒・高卒で年収アップを目指すなら、学歴不問や中卒・高卒向けの求人を多く扱う転職エージェントを活用するのもおすすめです。
一般的な求人サイトでは大卒以上を条件にする求人も珍しくありませんが、中卒・高卒に特化したエージェントを使えば以下のメリットがあります。
- 学歴に関係なく応募できる求人を紹介してもらえる
- キャリアアドバイザーが強みを引き出し推薦してくれるため、書類選考が通りやすくなる
- 中卒・高卒を積極採用する企業を紹介してもらえる
- 今後のキャリアプランを一緒に考えてもらえる
効率よく年収アップを狙いたい人には、心強い存在となるでしょう。
中卒・高卒もキャリアプランや転職先次第で生涯年収を増やせる

中卒・高卒は、大卒より生涯年収が低い傾向にありますが、これはあくまでデータ上の平均値に過ぎません。
仕事の選び方や資格取得、さらには独立・起業などによって、生涯年収を大きく伸ばすことは十分可能です。また、大卒より早く社会に出た経験がビジネススキルとして強みになることもあります。
まずは「どのくらい稼ぎたいか」を明確にし、目標に合わせたキャリアアップを目指しましょう。
今の会社で昇進・昇給が難しい場合は、年収が高い会社に転職するのもおすすめです。中卒・高卒向けの転職エージェントを活用すれば、自分のキャリアプランに合った会社が見つかりやすくなります。
学歴にとらわれず、長期的な視点でキャリアを築いていきましょう。