中卒で弁理士になるには?転職成功のポイントと求められる能力

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中卒で弁理士になるには?転職成功のポイントと求められる能力

  • 中卒から弁理士になることはできる?

  • 中卒から弁理士を目指すメリットは?

弁理士は法律に関する高度な知識が求められることから、高学歴の人が目指す職業というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、中卒者もなれる職業です。

今回は弁理士を目指す中卒者に向けて、以下の内容を解説していきます。

  • 弁理士になるための基本条件
  • 弁理士になったあとのキャリアパス
  • 弁理士に向いている人・向いていない人の特徴
  • 中卒で弁理士を目指すメリット・デメリット

中卒で弁理士試験に合格するための対策方法もご紹介するので、本記事を参考にぜひご自身の就職活動にお役立てください。

中卒で弁理士になることはできる

弁理士は中卒から目指すことは可能です。

そもそも弁理士とは知的財産に関する専門家です。主な仕事内容は、知的財産権を取得したいと考えている人のために特許庁への手続きを代行したり、知的財産に関する相談・コンサルティングなどを行ったりします。

なかでも特許庁に提出する書類の作成をはじめとした知的財産の権利化業務は、弁理士の独占業務であり、法律に関する専門的な知識や高度なスキルが求められる職業でもあります。

弁理士になるためには、弁理士試験に合格しなければいけませんが、弁理士試験には学歴や実務経験などの受験資格は設けられていないため、中卒者も受験が可能です。

令和5年度の弁理士試験の受験者数は3,065人で、そのうち合格者数は188人でした。合格率は6.1%で非常に難易度の高い試験なので、学歴に関わらず目指すのは難しい職業と言えます。

しかし、試験対策をしっかり行えば、中卒者も合格できる可能性はあります。弁理士試験の対策方法は後ほど詳しく説明するので、ぜひ参考にしてみてください。

参考:特許庁「令和5年度弁理士試験の結果」(参照 2024-09-30)

弁理士になる基本条件

弁理士になるための基本条件は、以下の通りです。

  • 弁理士試験に合格する
  • 実務修習を修了する
  • 弁理士の登録を行う

上記の要件を満たせば、弁理士として活躍できるようになります。

先述の通り、国家試験である弁理士試験は、特に受験資格は設けられていないので、学歴・職歴・年齢に関係なく誰でも受験が可能です。

弁理士試験に合格したあとは、弁理士法で定められている実務修習を受ける必要があります。

実務修習とは、弁理士の登録を行うために義務付けられている研修を指し、4ヶ月の研修を通じて弁理士に必要な実践的な知識やスキルを学ぶことを目的としています。

なお、実務修習の対象者は以下の通りです。

  • 弁理士試験に合格した人
  • 弁理士となる資格を有する人
  • 特許庁において審判官または審査官として審判または審査の事務に従事した期間が通算7年以上の人

そして、実務修習を修了したら、弁理士登録を行います。必要書類を日本弁理士会に郵送で提出し、審査を通過することでようやく弁理士になれるのです。

弁理士試験合格者や実務修習を修了した人のなかには、弁理士登録を行わない人もいますが、その場合は弁理士の独占業務に従事できないので注意が必要です。

弁理士として活動する際は、必ず弁理士登録を行うようにしましょう。

 

中卒で弁理士になる方法と手順

ここからは、弁理士になる方法と手順について詳しく解説します。

  • 弁理士試験に合格する
  • 実務修習を修了する
  • 弁理士の登録を行う

弁理士として活躍するには、上記の要件をすべて満たさなければなりません。

試験に合格してからスムーズに就職活動を進めるためにも、あらかじめ弁理士になるまでの具体的な流れや試験・研修の内容をしっかり理解しておきましょう。

中卒で弁理士になる方法と手順①弁理士試験に合格する

まずは、弁理士試験を受験して合格を目指します。

弁理士の試験内容は、「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」の3つです。

弁理士試験は、以下のスケジュールで行われます。

内容日程受験地
短答式試験5月中旬~下旬東京、大阪、仙台、名古屋、福岡
論文式試験必須科目 6月下旬~7月上旬選択科目 7月上旬~8月上旬東京、大阪
口述試験10月中旬~下旬東京
最終合格発表10月下旬~11月上旬頃

また、それぞれの試験の概要は以下の通りです。

短答式試験

出題形式マークシート方式
試験科目・出題数 特許・実用新案に関する法令 20問
意匠に関する法令 10問
商標に関する法令 10問
工業所有権に関する条約 10問
著作権法および不正競争防止法 10問
試験時間3.5時間
合格基準総合点が満点の65%を基準として、論文式試験および口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた点数以上であり、かつ、各科目の点数が合格基準点を下回らないこと。

論文式試験

出題形式論文式
試験科目  【必須科目】
・工業所有権に関する法令
・特許・実用新案に関する法令
・意匠に関する法令
・商標に関する法令

【選択科目】
①理工Ⅰ(機械・応用力学)・材料力学、流体力学、熱力学、土質工学
②理工Ⅱ(数学・物理)・基礎物理学、電磁気学、回路理論
③理工Ⅲ(化学)・物理化学、有機化学、無機化学
④理工Ⅳ(生物)・生物学一般、生物化学
⑤理工Ⅴ(情報)・情報理論、計算機工学
⑥法律(弁理士の業務に関する法律)・民法
試験時間必須科目 5時間選択科目 1.5時間
合格基準【必須科目】
標準偏差による調整後の各科目の得点の平均が、54点を基準として論文試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。
ただし、47点未満の得点の科目が一つもないこと。

【選択科目】
科目の得点が満点の60%以上であること。

▼口述試験

出題形式面接方式
試験科目工業所有権(特許・実用新案、意匠、商標)に関する法令 
試験時間各科目10分程度
合格基準採点基準をA、B、Cのゾーン方式とし、合格基準はC評価が2つ以上ないこと。
A:答えが良くできている場合
B:答えが普通にできている場合
C:答えが不十分である場合

また、令和5年度弁理士試験におけるそれぞれの試験の合格率は、短答式試験が12.4%、論文式試験が28%、口述試験が94.3%でした。最終合格率は6.1%と低く、非常に難易度の高い試験です。

例年1月中旬ごろに特許庁ホームページで試験の案内が告知されるので、必ず確認するようにしましょう。

参考:特許庁「令和5年度弁理士試験統計」(参照 2024-09-30)

中卒で弁理士になる方法と手順②実務修習を修了する

弁理士試験に合格したら、実務修習の修了を目指します。

実務修習の受講方法

実務修習は弁理士に必要な専門知識や実務能力を習得することを目的として行われるもので、弁理士登録を行うために義務付けられている研修です。

実務修習は例年11月中旬ごろに申し込みの受付が開始され、12月~3月頃の約4ヶ月間にわたって実施されます。
また、年1回の実施となるため、タイミングを逃さないように気を付けてください。

なお、申請の際は受講料として118,000円を指定の銀行口座に振り込む必要があります。
※2024年10月現在

実務修習の内容

実務修習は以下の5つの課程から構成されていて、修了するためには下記のすべての科目を修得しなければなりません。

  • 弁理士法および弁理士の職業論理
  • 特許および実用新案に関する理論および実務
  • 意匠に関する理論および実務
  • 商標に関する理論および実務
  • 工業所有権に関する条約その他の弁理士の業務に関する理論および実務

実務修習の実施方法は、オンライン集合研修とeラーニング研修の2つです。

オンライン集合研修では、修習生が事前に課題に対する起案を提出し、講師が提出された起案の講評を交えながら講義を行います。5日~9日かけて合計27時間受講する必要がありますが、曜日や時間帯の選択が可能なコース制なので、自分が無理なく受講できるコースを選びましょう。

集合研修の単位修得の要件は、以下の3つです。

  • 起案を期限までに提出する
  • 起案が基準を満たす
  • 集合研修の講義に出席する

集合研修は原則として欠席することができません。15分以上の遅刻や中座、早退をした場合などは出席と認められず、単位を習得できないので注意が必要です。

また、1科目でも起案の提出が期限に遅れた場合は、実務修習を修了できなくなる可能性があるため、必ず期限内に提出しましょう。

そして、eラーニング研修では、テキスト教材をもとに講義の映像コンテンツを視聴します。コンテンツの途中に設けられている効果確認問題に解答しながら最後まで視聴する研修方法です。

eラーニング研修の単位を修得するためには、コンテンツを最後まで視聴するのが条件です。効果確認問題では8割以上正解する必要があり、正答率が8割未満の場合は先に進められません。
eラーニングの配信期間は12月上旬から2月末までなので、しっかりスケジュールを組んで計画的に受講しましょう。

このように、実務修習の単位取得は簡単ではありません。特に集合研修の起案は作成の難易度が高く、基準に満たなければ不合格や再提出となる可能性も出てきます。

すべての起案で合格しなければ実務修習は修了できないため、真剣に研修に臨むのが重要です。

中卒で弁理士になる方法と手順③弁理士登録をする

実務修習を修了したら、いよいよ弁理士登録を行います。

弁理士試験に合格して実務修習を修了した人のなかには、弁理士登録を行わずに知財関係の仕事をする人もいます。

しかし、弁理士登録を行わなければ、下記の独占業務に従事することができないため、長く活躍したい方にとって弁理士登録は必要不可欠です。

【弁理士の独占業務】

  • 特許・実用新案等に関する特許庁に対する申請代行業務
  • 特許・実用新案等に関する仲裁事件の手続きの代理
  • 特許・実用新案等に関する権利・技術上の秘密の売買契約等の代理業務
  • 特許、実用新案等に関する訴訟において補佐人としての陳述又は尋問
  • 特許・実用新案等に係る審決又は決定の取消に関する起訴の起訴代理人

参考:e-GOV法令検索「弁理士法」(参照 2024-09-30)

弁理士登録は、必要書類を日本弁理士会に郵送で提出することで申請が完了し、執行役員会にて行われる登録審査で可否が決定されます。登録されると、翌営業日にホームページで登録番号と氏名が公表され、後日弁理士登録証やバッジなどが郵送されます。

登録にかかる日数は10日程度です。また、登録には登録免許税として60,000円、登録料・会費として50,800円(登録料35,800円、登録月の会費15,000円)がかかります。申請を行う前に所定の銀行口座に振り込むようにしましょう。
※2024年10月現在

また、弁理士登録に必要な書類は以下です。

  • 弁理士登録申請書・届出書
  • 誓約書
  • 勤務証明書
  • 履歴書
  • 登録後の会費納付方法について
  • 銀行振込等の写し貼付
  • 登録免許税納付証明書 ※①に貼付
  • 弁理士登録・届出事項変更届(氏名変更および送付先変更用。必要な人のみ)
  • チェックリスト
  • 住民票(マイナンバーの記載がないもの)
  • 弁理士となる資格を証する書面
  • 身分証明書

①~⑨は作成書類、⑩~⑫は取り寄せ書類となります。作成書類は日本弁理士会のホームページでダウンロードが可能です。不備のないようにしっかり確認して提出するようにしてください。

 

中卒で弁理士になるための資格試験の対策方法

弁理士になるには、まず弁理士試験に合格しなければなりません。弁理士試験は「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」の3つに分かれています。

各試験を受ける順番は、以下の通りです。

  • 短答式試験
  • 論文式試験
  • 口述試験

すべての試験を突破するためには、試験ごとにあらかじめ対策を練っておきつつ、学習を進めていくのが重要です。

ここでは、中卒で弁理士になるための資格試験の対策方法について解説します。

短答式試験の対策

短答式試験は5肢択一のマークシート方式で、60問の問題数を3.5時間で解答する必要があります。出題範囲が広く難易度も高いので、確実に合格するためにしっかり知識を身につけなければなりません。

短答式試験は、以下のような手順で対策するのがおすすめです。

  • 1科目ごとに試験範囲全体の概要を掴む
  • 過去問を繰り返し解き、出題傾向の把握と知識の定着をはかる
  • 口述試験の過去問を活用して知識を整理する

初めて弁理士試験の勉強をする場合、専門的で馴染みのない内容が多く、理解が追い付かない可能性が十分考えられます。そのため、まずは基礎的な内容がメインの参考書や通信講座などを使って全体の構造をおおよそ掴むようにしましょう。

最初に全体の概要を俯瞰することで、理解するのに時間がかかりそうな複雑な内容も自然とわかるようになります。

そのうえで、短答式試験の過去問を繰り返し解きながら出題傾向を徐々に把握し、知識の定着をはかるのがおすすめです。問題に登場する条文を条文集で調べながら解くことで、さらに理解が深まっていきます。

また、仕上げとして口述試験の過去問を活用するのも効果的です。口述試験の模範解答は、重要なポイントが端的にまとめられているので、口述試験の過去問の問題文と解答を繰り返し読み進めていければ、身につけた知識を上手く整理できます。

もし理解が不十分な知識が出てきた場合は、どの部分を重点的に復習すれば、苦手分野の克服にもつながります。

なお、特許庁のホームページでは過去の試験問題が掲載されているため、こちらも活用しながら勉強を進めてみてください。

論文式試験の対策

論文式試験は必須科目と選択科目があり、必須科目は5時間、選択科目は1科目を選んで1.5時間で解答する必要があります。短答式試験と違って記述式の試験なので、法律に関する知識はもちろん、答案構成力も求められます。

論文式試験は、以下のような手順で対策を行うのがおすすめです。

  • 過去問の模範解答を複写しながら問題文との関係性を把握する
  • 答案構成を書く練習をする
  • 過去問を繰り返し解く

論文式試験は、問われる内容や模範解答に頻出するキーワードなど、出題内容がパターン化されている傾向にあります。まずは論文作成に慣れるために模範解答を複写しながら、出題パターンを掴みましょう。

模範解答を複写しつつ問題文との関係性を把握することで、「どれくらいの文章量を書く必要があるのか」「問題文のどのキーワードが解答のどの場所で登場するのか」といった傾向を理解でき、スムーズに解けるようになります。

次に、答案構成を書く練習をしましょう。答案構成とは、試験開始時に問題冊子の白紙ページを利用して問題設定の時系列、答案として書く条文や順番などを整理する作業を指します。

答案構成を書くことで、時系列や論述の順番を整理できるようになるので、誤記を減らせるとともに解答時間の短縮できるのがメリットです。答案構成を考える際は、試験時間内に問題を解けるように時間配分を意識するのが大切です。

出題パターンや答案構成の書き方を覚えたら、過去問を繰り返し解いて解答の作り方を覚えていきます。この時に、実際の試験時間と同じ制限時間内で問題を解く練習をするのがおすすめです。

試験の時間配分をあらかじめ理解できれば、本番でも焦らずに解答を作れるようになります。

口述試験の対策

口述試験は弁理士試験における最終試験であり、試験官と口頭で質疑応答を行う面接方式です。

短答式試験や論文式試験とは違い、知識だけでなくコミュニケーション能力も問われる試験のため、話すのが苦手な方や緊張しやすい方はより念入りに対策を講じましょう。

口述試験は、以下のような手順で対策するのがおすすめです。

  • 過去問を使って繰り返し勉強する
  • 口述練習会に参加する
  • 口述試験の模試を受ける

どのように回答すべきかを理解するためにも、まずは過去問を使って繰り返し勉強しましょう。最初は模範解答を読みながら内容を理解し、自分の言葉ですらすらと回答を言えるようになるまで、繰り返し練習していきます。

ある程度回答を言えるようになってきたら、日本弁理士会をはじめ各団体が開催している口述練習会に参加するのも効果的です。実践方式で行われるため、緊張感を味わいながら練習できるのはもちろん、自分に足りない部分を把握しやすくなります。

また、試験官役の弁理士からアドバイスをもらえるので、自分では気づけなかった改善点も理解できるようになり、効率的に練習を進められるのも魅力です。

さらに、予備校が開催している口述試験の模擬試験を受けるのもおすすめです。口述練習会よりもさらに本番に近い緊張感を味わえるため、実際の雰囲気を疑似体験しながら効率的に対策ができます。

特に本番に弱いという自覚がある方は、口述練習会や予備校の模試を活用して、できるだけ本番の雰囲気に慣れておくようにしましょう。

中卒で弁理士になったあとのキャリアパス

国家資格が必要な弁理士は、一度資格を取得すれば長く活躍できる職業です。

知的財産に関する専門家としてさまざまな場所で活躍できるため、就職・転職の際にも困らないでしょう。

ここでは、中卒で弁理士になったあとのキャリアパスについて解説します。

  • 特許事務所でパートナー弁理士になる
  • 企業知財部で昇進する
  • 法律事務所に勤務する
  • 独立開業する

あらかじめ自分が目指したいキャリアパスを明確にしておくことで、資格試験のモチベーションを高めたり、効率良く就職活動を進めたりできます。

特許事務所でパートナー弁理士になる

弁理士の就職先としてもっとも多いのが特許事務所です。特許事務所では、企業から依頼を受けて特許出願の代理業務を行うのが主な仕事内容となります。

特許事務所には「パートナー」というポジションがあります。

パートナーは株式会社でいうところの共同経営者や社内取締役のようなポジションで、クライアントの窓口担当や新規開拓、弁理士の採用、PR広報といった事務所経営業務に携わります。

特許事務所でパートナー弁理士になれば、年収を大幅に上げることができ、将来的に事務所を継げる可能性もあります。また、事務所の経営にも携われるようになるため、マネジメントスキルも身につくのもメリットです。

パートナー弁理士は頑張り次第で年収1,000万円〜2,000万円になる見込みがあり、大手事務所の場合は年収2,000万円を超えるチャンスも得られます。そのため、キャリアアップにくわえて年収アップも狙いたいなら、パートナー弁理士を目指すのがおすすめです。

パートナー弁理士になるには、所属する特許事務所でパートナー弁理士に選出されるか、「パートナー弁理士候補」の求人を出している事務所に転職する方法があります。

なお、パートナー弁理士には、案件を一人でこなす知識やスキル、クライアントとの折衝力、マネジメントスキルといったさまざまな能力が求められます。

そのため、早いうちから多くの案件に携わってたくさんの経験を積んでスキルを磨くことが大切です。

企業知財部で昇進する

弁理士の就職先として2番目に多いのが、企業の知財部です。

企業の知財部では、知的財産の出願や競合他社の特許発明の監視、各種権利関係の管理業務といった自社の技術や著作物を守るための業務を担います。また、知財戦略の立案をはじめ経営に関わる業務をこなすこともあります。

企業によっては、一部の業務を特許事務所に依頼するケースもあります。そのため、企業知財部は特許事務所の弁理士ほど独占業務を行う機会が少ない傾向にあり、資格を活かすというよりは弁理士になるために培った知識を活かした働き方ができる就職先といったイメージです。

また、そもそも知財部を設置している企業は限られており、知的財産関連以外の業務を担当することになったり、部署移動や転勤があったりするというケースが大半です。

一般企業への就職は、弁理士の業務に専念したい方にとっては難しいかもしれませんが、コミュニケーション能力や他部署との連携スキルといった社会人として必要なスキルが身につけられるメリットがあります。

さらに、実務経験を積んで社内で高い評価を得られれば、管理職に昇進できる可能性も高まります。

法律事務所に勤務する

法律事務所といえば弁護士のイメージが強いと思いますが、知的財産に関する案件は弁理士が持つ知識も必要なため、主に知財部のある法律事務所において弁理士の需要があります。実際に、弁理士の就職先として3番目に多いのが法律事務所です。

基本的に法律事務所における弁理士の業務内容は、明細書の作成がメインで、特許事務所とそこまで大きく変わりません。ただし、国内だけでなく国外の出願業務を行う場合も多く、企業法務も請け負う事務所では鑑定や知財コンサルティングに関わるケースもあります。

また、弁護士が知財に関する侵害訴訟や審決取消訴訟などを行う際に、弁理士が代理人や補佐人となって訴訟業務にあたることもあります。このように、特許事務所ではあまり経験できないような仕事に携われる機会も少なくありません。

事務所によっては訴訟の訴状や書面の起案をしたり、技術説明会で説明を担当させてもらえたりする場合もあり、表立って活躍できる弁理士を目指している方におすすめのキャリアパスの一つです。

独立開業する

日本弁理士会の調査では、日本の弁理士は2024年5月時点で約12,000人おり、そのうち少なくとも3割以上の約3,700人は独立開業しているというデータが出ています。

知的財産権(特許権、商標権など)の手続代理は弁理士の資格を持った人だけが行える専権業務で、競争相手が限られることから、弁理士は独立しやすい職業です。

独立開業すれば仕事の裁量権が大きくなり、自分で請け負う案件や働く時間などを自由に決められるようになります。頑張り次第では、年収2,000万円超えといった大幅な年収アップも目指せます。

ただし、独立開業するためには、クライアントの新規開拓や業務の受注、進行管理、経理などをすべて一人で行わなければなりません。一人で業務を完結できるようになるうえで、豊富なスキルや幅広い人脈などが必要なので、まずは特許事務所や企業知財部などの組織でしっかり実務経験と実績を積むことが重要です。

弁理士としてさらに希少性を高めるなら、以下のような資格をダブルライセンスとして持っておくことをおすすめします。

  • 行政書士
  • 税理士
  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 中小企業診断士

ダブルライセンスの弁理士は通常の弁理士よりも活躍の幅が広がりやすく、弁理士としての付加価値も高まるため、依頼が舞い込みやすくなります。

参考:日本弁理士会「日本弁理士会会員の分布状況」(参照 2024-09-30)

中卒で弁護士になるには?転職成功のポイントと求められる能力

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中卒で弁理士になるのに向いている人・向いていない人

弁理士は専門性の高い職業なので、向き・不向きが大きく分かれる職業です。

弁理士の仕事内容や働き方、適正を理解しないままに就職してしまうと、せっかく苦労して資格を習得してもミスマッチによって早期に離職してしまう可能性があります。

そのため、自分が弁理士としての適性があるかどうかもしっかりチェックする必要があります。

ここでは弁理士になるのに向いている人・向いていない人の特徴を3つずつ厳選してご紹介するので、参考にしてみてください。

弁理士に向いている人弁理士に向いていない人
好奇心旺盛な人活字を読むのが苦手な人
論理的な思考や言語化が得意な人時間や期限の管理がルーズな人
一人で作業を進めるのが苦ではない人人とのコミュニケーションが苦手な人

中卒で弁理士になるのに向いている人

弁理士になるのに向いている人の特徴は、以下の3つです。

  • 好奇心旺盛な人
  • 論理的な思考や言語化が得意な人
  • 一人で作業を進めるのが苦ではない人

弁理士は、まだ世の中に知られていないものを権利化する業務を行います。新規性や進歩性が高いものを扱うことから、新しいものに対して興味を持てる好奇心旺盛な人は弁理士に向いています。

弁理士の仕事を続けていくうえで、最新技術や法改正、判例といったさまざまな知識のインプットも必要不可欠なので、何事にも興味を持てる人であるのも重要です。

また、特許出願をする際は、特許庁に明細書をはじめとした必要書類を作成して提出します。明細書とは、技術説明書としての役割と権利の範囲を説明する役割を担う書類を指し、なぜ特許性があるのかを文章で順序立てて説明するスキルが求められます。

知見のある審査官を納得させるためにも、論理的思考に基づいて根拠を言語化する能力が必要です。よって、論理的な思考や分析、物事の言語化が得意な人は、弁理士として活躍できる可能性があります。

さらに、弁理士は1案件につき一人で行うケースも珍しくありません。特許の可否の調査から特許出願まで一人でコツコツと作業を進めなければいけないので、地道に作業を進めることが苦ではない人は弁理士としての適性が高いと言えます。

特に、商標登録や特許出願といった権利関係の業務は、いかに他人より早く申請・取得できるかどうかが重要です。そのため、たとえ1人でも期限内にスピーディーに作業を行わなければいけません。

中卒で弁理士になるのに向いていない人

弁理士になるのに向いていない人の特徴は、以下の3つです。

  • 活字を読むのが苦手な人
  • 時間や期限の管理がルーズな人
  • コミュニケーションが苦手な人

弁理士は、日々業務のなかで膨大な量の書類に目を通す必要があります。過去の申請書類や論文、裁判例といったさまざまな文書や文献を読まなければならないため、活字を読むのが苦手な人にとって弁理士の仕事は苦痛に感じるでしょう。

くわえて、弁理士の仕事は厳格に期限が決められているものが多く、スケジュール管理が非常に重要です。特許を取得できるのは先に出願をした人、すなわち早い者勝ちなので、各種手続きの期限やクライアントが指定する納期などを守れなければ、特許が取れなかったり権利が剥奪されたりする可能性があります。

よって、時間や期限の管理がルーズな人は弁理士には向いていません。

また、弁理士は高いコミュニケーション能力がないと務まりません。特許の権利を得るためには専門分野に関して知見がある審査官を納得させなければばならず、論理的かつ誰が見てもわかりやすく、疑念が生じないような正確な表現が求められます。

審査官の言い分を理解しながら、こちらの主張を認めてもらうための高い傾聴力やプレゼン能力などが必須です。

また、審査官を納得させるために、クライアントから発明内容を適格に聞き出すことも重要なので、対人関係構築能力も欠かせません。人とのコミュニケーションに苦手意識を持っていると、弁理士として活躍するのは難しいです。

中卒で弁理士になるメリット・デメリット

ここでは、中卒で弁理士になるメリット・デメリットについて解説します。

弁理士は学歴に関係なく目指せる職業ですが、資格試験の難易度が高く、高度な知識と実践能力が求められるため、目指すべきか迷っている人も少なくありません。

自分に合っている仕事かどうかを見極めるうえで、弁理士の働き方や特徴を理解しておくのが大切です。これからご紹介するメリットとデメリットを参考に、転職するかどうかの判断材料にしてみてください。

中卒で弁理士になるメリット中卒で弁理士になるデメリット
平均年収が高いプレッシャーが大きい仕事である
将来性がありキャリアパスも幅広い弁理士になるだけでも時間がかかる
知的財産のエキスパートとしてやりがいのある仕事ができる最低2~3年の下積み期間が必要

 

中卒で弁理士になるメリットは3つ

中卒で弁理士になるメリットは、以下の3つです。

  • 平均年収が高い
  • 将来性がありキャリアパスも幅広い
  • 知的財産のエキスパートとしてやりがいのある仕事ができる

中卒で弁理士になるメリットとして、まず平均年収が高い点が大きなメリットと言えます。

国税庁の調査によれば、令和5年度の一般企業に務める正社員の平均年収は530万円でした。一方、弁理士の平均年収は約1,121万円で、一般的なサラリーマンよりも平均年収が倍以上というデータが出ています。

さらに大手の特許事務所のパートナー弁理士になったり独立開業で成功したりすれば、年収2,000万円以上を稼ぐことも夢ではありません。

学歴に関係なく高収入を得たい人にとって、弁理士の年収はかなり魅力に感じるのではないでしょうか。

また、今後も技術の発展やグローバル化によって、知的財産の保護や権利化などの需要が高まることが予想されています。弁理士の需要も高まっており、今後も長く活躍できるため、将来性もある職業なのもメリットです。

くわえて特許事務所や企業の知的財産部、法律事務所などキャリアパスも幅広く、就職や転職に困りにくい点も魅力です。弁理士として高い実績を積めば、独立開業も目指せます。

そして何より、弁理士は知的財産の専門家として社会的に評価されやすく、弁理士の独占業務にも従事できるため、大きなやりがいも感じられる魅力もあります。「社会的信用度が高い仕事に就きたい」「自分にしかできないようなやりがいのある業務に携わりたい」という人におすすめです。

参考:
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」(参照 2024-10-01)
厚生労働省「職業情報提供サイトjobtag 弁理士」(参照 2024-10-01)

中卒で弁理士になるデメリットは3つ

中卒で弁理士になるデメリットは、以下の3つです。

  • プレッシャーが大きい仕事である
  • 弁理士になるだけでも時間がかかる
  • 最低2~3年の下積み期間が必要

弁理士は法律に関わる業務が多く、期限厳守という厳しさや業務量の膨大さなどから精神的なプレッシャーが大きい職業でもあります。タスク管理やスケジュール管理を徹底して行いながら業務に取り組まなければいけないため、過度なストレスが生じやすいです。

また、弁理士になるまでに時間がかかるのは大きなデメリットと言えます。資格を取得するために膨大な勉強時間や実務修習の修了が必要となりますし、弁理士になれたとしてもさらに2~3年程度の下積み期間が発生します。

弁理士の下積み期間中は、主に特許事務所に属して、特許出願の手続きや審査応答、顧客との打合せなどを通じて、一人前の弁理士になるうえで欠かせない知識やスキルを身につけていきます。

事務所によっては、「基礎的な業務のみ教えて、あとは見て学んでもらう」という教育方針を定めている場合もあるので、自ら積極的にスキルを伸ばしていく姿勢を貫くことが大切です。

このように、一人前として活躍できるまでに何年もの期間を要し、さらには地道に努力を積み重ねる忍耐強さと知識やスキルを得る積極性がないと続けるのが難しい点も、弁理士になるデメリットの一つです。

 

弁理士以外で転職を検討するならナイト系がおすすめ

弁理士は学歴に関係なく目指せますが、弁理士試験の合格率は低く、資格を取得するのが難しい職業です。仮に弁理士の資格を取得したとしても、下積み期間が長いため、すぐに活躍できるわけでもありません。

  • 転職してすぐに活躍できる業界で働きたい

  • 短期間で収入アップ・キャリアアップができる仕事に就きたい

このように考えている中卒者は、ぜひナイト系も視野に入れてみてください。

ナイト系は18歳以上(高校生不可)であれば誰でも応募可能で、学歴や資格を問わない求人が多いのが特徴です。また、実力主義の業界なので、未経験からのスタートでもスピード昇給・昇格できるチャンスがあり、短期間で高年収も狙えます。

さらに、企業によっては独立支援制度が設けられているところもあり、独立志向が強い人にとって嬉しい待遇を受けられるのも魅力です。

ナイト系の職種は店舗スタッフ、Web運営スタッフ、送迎ドライバーなどいろいろあるので、興味がある方はぜひ一度求人をチェックしてみてください。

 

中卒で弁理士になるためのおさらい

最後に、中卒者が弁理士になるためのポイントをまとめたので、おさらいしておきましょう。

ポイント
【中卒で弁理士になる方法】
1.弁理士試験に合格する
2.実務修習を修了する
3.弁理士登録をする

【弁理士に向いている人の特徴】
・好奇心旺盛な人
・論理的な思考や言語化が得意な人
・一人で作業を進めるのが苦ではない人

【中卒から弁理士になるメリット】
・平均年収が高い
・将来性がありキャリアパスも幅広い
・知的財産のエキスパートとしてやりがいのある仕事ができる

弁理士は学歴不問で目指せる職業なので、中卒者もチャレンジできる職業と言えます。

弁理士になるまでの道のりは長いですが、弁理士として活躍できれば年収アップが見込めて、自分に合ったキャリアパスを選択してやりがいを持って仕事に取り組めるのが大きな魅力です。

弁理士への転職を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしながらさっそく今日から準備を始めていきましょう。

ネクスト編集部

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メンバニ公式メディアのネクスト編集部。最終学歴が高卒・中卒(18歳以上高校生不可)の転職先を探している男性に向けたお役立ち情報を発信しています。

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