ビジネスの場で、思い込みや焦りから「早とちり」してしまった経験はありませんか?
「早とちり」は日常生活でもよく使われる言葉ですが、ビジネスシーンでは使い方を誤ると、誤解を招いたり、失礼な印象を与えてしまったりします。
本記事では「早とちり」の正しい意味や使い方を、ビジネスで使える例文を交えてわかりやすく解説します。
さらに、謝罪に使う際の注意点や言い換え表現、英語での言い回しなど幅広く紹介するので、ビジネスで自信を持って活用していきたい方は必見です。
「早とちり」は上司や目上の人に使用して良い

「早とちり」は、敬語表現を用いれば上司や目上の人に対しても使える言葉です。
もともと「確認を怠って先走った結果、間違えること」を意味し、自分の非を認めて謝罪する場面でよく使われます。
- 【使用例】
 - 「私の早とちりでございました」
「早とちりをいたしまして、ご迷惑をおかけしました」 
ただし、報告書や契約書などの正式な文書では「早とちり」はややカジュアルな印象です。
正式な場では、次のような言い換えが望ましいでしょう。
- 参考
 - 「納期の取り違えがあり、作業に着手してしまいました」
「確認不足により誤解が生じました」 
「早とちり」の意味と語源

「早とちり」は、「早」と「とちり」を組み合わせた言葉です。
- 「早」……早まった判断や認識不足の意味
 - 「とちり」……軽い失敗を指す言葉
 
「とちり」の語源は、舞台用語と栃麺(とちめん)作りの2つの説があります。
いずれも「早まった判断で失敗する」という意味で使われる言葉です。
- 参考
 - 【とちる(舞台用語)語源説】
歌舞伎や浄瑠璃で、拍子を外してセリフや動作を間違えることを「とちる」と呼び、これが「早とちり」の語源になったといわれています。
【栃麺(とちめん)語源説】
栃麺(とちめん)の生地作りで、手順をもたつかせて失敗することを「栃る(とちる)」、急ぎすぎて失敗することを「早栃り(はやとちり)」と呼び、これも「早とちり」の由来とされています。 
「早とちり」の使用例

「早とちり」は先走って起こした軽いミスを指す名詞で、謝罪の際に使うことができます。
ビジネスでは、謝罪の言葉を一緒に伝えることで、反省と誠意をしっかり伝えられます。
- 【会話例】
 -  Aさん:その件はまだ情報の精査中のため、作業はストップしてください。
Bさん:早とちりをして着手してしまいました。申し訳ありません。以後、確認を徹底いたします。 
このように、自分の誤りを素直に認める姿勢を表す言葉として使えます。
ただし、「早とちり」はあくまで軽いミスに対して適した表現です。
公式の文書やより丁寧な対応が求められる場面では、「確認不足で」「納期を取り違えてしまい」など、具体的な内容に言い換えるほうが安心です。
「早とちり」を使う際の注意点

「早とちり」は軽い失敗を柔らかく伝えられる便利な表現ですが、使い方を間違えると「責任を十分に認識していない」と捉えられてしまう場合もあります。
ビジネスでは、状況や相手との関係性に応じた適切な言葉選びが大切です。
- 深刻なミスでは使わない
 - 今後の対応案を添える
 - 相手との関係性に気をつける
 
ここでは、ビジネスシーンで「早とちり」を使う際に気をつけたい3つのポイントを解説します。
①深刻なミスでは使わない
「早とちり」は軽いミスや誤解に対して使うのが基本です。
大きなトラブルが起きた時に使うと、「ごまかしている」「失敗を小さく見せようとしている」と受け取られるおそれがあります。
正式な報告書や謝罪文が必要な改まったシーンでは、以下のような表現を使うのがおすすめです。
- 参考
 - 「確認を取らずに進めてしまい、申し訳ございませんでした」
「段取りを誤り、大変失礼いたしました」 
ビジネスにおいて「早とちり」を使う場面を理解しておけば、相手に誤解を与えることなく、信頼関係の構築につながります。
②今後の対応案を添える
「早とちり」の言葉を使って謝罪する際は、今後の対応案も一緒に添えて再発防止の姿勢を示すことが大切です。
- 参考
 - 「今後は確認を怠らないようにいたします」
「二重チェックの仕組みを整えます」 
早とちりした内容によっては、単に「早とちりをしてしまい、申し訳ありません」だけでは、謝罪の意図が十分に伝わらないことがあります。
相手に誤解を与えないためにも「早とちり」と今後の対応案はセットで使うといいでしょう。
ただし、今後の対応案を添えれば、どんなシーンでも「早とちり」を使ってOKというわけではありません。
前述のとおり、何か相手に損害があったり、大きく気分を害する対応をしてしまったりといった場面では、「早とちり」を使用するのはNGです。「具体的な失敗の内容」+「今後の対応案」で謝罪するようにしましょう。
③相手との関係性に気をつける
「早とちり」は、早まった判断により間違ったことを認めるときに便利な表現ですが、相手との関係性によって使うかどうか判断する必要があります。
- 注意点
 - ・社内の上司や同僚:多くの場面で「早とちり」を使ってOK
・新規の取引先や初対面の人:基本的に「早とちり」は使用NG 
面識が少なく十分な関係性を築けていない相手に使用すると、きちんと誠意が伝わらない可能性があります。
「早とちり」は、相手との信頼関係があることが前提で使える言葉です。
関係が浅い相手には、次のような丁寧な表現に言い換えると誠実さと慎重さを伝えられます。
- 参考
 - 「確認を取らずに進めてしまい、申し訳ございません」
 
言葉選び一つで印象は大きく変わるため、相手との関係性に応じた表現を心がけることが大切です。
「早とちり」のビジネスメールの例文

実際のビジネスシーンでは、「早とちり」をどう表現すれば良いか迷う方も多いでしょう。ここでは、社内向け・社外向けそれぞれのケースで使えるメール例文を紹介します。
謝罪の伝え方や言葉選びのトーンを参考にすれば、状況に応じた対応がしやすくなります。
【例文1】社内向けビジネスメール
社内向けのメールでは、「早とちり」を使っても問題ありません。
下記は、上司の指示を待たずに作業を進めてしまったときや、情報の確認を怠ってしまったときなどに使える例文です。
使用のポイントは、誤りの経緯と今後の対応を明確に伝えることです。
これにより、自分のミスを軽んじていない印象を与えつつ、真摯な姿勢を示せます。
- 【例文】
 - 件名:作業進行に関するお詫び
〇〇課 〇〇課長
お疲れさまです。△△です。
本日の案件について、情報の精査が完了していない段階で作業を進めてしまいました。
私の早とちりにより、確認前に着手してしまいましたことをお詫び申し上げます。
今後は必ず事前にご指示を仰ぎ、確認を徹底いたします。
この度はお手数をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。 
【例文2】社外向けビジネスメール
社外向けでは、「早とちり」を使うかどうか慎重に判断する必要があります。
下記は、社内確認が済む前にアポイント日程を送ってしまい、相手に迷惑をかけた場合の「早とちり」を使った謝罪文の例です。
ポイントは、「状況説明」「謝罪」「今後の対応」をしっかり伝えることです。
- 【例文】
 - 件名:日程調整に関するお詫びと訂正
株式会社〇〇
営業部 〇〇様
いつも大変お世話になっております。△△株式会社の□□です。
先ほどミーティング日程の候補をお送りしましたが、社内調整が完了していない段階でのご連絡となってしまいました。
私の早とちりにより混乱を招き、申し訳ございません。
改めて社内で確認のうえ、正式な日程をご案内いたします。
今後は確認を徹底し、再発防止に努めます。
大変お手数おかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。 
「早とちり」の類似表現
「早とちり」は便利な表現ですが、状況や相手との関係性に応じて言葉を使い分けることで、より正確に気持ちや経緯を伝えられます。
ここでは、よく使われる「早とちり」の言い換え表現を3つ紹介します。
- 軽率な行動
 - 早合点(はやがてん)
 - 勇み足(いさみあし)
 
①軽率な行動
「軽率な行動」は、深く考えずに判断・発言・行動してしまったことを表す表現です。
たとえば、情報の精査や他部署との連携が必要な場面で、一人だけ先走ってしまった際の謝罪に使われます。
- 参考
 - 【例文】
私の軽率な行動でご迷惑をおかけしました。
確認不足のまま進めてしまい、申し訳ございません。
今後は確認を徹底いたします。 
「早とちり」と同じように謝罪だけで終わらせず、今後の対応案を添えると誠意と改善の姿勢が伝わります。
軽い認識ミスから正式な謝罪が必要なケースまで幅広く使える、便利な表現です。
②早合点(はやがてん)
「早合点(はやがてん)」とは、よく確認しないまま理解したつもりになることを指します。
早とちりの一歩手前で、ミスには至らなかったものの誤解があった場合や、念のため事前確認したいときに使える表現です。
- 参考
 - 【例文】
「ご指摘ありがとうございます。早合点でございました。以後、気を付けて作業を進めます」
「早合点にならないよう、念のための確認なのですが」 
ポイントは、あくまで自分の理解不足や勘違いに対して使うことです。
相手に向かって「それは早合点ですよ」と指摘するのは、状況や関係性によって失礼になる場合があるので注意が必要です。
また、人に多大な迷惑をかけてしまったときに「早合点でした」を使用すると、「迷惑をかけてしまったけど、自分ではうっかり理解しているつもりでいた」と伝わりかねません。
「早合点」を「早とちり」の言い換え表現として示す場合、使用場面を誤らないように注意しましょう。
③勇み足(いさみあし)
「勇み足」とは、勢い余って早まった行動を取り、結果的に失敗してしまうことを指します。
ビジネスでは、焦りや油断からの失敗を謝罪するときに使えます。
- 参考
 - 【例文】
「勇み足な発言によりご不快な思いをおかけし、誠に申し訳ございませんでした。配慮に欠けた言動を深く反省し、今後は十分に確認を行った上で発言するよう努めてまいります」 
「勇み足」はもともと相撲用語ですが、ビジネスでは次のような場面で使われます。
- 気が大きくなって余計な発言をしてしまった
 - 確認を怠って先に契約を進めてしまった
 
「早とちり」と同じくフライングしてしまったときに適した表現ですが、「勇み足」には「功を焦った」「調子に乗った」といった感情的な要素も含まれます。
そのため、「早とちり」より自戒の念を含む表現といえます。
「早とちり」の英語表現をご紹介

ビジネス英語でも、「早とちり」にあたる表現はいくつか存在します。
誤解や焦りからミスをしてしまった場合には、適切なフレーズを使って謝罪をしましょう。
ここでは、ビジネスメールや会話で自然に使える「早とちり」を意味する英語表現を3つご紹介します。
- I apologize for jumping to conclusions.
 - I apologize for jumping the gun.
 - I may have gotten ahead of myself. My apologies.
 
状況に合わせて言い換えられるよう、ニュアンスの違いも意識しましょう。
① I apologize for jumping to conclusions.
- 【早まった判断をしたときの英語表現】
 - I apologize for jumping to conclusions without checking the details first.
(詳細を確認せずに早とちりしてしまい、申し訳ありません。) 
「jumping to conclusions」は直訳すると「結論に飛びつく」で、十分な確認をせずに早まった判断をしてしまったときに使われる表現です。
ビジネスシーンでは、相手の意図を誤解したり、情報が不十分なまま判断したりした場合の謝罪表現として用いられます。
ただ、「jumping to conclusions」は前提や状況などの諸事情を省く文章になるため、ややカジュアル寄りの表現です。
基本的には社内とのやり取りで使うことをおすすめします。
誤解を解きつつ、誠実さを伝えるフレーズとして覚えておくと便利です。
② I apologize for jumping the gun.
- 【先走って行動をしたときの英語表現】
 - I apologize for jumping the gun and sending the report before getting your approval.
(承認をいただく前に報告書を送ってしまい、早まった行動をして申し訳ありません。) 
「jumping the gun」は、陸上競技のピストルの合図(gun)より先に走り出す様子が語源で、「フライングをする」「早まった行動を取る」という意味を持ちます。
ビジネスでは、準備や確認が整う前に自分だけ行動してしまったときの謝罪に適した表現です。
段取りを無視して先走り、相手に迷惑をかけた場合や、手順を踏まずに進めてしまった場合に誠実に謝罪できます。
③ I may have gotten ahead of myself. My apologies.
- 【感情のまま勇み足を踏んだ場合の英語表現】
 - I may have gotten ahead of myself and shared the draft before getting everyone’s feedback. My apologies.
(皆さんの意見を聞く前に、先走って原稿を共有してしまいました。申し訳ありません。) 
「I may have gotten ahead of myself」は直訳すると「自分を追い越してしまったかもしれない」で、「気が逸って行動してしまった」「焦って先走った」というニュアンスの表現です。
焦りや期待が先行して冷静さを欠いたときに、自分の非を認めるフレーズとして使われます。
「jump the gun」よりも感情的な要素が強く、「うれしさや勢いでつい行動してしまった」という前向きな失敗にも使える点が特徴です。
自己反省と誠意をバランスよく伝えられる表現として便利です。
早とちりは先走って失敗した際の謝罪で使う表現

「早とちり」は、十分な確認をせずに行動し、結果的に失敗してしまったことを謝罪したいときに使う言葉です。
ビジネスシーンでは「申し訳ありません」をはじめとした謝罪表現を添えれば、自分が先走ったせいでミスを起こしてしまった事実を認めつつ、謝罪したいという誠意を伝えられます。
ただし、重大なミスで使うと「ミスを小さく見せようとしている」と受け取られかねません。
また、関係の浅い取引先に使うと不誠実な印象を与える可能性があります。
そのため、状況や相手に応じて「軽率な行動」「確認不足」などに言い換えましょう。
「早とちり」は使うか使わないかも含めて、相手への配慮と誠意が伝わる言葉遣いを心がけてください。