「先般」は、主にビジネス文書やメールで使われる言葉です。
「先ほど」「この間」という意味を持ちますが、いつまでの期間のことを指しているのかわからないという方もいるのではないでしょうか。特にビジネスシーンでは、「先般」の使い方を誤ってしまうと、失礼な印象を与えかねません。
この記事では、先般の期間はいつまでなのか解説するとともに、「先般」の正しい意味や使い方、使う際の注意点、「先日」や「過日」といった類語の意味や例文など詳しくご紹介します。
「先般」について正しく理解して、より良好なビジネス関係を構築させていきましょう。
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「先般(せんぱん)」は目上の人に使用して良い
ビジネスシーンにおいて、「先般」は上司や取引先など目上の人に使っても問題ありません。
「先般」は、「この間」「先ほど」という意味をより丁寧に表した言葉で、社内外のかしこまった場面に適しています。また、口頭で使うにはやや堅苦しい表現なので、メールやビジネス文書で用いられるケースが多いです。
たとえば、数日前に実施した会議をまとめた議事録をメールで共有する際に、「この間の会議の議事録」ではなく「先般の会議の議事録」と示すことで、より礼儀正しい印象を与えます。
目上の人とのコミュニケーションにおいて、「先般」を用いることで、相手への敬意を示しつつ、過去の出来事に適切に言及できます。フォーマルな印象を与えながら、ビジネスの文脈に相応しい丁寧な表現として機能する言葉です。
ちなみに「先般」と似た言葉は、「先日」や「過日」です。それぞれの言葉が指す期間や使うシーンによって異なりますが、どちらも目上の人に使えます。
「先般」の意味と類語の時点の違い
「先般」とは、上司や取引先といった目上の人に向けて、ビジネスメールや文書で使われる表現です。
デジタル大辞泉によると、「先般」の意味は以下のように記されています。
出典: コトバンク(デジタル大辞泉)「「先般」の意味・読み・例文・類語」(参照 2024-12-09)さきごろ。このあいだ。過日。
「先(せん)」は「前、以前」という意味です。「般」は「ある局面、回」というニュアンスで、それらを合わせると「以前のある局面」という意味合いになります。
「先般」とは、過去のとある時点を指す表現です。いつまでの時点を指すのかは明確に決まっていませんが、およそ1週間前~1カ月前だと言われています。
なお、「先般」が示すのは「時点」であり、「期間」そのものを示す表現ではないので注意しましょう。
たとえば、「先般、物騒な事件が増えています」というように、ここ最近の期間で起きた出来事を伝えたい時には使えません。「先般お知らせしました通り」「先般のご指摘を受けまして」といった過去に起きた出来事をピンポイントに示したい場合に適しています。
「先般」とその類語が指すおおよその時点をまとめたので、場面に応じて使い分けていきましょう。
各用語の時点
- 先般…1週間前~1カ月前
- 先日…2・3日前~1週間前
- 過日…2・3日前~1カ月前
- 昨今…1カ月前~数年前
参考:Chatwork「「先般」の意味とは?定義や「先日」との違い、使い方を解説」(参照 2024-12-12)
「先般」と「先日(せんじつ)」の違い
「先般」と「先日」は、どちらも「この間」という意味を持ちますが、示す地点のおおよその期間が異なります。
「先般」はおよそ1週間前〜1カ月前の地点を指すのに対し、「先日」はおよそ2・3日前〜1週間前とより近い過去の地点を示す場合が多いです。
また、「先日」は、「先般」と比べて使用できるシーンが幅広いのも特徴です。書き言葉としても話し言葉としても使えるので、「先般」より使用頻度は高いと言えます。
さらに、「先日」は日付に重点を置く表現であるのに対し、「先般」は内容や出来事自体に重きを置く傾向があります。
「先般」と「過日(かじつ)」の違い
「過日」は「過ぎた日」や「先日」という意味を持ち、およそ2・3日前〜1カ月前の期間を指す表現です。「先般」とは、過去が表す期間の長さが異なります。
「先般」と「過日」は、ほぼ同じ使い方ができますが、「過日」は「先般」より前に起きた出来事を指す時に用いられるのが一般的です。
また、「過日」は「先般」と同様に話し言葉として使われるケースはほとんどなく、ビジネスメール、ビジネス文書、報告書、企画書といったかしこまった文章を書く時に使用する表現です。
「先般」と「昨今(さっこん)」の違い
「昨今」とは、「この頃」「近頃」という意味です。現在進行形の状況や傾向を説明する際に適しています。
「先般」と「昨今」は、過去を指す対象が異なります。「先般」は過去の出来事をピンポイントで示すのに対し、「昨今」はおよそ1カ月前〜数年前までの期間全体を指す言葉です。
たとえば、「昨今はリモートワークを導入する企業が増えている」は、「近頃はリモートワークを導入する企業が増えている」という意味になり、現在進行形で続いていることを適切に表現できます。
一方で、「先般はリモートワークを導入する企業が増えている」は、「この間はリモートワークを導入する企業が増えている」となるため、違和感のある表現になってしまいます。
期間を示したいのか、期間内の特定の地点を示したいのかによって、「先般」と「昨今」を使い分けるようにしましょう。
「先般」の使用例
「先般」は、ビジネスにおいて取引先や顧客といった目上の人と丁寧にコミュニケーションを取りたい時に重宝されます。
まれに、口頭で目上の人とかしこまった会話をする際に使われるケースもありますが、主に書き言葉としてビジネス文書やメールで使用する場合が多いです。
「先般」の使用例
- 先般の会議で決定した事項を共有いたします。
- 先般お知らせした通り、〇〇支社へ転勤する運びとなりました。
- 先般のセミナーへのご参加、誠にありがとうございました。
- 先般ご納品いただいた件について、1点ご確認いただきたく存じます。
上記のように「先般」を使うことで、「この間」「先ほど」より丁寧かつ礼儀正しい印象を与えられます。
「先般」をビジネスで使う時の注意点
「先般」は、主にビジネスのかしこまった場面に適した表現です。場合によっては、相手から「堅苦しい」「距離感がある」と思われる可能性があるので、使う相手やタイミングに注意しなければいけません。
「先般」を使用する際に注意すべきポイントは、以下の2つです。
- 身近な間柄では使わない
- 日付がはっきりしている場合は使わない
「先般」を使う注意点を知っておくことで、より良好なビジネス関係を築くきっかけにつながります。
【注意点1】身近な間柄では使わない
「先般」は、日常的にコミュニケーションを取る同僚や後輩、距離感の近い上司といった親しい間柄の人に対して使ってしまうと、「急によそよそしくなったけどどうしたんだろう?」と驚かれる可能性が高いです。
先般は日常シーンではあまり使わないかしこまった言葉なので、やや堅苦しい印象を与えやすい表現と言えます。親密な間柄の人に対しては、「先日」「この間」といったカジュアルな言葉を使うようにしましょう。
ただし、正式なビジネス文書を共有したい相手の中に社外や取引先といった外部の人も含まれていた場合、「先般」を使ったほうが適切なパターンもあります。
状況や相手との関係性に応じて、「先般」と言い換え表現を使い分けていくのがポイントです。
【注意点2】日付がはっきりしている場合は使わない
「先般」は、過去のいつ頃のことを指しているのか曖昧な時に便利な言葉です。そのため、明確な日時がわかっている場合、わざわざ「先般」でぼかさずに具体的な日付を示したほうが、相手に誠実な印象を与えます。
たとえば、2日前に行われた会議の資料を共有する際、「先般の会議資料を共有いたします」ではなく、「一昨日の会議資料を共有いたします」と伝えるのがおすすめです。
直近で会議が頻繁に続いていた場合、「先般の会議におきまして」と伝えても、相手はどの会議のことを指しているのかわからない可能性があります。
いつの会議のことなのか明確に示す表現を意識できれば、良好なビジネス関係が築けるでしょう。
ビジネスメールでの「先般」を言い換えた使用例文
先述した通り、「先般」と似た表現はいくつかあります。
「先般」の類語
- 先日
- 過日
「先般」は、主にかしこまったシーンで目上の人に使える表現ですが、使用するのに適切なタイミングや場面は限られます。そのため、状況に応じて別の言葉に言い換えることが大切です。
ここでは、「先般」を言い換えた際の使用例文を紹介します。ビジネスをスムーズに進めていくうえで適切な言い換え表現を知りたい方はご参考ください。
【例文1】先日
「先日」はおよそ2・3日前〜1週間前の間の地点を指す言葉なので、直近であった出来事を示す時に適しています。
また、「先日」は、「先般」よりも柔らかい印象を与える表現として、相手や場面を問わず幅広く活用できるのが特徴です。
ここでは、顧客から自社の新商品についてさまざまな指摘をいただいたことに対して、「先日」を使ってお礼メールを送る際の例文です。
- 参考
- 〇〇様
お世話になっております。
株式会社▢▢の△△と申します。
先日は新商品説明会にご参加いただき、誠にありがとうございました。
製品改良に関する数多くの建設的なご意見をいただいたおかげで、大変有意義な時間を過ごすことができました。
特に耐久性に関するご指摘は、開発チームでも重要課題の一つとして認識しています。
現在、ご提案いただいた改善点を反映するための検証作業を進めております。
改良版が完成でき次第、改めてご説明の機会を設けさせていただけますと幸いです。
ご多忙中恐れ入りますが、引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
【例文2】過日
「過日」は、書き言葉としてビジネス文書やメールなどで使われます。過去を示す期間は2・3日前〜1カ月前ほどと言われており、「先般」より期間は長めです。とはいえ、実際は1カ月くらい前に起きた出来事を指す時に使用する場合が多いです。
また、過日は「先般」と同様に堅い印象を与えるので、取引先や顧客といった目上の人に適しています。
ここでは、取引先に向けて以前からお知らせしていた会社の年末年始の休業期間について再度共有する際の「過日」を用いたビジネスメール例文をご紹介します。
- 参考
- 株式会社〇〇 ▢▢様
いつもお世話になっております。
株式会社▢▢の△△と申します。
過日ご案内しました通り、弊社では以下の日程を年末年始休業とさせていただいております。
<日程>
2024年12月28日(土)~2025年1月5日(日)
※1月6日(月)より通常通り営業いたします。
上記の休業期間中のお問い合わせにつきましては、1月6日(月)以降の対応となります。
ご不便をおかけしますが、ご承知おきいただきますようお願い申し上げます。
「先般」の英語表現をご紹介
「先般」を英語で表現する場合、主に「the other day」や「some time ago」が使われます。
「the other day」は、「先日」「数日前」という意味を持ち、直近の過去を示す時に適した表現です。ビジネスシーンや日常会話の両方で使えるので、使用頻度は高いと言えます。
以下は、「the other day」を使った例文です。
- Thank you for your time the other day.(先般はお時間をいただき、ありがとうございました)
- As we discussed the other day about the project…(先般プロジェクトについて話し合いました通り…)
一方「some time ago」は、「先ほど」「少し前に」という意味で、「the other day」より前の出来事を指し示す際に適した表現です。どのくらい前のことを示せるのかどうかは明確に定められていないものの、数週間くらい前の出来事を指す時に用いられる傾向にあります。
以下は、「some time ago」を使った例文です。
- Regarding the matter we discussed some time ago…(先般協議した件について…)
- I spoke some time ago to a joint session.(先般合同会議で話しました)
どのくらい前の出来事を示したいのかによって、「the other day」「some time ago」を使い分けていきましょう。
「先般」は現在に近い過去について言及する表現
【おさらい】
- 「先般」は「先ほど」「この間」という意味を持ち、およそ1週間~1カ月前の出来事を指す時に使える
- 主にビジネス文書やメールなど書き言葉として使われる
- 取引先や顧客を相手にかしこまった場面に適している
「先般」は、現在に近い過去について言及したい時に使える表現です。堅い印象を与える言葉なので、主にフォーマルな場面で目上の人に使えば、より円滑にコミュニケーションがしやすくなります。
同僚や部下、直属の上司といった親しい相手に使ってしまうと、よそよそしいと思われる可能性があります。そのため、相手によっては「先日」や「以前」など、より柔らかい表現を選びましょう。
また、「先般」はいつ頃の出来事なのかを曖昧にしたい時に便利な言葉です。指し示したい過去の日付がはっきりしている場合は、むやみに「先般」を使わず、具体的な日付を提示するのがおすすめです。
「先般」の正しい使い方を理解して、今後のビジネスに活かしていきましょう。