「身に余るお言葉をいただき」は、主に上司や取引先から褒められた際に感謝の気持ちを伝える表現ですが、使い方に悩む人も多いのではないでしょうか。
本記事では、「身に余るお言葉をいただき」の正しい意味や語源、ビジネスシーンでの使い方、さらに類語表現や英語での言い換えも解説します。
ビジネスの場で褒められたときの適切な返し方を学び、円滑なコミュニケーションをとれるようにしておきましょう。
「身に余るお言葉をいただき」は上司や目上の人に使用して良い

「身に余るお言葉をいただき」は、ビジネスシーンで上司や目上の人に使用して問題のない表現です。
この言葉は、相手からもらった評価や称賛の言葉に対して、「自分の立場や実績以上の言葉」「自分にはもったいない言葉」と謙虚に受け止めながら、感謝の気持ちを表したい際に用いられます。
感謝と謙遜を同時に示すことができる敬語表現のため、むしろ上司や取引先といったフォーマルな関係性の相手に使用するのが適切と言えるでしょう。
ただし、かなり丁寧な謙譲語で格式が高い言葉なので、日常的なやり取りや親しい間柄の相手に対して使用すると、大げさと思われてしまう可能性が高いので注意が必要です。
「身に余るお言葉をいただき」の意味と語源

「身に余るお言葉をいただき」は、自分の能力や立場を大きく超えるような高い評価や称賛を受けた際に、謙虚に感謝の気持ちを伝える表現です。
「身に余る」という言葉には以下のような意味があります。
出典: コトバンク(デジタル大辞泉)「身に余る」(参照 2025-04-07)処遇が自分の身分や業績を超えてよすぎる。過分である。身に過ぎる。
「身」は能力や立場を含めた自分自身を指し、「余る」は超えるという意味です。これに「お言葉」という尊敬語や「いただく」という謙譲語がつくので、「身に余るお言葉をいただき」自体が敬語として成り立つフレーズです。
「身に余る」の語源
江戸時代以前の身分制度に由来すると言われています。高い身分の人から誉め言葉をもらった際に「身分に余る言葉をいただいた」と表現したことが始まりのようです。
現代ではあくまで謙遜をまじえながら相手へ敬意や感謝を示す言葉であり、「自分には評価に見合った立場や実力はありません」と否定する意図は含まれていないので注意しましょう。
「身に余るお言葉をいただき」の使用例

ビジネスにおいて「身に余るお言葉をいただき」は、上司・取引先から褒められた場合や、プレゼン・成果報告の場などで良い評価をもらった際に使うケースが多いです。
下記のように、相手へ感謝を表す言葉や「恐縮です」といった謙遜を表す言葉を付け加えると、「自分の立場や能力以上に評価されて光栄に感じている」といったニュアンスを伝えられます。
- 身に余るお言葉をいただき、大変光栄に存じます。今後もご期待に添えるよう、努力してまいります。
- 身に余るお言葉をいただき、恐縮でございます。ご指摘いただいた点を踏まえ、今後もさらなる改善に努めてまいります。
- 身に余るお言葉をいただき、感謝申し上げます。お客様からのご意見を糧に、一層精進いたします。
また、成果がチーム全体の結果であることを強調したり、今後の意欲を添えたりすることで、謙虚さを保ちながらビジネスパーソンとしての自信や責任感も示せます。
「身に余るお言葉をいただき」以外にもいくつか敬語表現がある

ここでは「身に余るお言葉をいただき」と同様に使える、謙遜の意味を含んだ「褒められたときの敬語での返し方」をご紹介します。
同じ「褒められたときの返し方」でも、表現によって印象が異なります。相手や場面に応じた使い分けが大切です。
ありがたいお言葉
「ありがたいお言葉」は、目上の方や取引先から褒められた際に感謝の気持ちを伝えるやわらかい印象の表現です。
「ありがたいお言葉」には謙遜の意味は含まれていないので、カジュアルな場面や日常シーンでも使いやすい言葉です。もらった評価や称賛に対して過度にへりくだらず、素直に感謝を表したいときに適しています。
目上の人に使う場合は、下記のように前後に敬語表現を入れるようにしましょう。
- ありがたいお言葉をいただき、身の引き締まる思いです。
- 大変ありがたいお言葉、誠に光栄に存じます。
- ありがたいお言葉をいただき、大変恐縮でございます。今後ともご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。
過分なお言葉
「過分なお言葉」は、もったいないほどの高い評価や称賛を受けた際に使う、非常に丁寧かつ謙虚なニュアンスを持つ表現です。
「過分」は「身に過ぎた扱いを受けること」を指す言葉です。「身に余るお言葉をいただき」と同様に、自分を低い立場に置いて謙遜するニュアンスを強調できます。
- 過分なお言葉をいただき、感謝いたします。
- そのように評価していただけるとは、過分なお言葉です。
- 過分なお言葉、恐れ入ります。
気軽なコミュニケーションを求められる状況や関係性の深い相手に使うと、堅苦しい言い方に受け取られて、嫌味となってしまうケースもあります。タイミングに注意しながら、使用するように心がけましょう。
恐悦至極(きょうえつしごく)
「恐悦至極(きょうえつしごく)」は、「恐悦」と「至極」という言葉が組み合わさってできた表現です。
「恐悦」は「恐れながら喜ぶ」、「至極」は「この上なく」という意味があり、相手の厚意や与えられた栄誉に対して謙遜すると同時に、最大限の喜びを感じているというニュアンスを持ちます。
フォーマルな場で重宝され、特に儀礼的な場面や改まったスピーチなどでよく使われる言葉です。
- ご多忙の中、会議にご出席いただき、恐悦至極に存じます。
- 貴重なご意見を賜り、恐悦至極に存じます。
- このような機会をいただき、誠に恐悦至極の思いです。
日常的なやりとりでは堅すぎる印象を与えてしまうので、使用する場面は選ぶようにしましょう。
【注意点】「身に余るお言葉をいただき」は大仰な表現なので適当な場面が限られる

「身に余るお言葉をいただき」は、相手の評価や賛辞に対して「自分にはもったいない」と謙虚に感謝を伝える表現ですが、かしこまった言葉なので使用場面には注意が必要です。
軽々しく使うと、「大仰(大げさ)すぎる」「嫌味っぽい」と思われてしまう恐れがあります。
たとえば、以下のような状況で使用すると、相手に違和感を持たれてしまう可能性が高いです。
【使用を避けたいタイミングの例】
- 通常業務の範囲でのささいな対応や成果を褒められたとき
- 誰の目から見ても妥当な評価を受けたとき
- ビジネスメールの定型文への返答
また、連発してしまうと、自分の能力に自信がない人という印象を与えてしまうかもしれません。
自分の実力を客観視できていないと相手に受け取られた場合、信頼感を損なうおそれもあります。使う場面を見極めて、使用するよう心がけましょう。
ビジネスメールでの「身に余るお言葉をいただき」を言い換えた使用例文

ここでは、ビジネスメールで自然に使いやすい目上の人に対しても使える「身に余るお言葉をいただき」の言い換え表現をご紹介します。
- 恐れ多いことです
- お褒めの言葉をいただき、身の引き締まる思いです
- 身に余る光栄でございます
- 恐悦至極(きょうえつしごく)に存じます
褒められた時の返し方をいくつか覚えて、場面や相手に応じて別の敬語表現に言い換えると、より自然で丁寧な印象を与えられます。
【例文1】「恐れ多いことです」
「恐れ多いことです」は、目上の人や尊敬すべき人物に対して尊敬や謙遜の気持ちを込めながら、相手に感謝や畏敬の念を示す際に使われます。
「恐れ多い」は、「自分にはふさわしくないほどの厚意や言葉に恐縮する」「言葉をかけてくれた目上の人に対してかしこまって敬う」といった意味を持ちます。
そのため、自分の立場や能力を超えた評価をもらった場面で、目上の相手に対して敬意を強調したい場面によく使われる表現です。
ここでは、社内の上司から激励を受けたときのメール例文をご紹介します。
- 参考
- ◯◯部長
お疲れ様です。営業推進部の△△です。
先日はお忙しい中、ミーティングにご参加いただき、ありがとうございました。
また、現在の進捗や対応方法につきまして、温かいねぎらいのお言葉まで頂戴し、大変恐れ多いことです。
いただいた言葉を励みにして、今後ともより一層努力を重ねてまいります。
何卒よろしくお願い申し上げます。
ちなみに、「恐れ多い」は、目上の人や尊敬すべき人物に手間を取らせたことに対するお詫びの気持ちを伝えたいときや、相手からの申し出を遠慮して断りたいときにも使える言葉です。
多様な意味を持つ言葉なので、前後の文脈で何を相手に伝えたいのかを明確にするよう意識しましょう。
【例文2】「お褒めの言葉をいただき、身の引き締まる思いです」
「お褒めの言葉をいただき、身の引き締まる思いです」は、良い評価の言葉を受けた際に、感謝の気持ちや今後の姿勢を示す表現です。
自身の評価を素直に受け止める姿勢と、今後に向けて意欲がある点を同時に表す表現と言えるでしょう。
謙譲のニュアンスがないフレーズなので、日常的なビジネスメールでも使いやすく、身近な上司や同僚への返信としても使用できます。また、前後の文脈を調整すれば、目上の人にも使える言葉です。
ここでは、プロジェクト終了後に上司からねぎらいの言葉を受けた場面での例文をご紹介します。
- 参考
- ◯◯課長
お疲れ様です。マーケティング部の△△です。
先日はプロジェクト完了報告会にご出席いただき、誠にありがとうございました。
また、お褒めの言葉までいただき、身の引き締まる思いです。
この成功は、部長のご助言とチーム全員の尽力があってこそだと感じております。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
【例文3】「身に余る光栄でございます」
「身に余る光栄でございます」は、自分の立場や実績以上に評価された際や、何らかの機会を与えられた際に、謙遜を込めて感謝と喜びの気持ちを伝える表現です。
「光栄」とは「名誉・誇りに思うこと」を意味する言葉です。自分には過ぎた処遇である点を前提としながら感謝と敬意を込められる表現として適しています。
ここでは、自社のサービスを評価してくれた新規の取引先へ感謝を伝えるメール例文をご紹介します。
- 参考
- 株式会社◯◯ ◯◯様
株式会社△△の△△と申します。
このたびは、数あるサービスの中から弊社のサービスをご選定いただき、誠にありがとうございます。
貴社よりご評価を賜り、身に余る光栄でございます。
当サービスに関する資料をお送りいたしますので、ご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。
貴社のご期待に添えますよう、誠心誠意努めてまいります。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
【例文4】「恐悦至極(きょうえつしごく)に存じます」
「恐悦至極(きょうえつしごく)に存じます」は、「この上なくありがたく、大変光栄に思います」という意味を持つ、非常に丁寧で、格式高い印象を与える表現です。
「身に余るお言葉をいただき」と同様に、謙遜しながら感謝と敬意を伝える際に使われますが、よりフォーマルな場やビジネス文書などで用いられることが多い言い回しです。
特に、社外から祝辞や高い評価をもらった際や、受賞・表彰などの特別な機会に使われます。
ここでは、取引先から助言を受けた際のお礼メールの例文をご紹介します。
- 参考
- 株式会社◯◯ ◯◯様
お世話になっております。
株式会社△△の△△でございます。
このたびは、プロジェクトの作業チェック改善案についてご意見を賜り、恐悦至極に存じます。
ご指摘いただいた点を鑑み、進行中のタスクの効率化を検討しましたところ、スムーズにプロジェクトを進行できる見込みとなりました。
今後も、◯◯様のご期待に沿えるよう精進いたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
「身に余るお言葉をいただき」の英語表現をご紹介

「身に余るお言葉をいただき」の英語表現をいくつかご紹介します。
- 注意点
- 英語圏では謙遜しすぎると「自信がない人」とマイナスの印象を与えてしまうケースが多いです。無理に謙遜の気持ちを直訳しようとせずに、感謝の気持ちや光栄に感じている心境をストレートに伝えられるフレーズに言い換えるのが一般的です。
そのことを踏まえ、相手の言葉に対する感謝の気持ちを伝えられる、ビジネスでも使用できるフレーズは以下になります。
- 「身に余るお言葉をいただき」の英語表現
- 「I appreciate your praise and evaluation.」
(あなたからのお褒めの言葉と評価を大変うれしく思います)
▼よりフォーマルな言い方
「I’m deeply honored.」「I’m humbled by your words.」(大変光栄に思います)
▼謙遜の意味を込めた言い方
「You flatter me too much.」(私には過ぎた言葉です)
ただし、「flattered」はお世辞という意味なので、文脈や言い方によっては皮肉のニュアンスを含んでしまいます。状況を見極めて使いましょう。
「身に余るお言葉をいただき」の英語の例文
以下は、「身に余るお言葉をいただき」に近いニュアンスの英語表現の例文です。
- I appreciate your praise and evaluation. I’ll continue to do my best.
(お褒めの言葉とご評価をいただき、大変ありがたく思います。今後も全力を尽くしてまいります。) - I’m truly humbled by your words. I couldn’t have done it without the team’s support.
(身に余るお言葉に光栄です。チームのサポートがなければ成し遂げられなかったことです。) - You flatter me too much, but I truly appreciate your kind words.
(身に余るお言葉ですが、あなたの優しい言葉に心から感謝しています。)
「身に余るお言葉をいただき」は謙遜を通して感謝や尊敬を伝える表現

ビジネスシーンで、適切に敬意と感謝を伝えるために、基本的な意味と使い方を整理しておきましょう。
おさらい
- 「身に余るお言葉をいただき」は、自分には過ぎた評価や称賛を謙虚に受け止め、感謝と敬意を伝える表現
- 目的や文脈に応じていくつか言い換え表現がある
- 謙遜の意味が含まれるかしこまった表現なので、使用タイミングや頻度には注意が必要
「身に余るお言葉をいただき」は、上司や取引先から高い評価を受けた際に使うと、礼儀正しさや誠実さを印象づけることができます。
しかし、状況によっては大げさすぎると違和感を持たれるケースもあります。謙遜しすぎるとかえって失礼になってしまうので、感謝の気持ちをストレートに伝え、さらに今後の努力の意思を伝えるような表現を添えて使用するのがおすすめです。