「せっつく」は、相手に早く行動するよう強く促す意味の言葉ですが、ビジネスでは使い方によって失礼な印象を与えてしまう表現です。
では、相手に急いでほしいときや早く対応してほしいときは、どのような表現が適切なのでしょうか。
この記事では、「せっつく」の意味と語源を解説し、正しい敬語表現や注意点、言い換え、英語表現も紹介します。
相手や状況に応じた言葉遣いを身につけ、ビジネスで活用しましょう。
「せっつく」は上司や目上の人に使用するのはNG

相手に早く行動するよう強く促す意味の「せっつく」は、上司や目上の人に使うのは適切ではありません。
相手の事情を考えずに急がせるニュアンスが含まれている言葉のため、使用する相手によっては失礼な印象を与えてしまう可能性があります。
「せっつく」は、口語的な表現なので、カジュアルな場面での使用に限定されます。同僚や親しい間柄で使う分には問題ありませんが、ビジネス文書や目上の人に対しては避けた方がよいでしょう。
上司や取引先に急ぎの依頼をしたい場合は、「せっつく」を使用せずに、「お急ぎ立てして申し訳ありません」といった正しい敬語表現に言い換える必要があります。
「せっつく」の意味と語源

「せっつく」とは、相手に早く行動してもらうために急かしたり、何度も促したりすることを意味する口語表現です。単に「急がせる」「催促する」と表現するよりも、さらに強く相手に働きかける様子を表しています。
語源は「責付く(せつく)」という漢字表現の言葉で、「責め立てる」「追い詰める」といった意味合いです。とくに漢字の「責」には「責める」という意味があり、相手に責任を果たすよう迫る様子が由来といわれています。
また、「せっつく」は甲州弁にも見られる言葉ですが、現在では方言に限らず全国的に通じる口語です。日常会話の中で「急かす」「催促する」の意味で広く使われています。
正しい敬語表現は「お急ぎ立てする」

上司や取引先など目上の人には「せっつく」ではなく、正しい敬語表現の「お急ぎ立てする」を使用しましょう。
「急ぎ立てる」は、物事を早く行うよう強く促すという意味を持つ言葉ですが、「お~する」という謙譲表現にすれば、丁寧な印象になります。
ただし、「お急ぎ立てする」だけでは、相手に焦りやプレッシャーを与える印象になり、不快な気持ちにさせてしまう場合もあります。
そのため、ビジネスで使用する際は謙遜した表現や謝罪を添え、具体的な納期や理由もあわせて伝えるのが大切です。
具体的な使用例は以下のとおりです。
「迅速にご対応いただきありがとうございます。ご多忙のところ、お急ぎ立てしてしまい申し訳ありません。」
「お急ぎ立てして恐縮ですが、明日が締め切りとなっておりますので、本日中にご確認いただけますでしょうか。」
敬語表現に加えて相手への配慮を示すと、より丁寧な印象で伝えられます。
「せっつく」の言い換え表現を使う際の注意点

「せっつく」は、ビジネスでは原則使用せず、言い換え表現を用いるのが一般的です。しかし、言い換えたとしても伝え方によっては相手にプレッシャーを与えてしまう可能性があります。
目上の人に急ぎの対応をお願いしたいときに失礼な印象を与えないためには、次のポイントを意識するのが大切です。
- 丁寧な言葉遣いとクッション言葉を使う
- 理由や背景を伝える
- 相手の状況に配慮する
ここからは、「せっつく」を言い換えてビジネスで使用する際の注意点について、詳しく解説します。
①丁寧な言葉遣いとクッション言葉を使う
目上の人に早めの対応をお願いする場合は、丁寧な言葉遣いとクッション言葉を使って依頼します。ビジネスでは、相手にお願いをするとき、へりくだった表現を用いるのが基本的なマナーです。
たとえば、「お急がせしてしまい〜」といった丁寧な表現に言い換え、とくにこちらの都合でお願いする際は、「お急がせしてしまい申し訳ありません」と謝罪の気持ちを伝えます。
それに加えて、「お手数をおかけして恐縮ですが」や「ご多用のところ恐れ入りますが」などのクッション言葉を添えるのもおすすめです。
相手に負担をかけていることへの配慮を示せば、丁寧で誠実な印象を与えられます。
②理由や背景を伝える
目上の人に急いでもらうときは、ただ急いでほしいとお願いするだけではなく、理由や背景をあわせて伝えるのが重要です。
たとえば、「クライアントの要望で納期が前倒しになったため」「本日中に資料を提出する必要があるため」など、具体的な理由を説明します。
納期や工程の都合、第三者との関係など、なぜ急いでほしいのかがわかれば、相手も早急な対応の必要性を理解しやすくなるでしょう。
また、「こちらの都合で恐縮ですが」といった一言を添えると、より相手への配慮を示せます。理由や背景を明確かつ丁寧に伝えると、依頼の正当性が伝わり、相手にも前向きに協力してもらいやすいです。
③相手の状況に配慮する
目上の人を急かす際は、相手の状況に配慮するのも大切です。相手のスケジュールや業務の状況など、何も考えずに催促してしまうと、強いプレッシャーを与えてしまうかもしれません。
たとえば、相手が忙しい時期であるとわかっている場合は、配慮の言葉を添えるのがポイントです。「ご多忙の折、急かしてしまい申し訳ありません」と前置きすると、思いやりの気持ちを伝えられます。
また、メールでは送信直前に相手がすでに対応している場合もあるため、行き違いが起こる可能性もあります。
「本メールと行き違いになり、すでにご対応いただいておりましたら何卒ご容赦くださいませ」などの一文を添えると、より丁寧な印象になるでしょう。
ビジネスメールでの「せっつく」を言い換えた使用例文

「せっつく」は口語的で強い印象を与える表現のため、ビジネスメールでは丁寧に言い換えて使用します。
とくに、目上の人に早めの対応をお願いする場面では、配慮を示しながら依頼する表現を選ばなければなりません。状況に応じた言い回しを使えば、相手に失礼な印象を与えず、円滑なコミュニケーションにつながるでしょう。
ここでは、社内向けと社外向けそれぞれのビジネスメールの例文を紹介します。
【例文1】社内向けビジネスメール
社内でプロジェクトを進める際、上司に早めに資料を確認してもらいたい場面があります。
そのような場合は、急いでほしい理由を伝えながら、相手への配慮を示す言い回しを使うのが大切です。
- 参考
- 【例文】
件名:プロジェクトの資料ご確認のお願い
〇〇部長
お疲れ様です。△△です。
現在進めているプロジェクトの資料につきまして、明日の会議で使用を予定しております。
お手数をおかけいたしますが、本日中にご確認いただけますでしょうか。
急かすようで大変申し訳ありませんが、ご確認いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
このように謝罪の言葉を添えると、相手にプレッシャーを与えすぎず、丁寧に対応をお願いするニュアンスになります。
【例文2】社外向けビジネスメール
取引先に契約書の確認を早めにお願いする場合は、明確な理由や具体的な納期を説明し、より丁寧な表現を用いるのが大切です。
とくに社外向けのメールでは、相手に負担をかけていることへの配慮を示す言い回しを選ぶとよいでしょう。
- 参考
- 【例文】
件名:契約書ご確認のお願い
株式会社〇〇
〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社△△の□□です。
先日お送りした契約書につきまして、締め切りが今週の金曜日となっております。
お急ぎ立てして恐縮ではございますが、〇月〇日までにご確認いただけますでしょうか。
ご不明点がございましたら、お気軽にご連絡ください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
このように、急いでほしい事情とあわせて謝意や配慮の言葉を添えると、相手に失礼な印象を与えずに依頼を伝えられます。
「せっつく」と似たビジネス表現

「せっつく」は相手を強く急かすニュアンスがあるため、ビジネスでは丁寧な表現に言い換えるだけでなく、似たような意味を持つ別の表現を使うのもおすすめです。
ここでは、「せっつく」と似た意味合いを持ちながらも、ビジネスシーンで使いやすい丁寧な表現を3つ紹介します。
- 差し迫ってのお願いで恐縮です
- ご用立てしてしまい申し訳ありません
- 重ね重ね恐れ入ります
それぞれのトーンや適した場面も紹介しているので、相手に配慮しながら依頼や催促の気持ちを伝えられる表現として役立ててください。
①差し迫ってのお願いで恐縮です
「差し迫ってのお願いで恐縮です」は、期限や状況が迫っているなかで相手に急ぎの依頼をする際に用いられる表現です。
「差し迫ってのお願いで」は、納期や対応期限が迫っている状況で早急な対応をお願いしたいときに使用します。また「恐縮です」は、相手に負担をかけてしまうことへの申し訳なさや配慮を表す言葉です。
「差し迫ってのお願いで恐縮ですが、明日までに資料をご確認いただけますと幸いです。」
「せっつく」が相手を急かすニュアンスを含むのに対し、「差し迫ってのお願いで恐縮です」は、急ぎでありながらも相手への配慮を示して丁寧に依頼する表現です。相手に不快感を与えにくく、ビジネスシーンでも安心して使用できます。
②ご用立てしてしまい申し訳ありません
「ご用立てしてしまい申し訳ありません」は、急な予定変更や追加の依頼など、相手に負担をかけてしまった場面で使われます。
「ご用立て」は「必要なものを用意してもらう」「都合をつけてもらう」という意味です。そこに「申し訳ありません」と加えれば、こちらの都合で迷惑をかけたことへの誠意ある謝罪を示せます。
「急なお願いでご用立てしてしまい申し訳ありませんが、ご対応いただけますと幸いです。」
「せっつく」は、相手を強く急かすニュアンスを持ちます。対して「ご用立てしてしまい申し訳ありません」は、単なる催促ではなく、手間や対応をお願いしたいときに、相手への配慮や謝意も同時に伝えられる表現です。
③重ね重ね恐れ入ります
「重ね重ね恐れ入ります」は、すでに一度連絡や依頼をしている内容について、再度お願いや確認をする際に用いられる表現です。
「重ね重ね」とは、同じことが繰り返される様子を表す言葉で、連絡や依頼が続いてしまうことへの配慮や謝意を強調する意味があります。
そのため、追加の連絡や再依頼を行う場面で多く使われ、とくにビジネスシーンでは、同じ過ちを繰り返してしまったときや、相手に迷惑をかけた際にも使用します。
「重ね重ね恐れ入りますが、先日お送りした資料についてご確認いただけますでしょうか。」
相手を急かす表現ではなく、依頼や連絡が続く申し訳なさを丁寧に伝える表現のため、初回の依頼では使用しません。
「せっつく」の英語表現をご紹介

英語でも、「せっつく」に近い意味を持ち、ビジネスシーンで使える表現がいくつかあります。
日本語と同様に、単に急かすのではなく、「急がせてしまって申し訳ない」「お手数ですが」という配慮の言葉を添えるのがポイントです。
ここでは、相手への配慮を示しながら丁寧に依頼や催促を伝えたいときに使える英語表現を3つ紹介します。
- Sorry to rush you.
- I apologize for pressing you, but~
- Sorry to bother you again,
それぞれ使用するシチュエーションやトーンが異なるため、状況に応じて使い分けましょう。
①Sorry to rush you.
「Sorry to rush you.」 は、「お急ぎ立てして申し訳ありません」という意味で、「お急ぎ立てして申し訳ありません」と伝えたいときに使用する英語表現です。
主に、同僚や直属の上司など社内の親しい相手や、以前からやり取りがある取引先に適しています。
「rush」は「急がせる」「急ぐ」という意味があり、相手に早めの対応をお願いする際によく使われます。英語では、依頼や催促をする前に「ごめんなさい」という謝罪の「Sorry」を添えて、相手への配慮を示すのが特徴です。
A:「Sorry to rush you, but could you let me know the status of the report?」
(お急ぎ立てして申し訳ありませんが、レポートの進捗状況を教えていただけますでしょうか。
B:「Of course. I will send you an update by this afternoon.」
(承知しました。本日の午後までに進捗をご報告いたします。)
「Sorry to rush you.」単体でも使用できますが、「Sorry to rush you, but~」と「but」の後ろに急いでほしい内容を付け加えると、「お急ぎ立てして申し訳ありませんが、」と要件を伝えられます。
②I apologize for pressing you, but~
「I apologize for pressing you, but~」は、「催促するようで申し訳ありませんが、」という意味で使われる英語表現です。
「apologize」は「謝罪する」「お詫びする」の意味があり、「sorry」よりも丁寧で、ビジネスメールや会話でも使いやすい表現です。また、「pressing you」は「あなたをせっついている」という相手に急かして対応を促す、「せっつく」と同じ意味を持ちます。
A:「I apologize for pressing you, but could you please confirm the schedule?」
(催促するようで申し訳ありませんが、スケジュールのご確認をお願いいたします。)
B:「Certainly. I will review it and get back to you shortly.」
(かしこまりました。確認次第、ご連絡いたします。)
強く急かす表現でも、英語では丁寧な謝罪を先に述べると、相手に配慮した失礼のない表現で催促ができます。
③Sorry to bother you again,
「Sorry to bother you again,」は、「度々恐れ入ります」「何度もご連絡して申し訳ありません」という意味で使われる英語表現です。
「bother you」は「あなたの邪魔をする」「手間をかける」の意味があり、「何度も」「再び」の意味を持つ「again」を付け加えると、「何度も邪魔してすみません」という謝意と配慮を示せます。
A:「Sorry to bother you again, but I just wanted to follow up on my previous message.」
(度々恐れ入りますが、先日のメッセージについて確認したくご連絡いたしました。)
B:「Thanks for the reminder. I’ll respond by the end of today.」
(リマインドありがとうございます。本日中に返信いたします。)
「邪魔して申し訳ない」と前置きすると、丁寧な印象になります。メールや会話の冒頭で多く使われていて、上司や取引先など目上の人にも使える表現です。
ただし、「Sorry to bother you again,」自体は、そこまでフォーマル度が高い表現ではありません。そのため、社内外を問わず、以前から関わりのある人に対して使用するのが無難です。
ビジネスで「せっつく」を使うのは不適切なので正しい敬語を使おう

相手に早く確認をもらいたい・急いで対応してほしいとき、「せっつく」は強く急かす意味を持つため、上司や目上の人に対しては不適切な表現です。
「せっつく」を使用したい場合は、「お急ぎ立てする」といった正しい敬語表現や、丁寧な表現への言い換えが適切です。急いでほしい具体的な理由や納期、クッション言葉、相手に配慮した言葉を添えると、より丁寧な印象になります。
ビジネスシーンでは、相手や状況に応じて表現を選ぶのが大切です。ただ単に要件を伝えるだけではなく、相手への配慮や丁寧な言葉遣いを意識すれば、円滑なコミュニケーションにつながるでしょう。
