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中卒から弁護士を目指すには何をしたら良い?
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中卒から弁護士を目指すメリットやデメリットはある?
弁護士は高学歴の人が目指す職業というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実は中卒からでも目指せる職業です。
今回は弁護士を目指す中卒者に向けて、以下の内容を解説していきます。
- 弁護士になるための基本条件
- 弁護士になったあとのキャリアパス
- 弁護士に向いている人・向いていない人の特徴
- 中卒で弁護士になるメリット・デメリット
中卒で司法試験に合格するための対策方法もあわせてご紹介します。
本記事を参考に資格取得・就職活動をスムーズに進めていきましょう。
中卒で弁護士になることはできる
中卒から弁護士を目指すことはできます。
弁護士になるには、大前提として「司法試験」に合格する必要があります。
司法試験の受験資格に学歴は設けられていないので中卒者でも受験は可能ですが、他に条件が定められているため、まずは受験資格の取得を目指しましょう。
中卒から司法試験を受験するルートとしては、以下の2つがあります。
- 司法試験予備試験に合格後、司法試験を受ける
- 法科大学院に入学して修了後、司法試験を受ける
法科大学院(ロースクール)に入学するには、大卒程度の学力があることが求められ、「大学を卒業している、もしくは卒業見込みである」を出願条件に定めている法科大学院が多いです。
中卒の場合、高卒認定を取得してから大学へ入学し卒業するという手がありますが、膨大な時間がかかるため、あまり現実的ではありません。
中には大学を卒業していなくても、「学力が大卒と同レベルである」と証明できれば入学が可能な法科大学院も存在します。しかし、各法科大学院の資格審査で受験資格があると認められないと受験ができないため、こちらもハードルは高めです。
一方、司法試験予備試験を受けるルートであれば、学歴や年齢などの受験資格が設けられていないので、中卒者もすぐに受験できます。
また、最近は試験の難易度が高い予備試験合格者を優先的に採用する法律事務所も増えており、就職・転職の際に有利に働く可能性があります。
そのため、中卒から弁護士を目指すのであれば、「司法試験予備試験に合格して司法試験を受験するルート」を選ぶと良いでしょう。
弁護士になる基本条件
弁護士になる条件は、学歴を問わず以下の通りです。
- 法科大学院で所定のカリキュラムを修了する、もしくは司法試験予備試験に合格する
- 司法試験に合格する
上記の要件をすべて満たせば、弁護士として活躍できるようになります。
まずは先述の通り、司法試験を受けるための条件を満たさなければなりません。
法科大学院には、法律を学んだことがない人を対象とした3年間の「法学未修者コース」と、法律に関する基礎知識をすでに身につけている人を対象とした2年間の「法学既修者コース」があります。いずれかのカリキュラムを修了し、「修了見込み」となれば司法試験の受験が可能です。
一方、司法試験予備試験を受けるコースの場合は、予備試験に合格できれば司法試験の受験資格を得られます。法科大学院に入学する準備期間や学費などが必要ないため、スムーズに予備試験に合格すると、中卒から最短で弁護士になれるルートです。
ただし、予備試験に合格するのは簡単ではありません。予備試験の合格率は、2022年度は3.58%と低く、試験の難易度はかなり高いです。
とは言え、予備試験合格者の司法試験の合格率は、2023年度は92.6%と非常に高いです。予備試験さえ突破できれば、本試験への合格は十分に目指せるでしょう。
司法試験の合格後は、法律実務に関する知識と実技を学ぶ「司法修習」を1年間受ける必要があります。
そして、司法修習を終えてから「司法修習生考試(いわゆる二回試験)」に合格できれば、晴れて弁護士になることができるのです。
日本弁護士連合会「弁護士等の実勢_司法試験合格者の状況」(参照 2024-09-02)
中卒で弁護士になるのに必要な予備試験合格者の学歴内訳
中卒で弁護士になるには、予備試験に合格するのが最短ルートです。
まずは予備試験の合格者数と合格率を見ていきましょう。
令和5年度の司法試験予備試験の合格者の学歴内訳は、以下の通りです。
学歴 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
大学卒業 | 5,196人 | 122人 | 2.35% |
大学在学中 | 4,015人 | 288人 | 7.17% |
大学中退 | 299人 | 3人 | 1.00% |
法科大学院修了 | 1,321人 | 22人 | 1.67% |
法科大学院在学中 | 517人 | 21人 | 4.06% |
法科大学院中退 | 290人 | 1人 | 0.35% |
法科大学院以外の大学院修了 | 960人 | 13人 | 1.35% |
法科大学院以外の大学院在学中 | 52人 | 2人 | 3.85% |
法科大学院以外の大学院中退 | 116人 | 2人 | 1.72% |
短期大学卒業 | 40人 | 0人 | 0% |
短期大学在学中 | 2人 | 0人 | 0% |
短期大学中退 | 5人 | 0人 | 0% |
高校卒業 | 287人 | 3人 | 1.05% |
高校在学中 | 32人 | 1人 | 3.13% |
高校中退 | 38人 | 0人 | 0% |
その他 | 202人 | 1人 | 0.50% |
法務省「令和5年司法試験予備試験」(参照 2024-09-02)
大学在学中の合格率が7.17%ともっとも高いものの、いずれの学歴でも合格率は10%未満です。
ただし、中卒者をはじめ、高卒者や大学中退者、社会人なども合格している実績があるため、努力すれば合格できる可能性はあると言えます。
中卒で弁護士になる方法と手順
ここからは、中卒で弁護士になる方法と手順についてさらに詳しく解説していきます。
先ほどご紹介した「法科大学院に入学するルート」は大卒程度の学力が必要となるので、今回は中卒から目指しやすい「司法試験予備試験に合格するルート」を解説していきます。
- 司法試験予備試験を受験する
- 司法試験本試験を受験する
- 1年間の司法修習(研修)を受ける
各手順の受験条件や試験の内容を確認していきましょう。
中卒で弁護士になる手順①司法試験予備試験を受験する
まずは、司法試験の受験資格を得るために、司法試験予備試験の合格を目指します。
予備試験は「法科大学院修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する」という試験です。
試験科目は、「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」の3つで、短答式試験に合格すればその年度の論文式試験、論文式試験に合格すればその年度の口述試験を受けられるようになります。
科目が多く試験内容の難易度も非常に高いので、しっかり勉強時間をとって対策を行いましょう。
短答式試験 | 論文式試験 | 口述試験 | |
---|---|---|---|
実施時期・試験期間 | 7月中旬(1日のみ) | 9月上旬(2日間) | 1月下旬(2日間) |
科目 | ▼法律基本科目 憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法 ▼一般教養科目 人文科学、社会科学、自然科学、英語 | ▼法律基本科目 憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法 ▼法律実務基礎科目 民事、刑事 ▼選択科目 ※以下より1科目を選択 倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際公法、国際私法 | ▼法律実務基礎科目 民事実務、刑事実務 |
出題形式 | マークシート形式 | 文章での記述形式 | 口頭試問形式 |
合格基準 | 270点満点のうち6割強程度の得点率をクリアしている | 500点満点のうち5割強程度の得点率をクリアしている | 126点満点のうち合計119点以上をクリアしている |
合格率(令和5年の場合) | 20.01% | 19.01% | 98.36% |
なお、予備試験は「超難関」で、本試験である司法試験よりも難易度が高いとも言われています。
そして、司法試験の合格率を見ると、法科大学院ルートを選んだ人よりも予備試験ルートを選んだ人の方が高いという傾向にあります。
予備試験は司法試験と似たつくりの試験なので、予備試験に合格できれば特別な対策をしなくても自然と司法試験にも合格できる人が多いです。
法務省「令和5年司法試験予備試験」(参照 2024-09-02)
法務省「令和6年司法試験予備試験の実施について」(参照 2024-09-02)
中卒で弁護士になる手順②司法試験本試験を受験する
予備試験に合格したら、いよいよ司法試験の本試験を受験します。
なお、司法試験の受験には期限があり、受験資格を取得から5年が経過すると失効してしまうので注意が必要です。
また、受験できるのは「受験資格の取得後5年以内に5回まで」という条件も設けられているため、できるだけ早期の受験・合格を目指しましょう。
司法試験では、短答式と論文式の筆記試験が行われます。それぞれの試験内容は以下の通りです。
短答式試験 | 論文式試験 | |
---|---|---|
実施時期・試験期間 | 7月中旬(1日のみ) | 7月上旬(3日間) |
科目 | 憲法民法刑法 | 公法系:憲法・行政法 民事系:民法・商法・民事訴訟法 刑事系:刑法・刑事訴訟法 上記に加え、各自で選択科目の中から1つ選ぶ 倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際公法・国際私法 |
出題形式 | マークシート形式 | 文章での記述形式 |
合格基準 | ・すべての科目で満点の40%以上の得点率をクリアしている ・3科目合計得点がその年の合格最低点をクリアしている。 | ・すべての科目で満点の25%以上の得点率をクリアしている |
合格率(令和5年の場合) | 80.17% | 56.56% |
試験日程は論文式試験の方が先ですが、論文式試験の答案の採点は、短答式試験の合格者に対してのみ行われるという決まりになっています。
ちなみに、令和5年度の司法試験の合格率は45.3%です。予備試験に比べて合格率はかなり高いですが、それでも難関の試験である点は変わりません。
確実に合格を目指すために、しっかり勉強して対策することが大切です。
法務省「令和5年司法試験の採点結果」(参照 2024-09-02)
中卒で弁護士になる手順③1年間の司法修習(研修)を受ける
弁護士になるには、司法試験に合格してから、1年間にわたる司法修習(研修)を受ける必要があります。
司法修習(研修)とは、弁護士の資格を得るための法曹教育制度で、法律に関する実務的な知識とスキルを学ぶことを目的としています。
内容は、主に「実務修習」と「集合修習」があり、実務修習は全国各地の裁判所・検察庁・弁護士会、集合修習は司法研修所で行われます。
司法修習を受ける際は、兼業や副業が原則として禁止されており、すでに仕事を得ている場合は退職や休職などの対応が必要です。
司法試験合格後、いつまでに司法修習を受けなければならないかは定められていないので、好きなタイミングで受講できます。勤務先とも相談したうえで、司法修習を受けるタイミングを決定しましょう。
兼業や副業ができない代わりに、司法修習生には裁判所から修習給付金として月額13万5,000円が支給されます。また、住居給付金として3万5,000円、引越しをする場合は移転給付金の支給が行われます。最高裁判所からの許可を得ればアルバイトは可能です。
司法修習を終えたら、最後に司法修習生考試(二回試験)を受けます。
二回試験は「民事弁護」「刑事弁護」「民事裁判」「刑事裁判」「検察」の5科目があり、試験は起案形式で行われます。各科目の試験時間は7時間半に及び、合計5日間にわたって行われる長丁場の試験です。
難易度は決して低くないものの、合格率は98~99%ほどと高いです。しかし、例年5日間連続で行われていて、高い集中力と体調管理も求められます。
万が一、二回試験に落ちてしまうと翌年度まで再受験ができず、たとえ弁護士としての就職先が決まっていても内定取り消しとなってしまいます。
中卒で弁護士になるための予備試験・司法試験の対策方法
中卒から弁護士になるには、難関の予備試験と司法試験に合格する必要があります。
予備試験・司法試験ともにそれぞれの科目で合格基準が設けられており、すべての科目において基準を満たさなければ合格することはできません。
特に大学の法学部や法科大学院で法律の勉強をした経験がない中卒者は、何から勉強すればいいか迷ってしまう人も多いです。
ここでは、中卒で予備試験・司法試験に合格するための対策方法について解説します。
数年かけて勉強する人も多いですが、あらかじめいつまでに合格するかという目標を決め、試験日から逆算して勉強のスケジュールを立てていきましょう。
試験に必要な知識や解法をインプットする
すべての科目で合格基準を満たすには、膨大な時間をかけて、法律に関する知識や考え方を身につける必要があります。しかし、初めて予備試験・司法試験の勉強をする人の場合、知識をすぐにインプットするのは不可能です。
そのため、いきなり出題範囲の知識をすべて暗記しようとするのではなく、段階を踏んで基礎的な内容からインプットすることが大切です。
下記の3つのポイントを押さえてみてください。
- 基礎を押さえてから徐々に詳細な知識をインプットする
- 判例と照らし合わせながら条文を読み込む
- 論文答案の書き方を押さえておく
まずは各科目のテキストを読み、基礎知識・前提知識からインプットしていきます。基礎の内容がだいたい固まってきたら、さらに細かい部分や応用の知識を徐々にインプットしていくことで、効率的に勉強を進められるようになります。
テキストもいきなり難解なものは選ばず、基礎知識だけをまとめた簡単な内容のものから選ぶのがポイントです。加えて、法律は日々改正されているので、必ず最新版のテキストを選ぶようにしましょう。
そして、法律は条文と判例(過去の裁判の先例)と紐づけながら覚えることが重要です。司法試験の問題では、根拠となる適切な条文を用いながら解答しなければならず、ただ条文内容を丸暗記しただけの知識では太刀打ちできません。
どのような事例で該当する条文を用いた法律的判断が下されたかを理解しながら覚えるようにすると、知識をさらに深められます。この際、条文の中で知らない法律用語が出てきたら、必ず疑問を解消しながらインプットするようにしてください。
また、司法試験での配点が大きい論文式試験は、知識があるだけでは正しい解答ができない試験です。論理的な文章が書けるように、早い段階から論文答案の書き方についてもリサーチしておくことをおすすめします。
独学で勉強する場合は、早い段階からの情報収集も欠かせません。必要な情報をインターネットで収集したり、受験者同士の集まりに参加して情報交換したりするなどして、試験に関する情報を入手しておきましょう。
過去の問題演習を繰り返す
知識をある程度インプットできたら、過去の問題演習を繰り返し解いて知識を定着させ、答案の書き方も身につけていきます。
法務省のホームページに過去の予備試験や司法試験の問題が掲載されているので、活用してみてください。
過去問を繰り返し解くことで、試験の出題傾向や自分の苦手分野の把握ができます。過去問でつまずきやすい分野を把握できたら、テキストに戻ってその分野を重点的に覚え直していきましょう。
また、知識の定着と答案の書き方が身についてきたら、実際の試験と同じ時間配分で問題を解くというように、試験本番を想定してトレーニングを行うのも重要です。
予備試験と司法試験は共通して「短答式試験」と「論文式試験」があります。それぞれ、下記のような対策をしながら過去問を活用してみてください。
短答式試験の対策
短答式試験は複数の選択肢から答えを選ぶマークシート方式で、知識がしっかり定着していれば解ける問題がほとんどです。記述の正誤を問われるため、内容をなんとなく覚えておくのではなく、正確な法律知識を備えているのかどうかが問われます。
短答式試験の対策としては、とにかく基礎知識のインプットを行い、学習した分野の過去問を繰り返し解いて知識を定着させることが大切です。
また、短答式試験は過去問を解くだけでなく、違う事例の場合はどうなのかといった周辺知識を確認しながら、知識の幅を広げていくのもおすすめです。
論部式試験の対策
論文式試験は法律の知識が定着していることに加えて、答案の構成力も問われます。過去の論文式試験の再現答案や論述例を繰り返し読んで、論文の正しい型やルール、答案の書き方も押さえましょう。
司法試験の論文式試験では「法的三段論法」という論文構造での解答が求められます。あらゆる判例や問題に触れながら、基本の論文構造に沿って時間内で論文を書き上げるトレーニングを行うことをおすすめします。
また、論文は自己採点が難しいため、答案は必ず法律のプロである第三者に添削してもらいましょう。
予備校や通信講座を利用する
弁護士を目指す中卒者の中には独学で勉強をしようとする人もいますが、法律の基礎知識がまったくない状態で一人の力で予備試験や司法試験に合格するのはかなり厳しいです。
先述した通り、予備試験・司法試験に合格するには、試験で必要な知識を効率的にインプットすることが大切なものの、知識がないとどの部分が重要なのかを判断できず、正しい方法で勉強を進められません。
勉強のペース配分を考えるのも難しく、闇雲に勉強しても挫折してしまう可能性が高いです。また、現在の自分の立ち位置や勉強の成果が把握しづらく、次第にモチベーションが低下してしまうおそれもあります。
独学での勉強が不安な場合は、予備校や通信講座を利用するのが有効です。
予備校や通信講座には法律を学んだことがない人向けの基礎講座もあり、イチから勉強方法を学べるため、中卒者も効率的に勉強できるようになります。
カリキュラムの中でスムーズに知識をインプットができるようにうながしてくれますし、各科目のアプローチの仕方も具体的に教えてくれます。1人では対策しにくい論文式試験の答案の書き方についてもプロの講師がアドバイスをくれるので、答案のクオリティを向上させやすいのもメリットです。
予備校や通信講座を選ぶ際は、費用のほかに以下のようなポイントにも注目してみましょう。
- 司法試験の合格実績があるか
- 学習スタイル(通学・オンライン講義など)
- カリキュラムの内容
- 講師の質
- 入学から試験合格までのサポート体制が充実しているか
中卒で弁護士になったあとのキャリアパス
難関国家資格が必要な弁護士は専門性が高い職業なので、一度資格を取得すれば生涯にわたって活躍できます。
法律家としてさまざまな場所で活躍でき、就職・転職にも困らないでしょう。
ここでは、中卒で弁護士になったあとの代表的なキャリアパスを3つご紹介します。
- 法律事務所で働く
- インハウスローヤー(企業内弁護士)として働く
- 独立して法律事務所を開業する
どのような選択肢があるのかを理解して、自分の目指したいキャリアパスを明確にしてみてください。
法律事務所で働く
弁護士の就職先としてもっともオーソドックスなのが法律事務所です。実際、多くの司法試験合格者は法律事務所に勤務して、弁護士として活躍しています。
法律事務所での主な業務内容は、クライアントから依頼を受けて法的なトラブルを解決することです。
離婚問題や交通事故など当事者間のトラブルを扱う「一般民事」、刑事告訴や示談交渉などの場面において被疑者や被告人の弁護を担当する「刑事事件」、企業が健全に企業活動を行うためのリーガルチェックや法的支援を行う「一般企業法務」など、法律事務所の弁護士が扱う業務はさまざまです。
法律事務所によって規模も扱う案件も異なります。強みとする分野を極めてより専門的な案件を担当できる場合もあるので、自分のキャリアを考えるうえで法律事務所選びは非常に重要と言えます。
大きく分けると以下のような法律事務所があります。
一般法律事務所 | 一般の顧客からの依頼が主となるいわゆる「街弁」と言われている法律事務所です。最も事務所数が多いですが、規模や扱う案件は事務所によって大きく異なるので、自分の考えや特化したい分野にマッチした事務所を選びましょう。 |
企業法務系法律事務所 | 企業法務を専門としている法律事務所です。事務所によっては金融法務、労務問題、知財財産、倒産手続きなど、特定の分野に特化している場合もあり、ビジネス関連の案件に強い弁護士を目指すのにうってつけです。 |
外資系・渉外法律事務所 | 外資系企業の法律事務所の傘下にある事務所や、国際的な案件に対応している事務所を指します。外国語を使う機会も多く、将来的には海外で弁護士として働きたい人にもおすすめです。 |
法律事務所では「アソシエイト」から始まり、実績を積んで評価されると「シニアアソシエイト」「ジュニアパートナー」「パートナー」といった肩書にキャリアアップできます。
また、法律事務所で勤務する弁護士は年収が高い傾向にあるのがメリットです。1年目の平均年収は550万円程度が相場ですが、5年目ごろには平均年収1,100万円程度が相場と大幅に上がります。
大手の法律事務所ほど給与水準が高いので、年収アップを目指すなら、できるだけ大手の法律事務所への就職を視野に入れましょう。
インハウスローヤー(企業内弁護士)として働く
一般企業や公益法人などの社員として法務業務を行う「インハウスローヤー(企業内弁護士)」を目指す道もあります。
近年は企業のコンプライアンス意識の向上や内部統制の強化、グローバル化といった影響で、インハウスローヤーの採用に積極的な企業が増えてきて、ますます需要が高まっています。
インハウスローヤーの業務内容は、一般企業法務のほかに、契約書の作成・審査、株主総会対応、社内規定の作成・管理、子会社管理、業法対応、セミナーの開催などです。
ビジネスに特化した法務を扱うので、勤務先の業種によっては業界に特化した専門的な知識が必要になるケースもあります。また、外資系企業の場合は、高度な語学力が求められることも珍しくありません。
なお、似た言葉に「顧問弁護士」がありますが、顧問弁護士は法律事務所の所属であるのに対し、インハウスローヤーは特定の企業に所属します。そのため、顧問弁護士はあくまで他法人の立場で契約範囲内の業務を行うものの、インハウスローヤーは「自社の社員」として法務業務以外の作業を担当するケースもあるのです。
そして、インハウスローヤーは社内での調整業務も行うので、ある程度規則的なスケジュールに沿って業務を行うのが一般的です。法律事務所のように突発的に案件が発生することは少なく、法律事務所に比べて残業も少ない傾向にあります。
ただし、株主総会やセミナー開催時期の前後は業務量が増えるため、時期によって業務量にだいぶ波があるのが特徴と言えるでしょう。
インハウスローヤーの平均年収は企業の規模や経験年数などによって異なりますが、750万円~1,000万円程度です。平均年収1,000万円を超えるインハウスローヤーもいるため、就職先の企業次第で高収入も狙えます。
独立して法律事務所を開業する
弁護士として実績や経験を積んだら、独立して法律事務所を立ち上げるという道もあります。実際に独立して個人で法律事務所を開業している弁護士も多く存在しており、決して珍しくないキャリアパスです。
独立は自由に働き方を決められるのがメリットです。
法律事務所やインハウスローヤーは、就職先によって仕事内容や業務量、働き方が決まっていますが、独立すれば仕事内容も業務量も働く時間も、すべて自分で決められます。
仕事の裁量権が大きくなるため、自分が得意とする分野や報酬が高い案件だけを扱ったり、プライベートを重視した働き方もできたりします。定年退職という概念もないので、長期的に弁護士として活躍可能です。
また、成果報酬型の案件が多いため、大きな案件を多く扱うことができれば、大幅な年収アップも見込めます。独立した弁護士の過半数は年収1,000万円を超えており、中には1億円を超える人もいるようです。
ただし、独立初期は特に経営が安定しにくく、案件を受注するための営業活動や資金のやりくり、法務業務以外の事務作業もしなければならないので、法律業務だけに集中できない点はデメリットです。
都市部の法律事務所はすでに飽和状態にあるとも言われており、事務所を開けば勝手に依頼が舞い込むわけではありません。専門性を磨き、積極的に顧客を確保できるように人脈づくりや集客に力を入れる必要もあります。
独立して法律事務所を立ち上げるのであれば、あらかじめ十分な準備をしたうえで実行に移しましょう。
中卒で弁護士に向いている人・向いていない人
弁護士は専門性の高い職業ゆえに、人によって向き・不向きがはっきりと分かれます。
精神的にハードな仕事なため、弁護士の業務内容や働き方を理解しないまま就職してしまうと、仕事を続けられなくなってしまう可能性もあります。そして、そもそも弁護士になるまでに膨大な時間を費やす必要があるので、弁護士になってから「自分は向いていなかった」と気づいてしまうと、取り返しがつきません。
弁護士を目指す前に、まずは自分が弁護士としての適性があるかどうかをチェックしましょう。
ここでは、弁護士に向いている人・向いていない人の特徴をそれぞれ3つずつご紹介するので、参考にしてみてください。
弁護士に向いている人 | 弁護士に向いていない人 |
---|---|
人の役に立ちたいという気持ちがある人 | コミュニケーション能力が低い人 |
柔軟な考え方や駆け引きができる人 | ストレスに弱い人 |
正義感と責任感がある人 | ワークライフバランスを重視する人 |
中卒で弁護士になるのに向いている人の特徴
弁護士になるのに向いている人の特徴は、以下の3つです。
- 人の役に立ちたいという気持ちがある人
- 柔軟な考え方ができる人
- 正義感と責任感がある人
弁護士はクライアントに寄り添って法的支援を行う職業です。
弁護士の仕事はクライアントの話に耳を傾けることから始まります。クライアントの立場に立って、問題を解決に導くため、相手に対して常に誠実で「相手の役に立ちたい・助けたい」という気持ちがある人は、弁護士に向いているでしょう。
このような気持ちを持ってクライアントの話を聞くと、有力な情報を引き出したり、クライアントに信頼されてリピーターを得たりすることにもつながります。
また、法廷に立つ弁護士は、検察官や相手側の弁護士と論争したり、裁判官にとって参考になる情報を提示したりします。裁判で勝つには、論理的思考とコミュニケーション能力が必要不可欠です。
時には、裁判や調停に向けて事前に戦略を練っていたとしても、相手の出方次第で想定とは異なる展開になるケースもあります。いかなる場合でも、落ち着いて状況を判断し、柔軟に駆け引きができる人は弁護士として活躍できる可能性が高いです。
そして、何より弁護士には正義感と責任感が欠かせません。依頼内容を達成するためには客観的な立場も忘れずに物事を捉え、最後まで投げださずに強い責任感を持って仕事をやり遂げる必要があります。
中卒で弁護士になるのに向いていない人の特徴
弁護士になるのに向いていない人の特徴は、以下の3つです。
- コミュニケーション能力が低い人
- ストレスに弱い人
- ワークライフバランスを重視する人
弁護士は、言葉を使って相手から話を聞き出したり、説得したり、議論したりします。そのため、コミュニケーション能力は非常に重要です。
コミュニケーション能力が低い人は、クライアントや裁判官、検察官、相手側の弁護士に対して自分の意見を正確に伝えることが難しくなります。裁判や調停においても有利な立場を獲得しづらく、クライアントの依頼を果たせなくなる可能性が高いです。
また、弁護士の仕事は非常にハードで、ストレスがかかりやすいです。検察官や相手側の弁護士と論争するだけでなく、大きなトラブルを抱えたクライアントを相手にするので、時にはクライアントから非難されることもあります。
それでも弁護士はクライアントに寄り添って依頼内容を完遂する責任を背負わなければなりません。業務上の精神的負担が大きいことから、ストレスに弱い人や忍耐力がない人は弁護士に不向きと言えます。
さらに、弁護士は長時間の残業が多くなることも珍しくありません。時には人の人生にかかわる重要な依頼を受けるケースもあるため、時間を問わず動かざるを得ない場合もあります。
弁護士は年収が高い職業ですが、残業も非常に多いので、結果として「業務時間の割に年収が低い」と感じている人もいます。ワークライフバランスを重視する人にとっては、苦痛に感じることが多い職業と言えるでしょう。
中卒で弁護士になるメリット・デメリット
中卒で弁護士になるメリット・デメリットを解説します。
弁護士は学歴に関係なく目指せる職業ですが、資格試験の難易度が非常に高く、実際に仕事に就けるまでに膨大な時間がかかるので、目指すかどうか迷っている方も多いのではないでしょうか。
就職・転職で失敗しないためにも、弁護士になるまでのイメージと、なったあとのギャップをできるだけ埋めておくことが大切です。
これからご紹介するメリット・デメリットを、弁護士を目指すかどうかの判断材料にお役立てください。
中卒で弁護士になるメリット | 中卒で弁護士になるデメリット |
---|---|
中卒者の平均年収を大きく超える年収を得られる | 資格取得や職を得るまでに時間とお金がかかる |
働き方によっては定年がない | プライベートの時間がほとんどない |
社会的地位・信用度が高い | ストレスがかかりやすい |
中卒で弁護士になるメリットは3つ
中卒で弁護士になるメリットは、以下の3つです。
- 中卒者の平均年収を大きく超える年収を得られる
- 働き方によっては定年がない
- 社会的地位・信用度が高い
弁護士の平均年収は一般的な日本人の平均年収に比べて高い傾向にあります。
「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、弁護士の平均年収は約1,121万円です。
一方で、平成18年に厚生労働省が行った調査データによると、中卒者の平均月収は男性が約28万円、女性が約17万円という結果が出ており、「(男性中卒者の平均年収+女性中卒者の平均年収)×12カ月」で計算すると、中卒者全体の平均年収は約270万円となります。
そのため、中卒から弁護士になった場合、同じ学歴の人と比べて大幅に高年収を実現できる可能性が高いです。
独立する人も多い職業なので、自分次第でどんどん収入アップを目指せる点も、弁護士として働く上でメリットと言えるでしょう。
弁護士は法律事務所に所属したり独立したりして働いている場合、定年退職制度がないのも特徴です。インハウスローヤーは企業によって定年があるケースもありますが、基本的に弁護士は何歳になっても働くことができます。
実際、70歳や80歳を超えても現役の弁護士として活躍している人もいるので、生涯弁護士として働き続けることも不可能ではありません。定年による引退がなく、生涯にわたって安定した生活を送りやすい点も、中卒から弁護士として働く大きなメリットです。
そして、弁護士は難関国家資格を持つ専門性が高い職業なので、社会的地位や信用度が高い職業です。
就職や転職に困らないだけでなく、失業リスクが低く銀行からの融資を好条件で受けやすいといった利点も存在します。社会的地位や信用度があると、私生活においても有利になる機会が多く、中卒で安定した生活ができる仕事がしたい人にとっては受けられるメリットが大きいと言えます。
職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「弁護士」(参照 2024-09-02)
平成18年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況「学歴別にみた賃金」(参照 2024-09-02)
中卒で弁護士になるデメリットは3つ
中卒で弁護士になるデメリットは、以下の3つです。
- 資格取得や職を得るまでに時間とお金がかかる
- プライベートの時間がほとんどない
- ストレスがかかりやすい
中卒から弁護士になるには、難関の予備試験と司法試験に合格しなければなりません。
大学や大学院で法律の勉強をした経験がない中卒者が司法試験に合格するには、数年単位の膨大な勉強時間をかけることになります。
勉強に専念するために仕事を辞めたり、勤務時間を短くしたりといった手段を取る人も多く、その場合は生活費の確保も必要です。
司法試験合格後も1年に及ぶ司法修習を受けなくてはならないので、弁護士になるまでに時間やお金がかかる点は、最大のデメリットと言えるでしょう。
また、弁護士は労働時間が長い傾向にあり、深夜や休日に働くケースも珍しくありません。そのため、プライベートの時間を確保しづらく、ワークライフバランスが実現しづらい職業でもあります。年収が高くても、労働時間の割に合わないと感じる人もいます。
そして、職業柄、多大なトラブルや悩みを抱えた人と接する機会が多いことから、クライアントの負のオーラを浴びて、ストレスがかかりやすい点もデメリットです。仕事内容によってはクライアントの人生を大きく左右するため、プレッシャーもかかります。
こうした点がストレスとなり、精神的に病んでしまう人も少なくありません。
弁護士はやりがいがある一方で、ハードな職業である点は事実です。そのため、自分の人生で何を重視したいのかを明確にしたうえで、弁護士を目指すかどうかを検討することをおすすめします。
弁護士以外で転職を検討するならナイト系がおすすめ
弁護士は中卒から目指せる職業ですが、資格試験に合格するのが非常に難しく、取得するまでには多大な時間がかかります。
資格取得後も司法修習を受け、さらに二回試験にも合格しなければ弁護士として生計を立てることはできないので、すぐに転職したい方や受験勉強をする時間がない方にはおすすめできません。
試験勉強の必要がなく、事前に専門性の高いスキルや知識を身につけなくても活躍できるチャンスがある業界で働くなら、ナイト系も検討してみてください。
ナイト系は18歳以上(高校生不可)であれば、学歴・経験に関係なく応募できる求人が豊富に掲載されています。
実際に中卒でナイト系に転職して、すぐに重要なポジションを任されているスタッフも多いです。
さらに、実力重視の業界なので、未経験からのスタートでも成果を出せればスピード昇給・昇格を目指せます。頑張り次第で年収1,000万円以上の高収入も実現可能です。
ナイト系は店舗スタッフや送迎ドライバー、Web系スタッフなどさまざまな職種があり、自分に合った仕事を見つけやすいのも魅力なので、転職先の選択肢としてナイト系も視野に入れてみてください。
中卒で弁護士になるためのおさらい
最後に、中卒者が弁護士になるためのポイントをまとめました。
- ポイント
- 【中卒で弁護士になる方法】
・司法試験予備試験を受験する
・司法試験本試験を受験する
・1年間の司法修習(研修)を受ける
【弁護士に向いている人の特徴】
・人の役に立ちたいという気持ちがある人
・柔軟な考え方や駆け引きができる人
・正義感と責任感がある人
【中卒から弁護士になるメリット】
・中卒者の平均年収を大きく超える年収を得られる
・働き方によっては定年がない
・社会的地位・信用度が高い
弁護士は学歴に関係なく目指せる職業ですが、司法試験の難易度が高く、なるまでの道のりはかなり長いです。
しかし、一度弁護士の資格を取得すれば長く活躍できるほか、年収1,000万円以上の高収入も目指しやすいので、安定した生活を送りやすくなります。
本記事で弁護士を目指してみたいと本気で思った方は、さっそく今日から弁護士になるための勉強を始めてみてください。
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