中卒で1級土木施工管理技士になるには？転職成功のポイントと求められる能力

土木施工管理技士は、建設業法で定められた国家資格「施工管理技士」の一つで、主に道路や橋といった土木工事の施工管理や施工計画の作成を行えるようになります。

施工管理技士は1級と2級があり、1級土木施工管理技士になれば、大規模な土木工事現場の施工管理に携わることが可能です。

今回は、このような疑問を持つ中卒者のために、1級土木施工管理技士になる方法や検定対策、1級土木施工管理技士になるメリットなどを紹介します。

これから土木施工管理技士を目指す方はもちろん、すでに2級を保持している方にとっても役立つ内容なので、ぜひご覧ください。

中卒でも施工管理技士になることはできる

土木の分野に限らず施工管理技士は、中卒者もなれる職業です。

施工管理技士を名乗るには資格の取得が必須ではあるものの、資格受験要件に学歴が含まれていないので、所定の手順で資格を取得できれば、中卒者も施工管理技士になれます。

ちなみに、施工管理の仕事自体は資格を取得していない未経験者でも始められます。実際に、多くの建設会社では研修制度を設けており、学歴を問わず未経験者の採用に積極的です。

未経験者の採用に積極的な理由として、建築業界の高齢化による人材不足に陥っていることが挙げられます。他の業種から施工管理職に転職して、施工管理技士になった中卒者もいます。

資格を取得して施工管理技士を名乗るようになれば、さらなるキャリアアップが可能です。学歴を気にせずキャリアを築きたい中卒者にとって、施工管理技士を目指すのは選択肢の一つになるでしょう。

施工管理技士になる基本条件

先述した通り、施工管理技士になるうえで学歴の制限はありませんが、資格を取る必要があります。

施工管理着技士は、1級・2級があります。中卒者が施工管理技士の資格を取るために必要な手順は、以下の通りです。

1級・2級ともに第二次検定には、「一次検定合格後、所定の実務経験を積む」という受験条件があります。そのため、先に一次検定に合格して、第二次検定に受験するために必要な実務経験の要件を満たす必要があるのです。

実務経験の要件を含む1級・2級別の受験条件は、以下の通りです。

中卒者の場合、以前は最低8年以上の実務経験を積まなければ第一次検定も受験できなかったものの、令和6年の制度改正に伴い、受験条件が大幅に緩和されています。

施工管理技士を目指すハードルは以前より低くなっていることから、意欲があればチャレンジできる資格と言えます。

土木施工管理技士の学歴内訳

土木施工管理技士の学歴内訳をご紹介します。

なお、今回の参照データは、「土木施工管理技術者」として働く人を学歴別で割り出した数値なので、「土木施工管理技士」以外の技術者も含まれています。

学歴	割合
中卒	4.7%
高卒	27.9%
専門卒	18.6%
短大卒	2.3%
大卒	51.2%
修士課程卒	0.0%

参考：職業情報提供サイト（日本版O-NET）jobtag「土木施工管理技術者」（参照 2025-01-11）

※すべてを足しても100%になるとは限りません。

土木施工管理技士として働く人の中で最も割合が高い学歴は大卒の51.2%で、中卒の割合は4.7%です。一見少ない数値に見られがちですが、中卒の割合が0％の職業も珍しくない点を踏まえると、土木施工管理技士は中卒者も活躍しやすい職業だと考えられます。

中卒で施工管理技士になる方法と手順

未経験の場合、中卒で施工管理技士を目指す手順は以下の通りです。

先に独学で第一次検定に合格してから実務経験を積める企業に就職する方法もありますが、ほとんどの人は、働きながら第一次検定と第二次検定のどちらも受験します。

ここでは、施工管理技士になる流れを詳しく解説していきます。

中卒で施工管理技士になる方法と手順①未経験OKの企業に就職して第一次検定に合格する

中卒で1級施工管理技士になるためには、まず未経験OKの施工管理会社に就職して第一次検定の合格を目指しましょう。

未経験OKの会社の多くは、未経験者向けの教育体制が整っている傾向です。また、資格取得支援制度を設けている場合も珍しくなく、検定合格に向けてさまざまなサポートが受けられるメリットもあります。

そのため、未経験でも施工管理技士を目指すうえで必要な知識やスキルを習得しつつ、検定の勉強に注力できるでしょう。

施工管理技士を目指せる未経験OKの会社を探すコツは、建設業界に特化した転職エージェントから探すことです。特に未経験の業種に転職する場合、業界に精通したアドバイザーがいる転職エージェントを利用すれば、自分に合った求人が見つかりやすくなります。

施工管理の会社に就職できたあとは、実際に働きながら第一次検定合格を目指します。

施工管理技士の第一次検定は、1級・2級どちらも四肢択一式で出題されます。令和6年度の第一次検定の合格率は1級が約44％、2級が約43％だと言われており、事前に検定対策をしっかり行うことで、働きながらでも十分合格が狙えるでしょう。

中卒で施工管理技士になる方法と手順②実務経験を積んで第二次検定に合格する

第一次検定に合格したあと、第二次検定の受験資格をクリアするために実務経験を積みます。

施工管理技士の資格要件として認められる実務経験は以下の通りです。

ただし、土木施工管理技士の場合、建築工事や解体工事など土木に関係ない工事は、実務経験として認められないので注意しましょう。

なお、1級・2級施工管理技士の第一次検定に合格すると、「施工管理技士技士補」になれます。施工管理技士技士補の主な業務は、現場によって異なるものの、施工計画の立案や工数管理、資材の発注、発注者との打ち合わせなど多岐にわたります。

そのため、施工管理技士技士補として働くことができれば、第二次検定の受験に必要な実務経験を満たせるのです。

第二次検定は、1級・2級ともに記述式問題です。令和5年度の二次検定の合格率は、1級が約33％、2級が約62％だと言われており、1級の合格率は低いです。

ちなみに、令和6年度の施工管理技士の第二次検定は、出題内容が大きく変わっています。どのように出題内容が変わったのか事前に把握したうえで、第二次検定用の対策ができるかどうかが合格するコツです。

中卒で1級土木施工管理技士になるための資格試験の対策方法

ここでは1級土木施工管理技士の資格試験対策について詳しく解説します。

1級土木施工管理技士になるためには、まず2級土木施工管理技士に合格します。そして、1級土木施工管理技士の第一次検定に合格し、その後実務経験を積んだあと、第二次検定に合格しなければなりません。

第一次検定と第二次検定は、出題方式が異なります。それぞれ出題傾向を把握しておくことが、1級土木施工管理技士に合格するコツです。

第一次検定と第二次検定に分けて、おすすめの試験対策法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

第一次検定の対策

第一次検定を突破する際の効果的な対策は以下の通りです。

第一次検定の出題方式は、四肢択一形式です。問題は、全問解答が必須の「必須問題」と、選択して解答する「選択問題」で構成されています。

第一次検定の全出題数は101問で、そのうち70問を選択して解答する流れです。合格基準は正答率60％以上と言われており、70問中42問以上正解する必要があります。

第一次検定は出題範囲が広いため、いかに効率よく学習を進められるかどうかが重要です。「覚えることが多すぎて勉強が間に合わなかった」というリスクを避ける意味でも、最初に勉強スケジュールを立てておくようにしましょう。

また、配点の高い必須問題の対策を優先的に行うのも第一次検定を突破するコツです。必須問題にあたる「施工管理法」「応用能力問題」は、配点が高いため、点数を稼ぐうえで重点的に知識を定着させておく必要があります。

知識を定着させる学習方法の一つとして、過去問題を繰り返し解くことが挙げられます。施工管理技士の検定は、過去問題をベースに出題される場合が多いです。

全国建設研修センターの公式ホームページには、過去の問題と正答肢が掲載されているため、実際に問題を解きながら出題傾向を掴みましょう。

第二次検定の対策

第二次検定を突破する際に効果的な対策は以下の通りです。

第二次検定の出題方式は、記述式です。全出題数は11問で、必須問題が3問、選択問題が8問で構成されており、選択問題は8問中4問選択して解答します。

第二次検定の合格基準は正答率60%という声がある一方で、施工経験記述の内容が合格基準に達しているかどうかが重視されているとも言われています。そのため、施工経験記述をスムーズに書けるようになるまで何度も練習することが、第二次検定を突破するカギです。

施工経験記述は、無記載もしくはテーマから大きくズレた内容を記述していた場合、他の問題が採点の対象外になるため、必ず書けるようにならなければいけません。

事前に項目ごとに施工経験の内容をまとめたうえで、暗記するつもりで何度も書いて練習するのが大切です。

なお、令和6年度より、施工経験記述問題は「施工計画」についての問いが増えています。今後も問題の内容が見直される可能性があるので、全国建設研修センターの公式ホームページから情報をチェックするようにしましょう。

参考：全国建設研修センター「令和6年度1級土木施工管理技術検定第二次検定試験問題」（参照 2025-01-11）

また、第二次検定の所要時間は、2時間45分です。11問のうち7問解答すればいいので一見余裕があるように思われがちですが、施工経験記述があることや、1問あたりの解答数が多いことを踏まえると、1問あたりに割ける時間はそこまで多くありません。

過去問題を繰り返し解いて出題傾向を掴むのはもちろん、実際の試験時間内に問題を解いて時間配分を把握しておくのも重要です。

中卒で1級施工管理技士になったあとのキャリアパス

施工管理技士になったあとのキャリアパスは、以下の通りです。

1つ目は社内での昇進です。一般的に現場代理人からスタートし、経験と実績を積み重ねることで工事長、所長、部長、そして役員へと昇進していきます。役職が上がるにつれて高いマネジメントスキルが求められますが、その分やりがいも得られ、年収アップも期待できます。

2つ目は大手ゼネコンへの転職です。大手ゼネコンに転職できれば、より大規模なプロジェクトに携われる機会が増えて、さらなる知識やスキルの向上につながります。また、より充実した福利厚生が受けられる可能性があるのも魅力です。

ちなみに、他の転職先として、国や自治体の施工管理職も挙げられます。土木の場合、公共事業の施工管理業務を担う場合が多いので、「日本のインフラ整備に関わりたい」という人におすすめです。

中卒で施工管理技士に向いている人・向いていない人

施工管理技士は、建設現場で重要な役割を担う職業です。業務内容は、工程管理や品質管理、安全管理など多岐にわたるため、個人の向き不向きがはっきりと分かれやすいです。

ここでは、施工管理技士に向いている人と向いていない人の特徴を3つずつ紹介します。

施工管理技士に向いている人	施工管理技士に向いていない人
綿密なスケジュール管理ができる人	臨機応変な対応が苦手な人
コミュニケーション能力が高い人	責任感がない人
迅速な決断ができる人	体力に自信がない人

中卒で施工管理技士に向いている人の特徴3つ

施工管理技士になるのに向いている人の特徴は、以下の3つです。

施工管理技士は、工期に間に合うように工事全体の工程を管理しつつ、図面作成や写真撮影、書類作成なども行います。そのため、膨大な作業の工数を把握したうえで綿密な計画が立てられる人が向いています。

また、施工管理技士は現場作業員への指示出し、協力会社との打ち合わせ、クライアントへの報告など、多くの人とコミュニケーションを取る機会が多いです。時には近隣住民への工事説明も求められるため、相手の立場に立ってわかりやすく説明できる人は、施工管理技士として活躍できるでしょう。

さらに、建設現場では天候の変化や資材の納期遅れなど、予期せぬ事態が発生する場合もあります。そのような状況でも、現場の状況を的確に把握し、迅速かつ適切な判断を下せる人であれば、施工管理技士として成功できる可能性が高いです。

中卒で施工管理技士に向いていない人の特徴3つ

施工管理技士に向いていない人の特徴は、以下の3つです。

施工管理技士は、「資材の納期遅れ」「人員不足」「天候の急変」といった予期せぬトラブルが起きた際にも、その場ですぐ適切な対応をすることが求められる職業です。そのため、臨機応変な対応に苦手意識を持つ人は、業務そのものが重荷に感じてしまうかもしれません。

また、施工管理技士は、工事全体の進捗管理や品質管理、安全管理などに関して大きな責任を背負っています。些細なミスが工期遅れを招く恐れがあることから、仕事に対する責任感が持てない人は、施工管理技士に向いていない可能性があります。

さらに、施工管理技士の仕事は、屋外作業が中心です。夏は猛暑、冬は厳寒といった環境下で作業するケースも珍しくなく、それに耐えられる体力が必要不可欠です。そのため、体力に自信がない人には難しい仕事と言えます。

中卒で施工管理技士になるメリット・デメリット

施工管理技士は、学歴に関係なく挑戦できる職種です。しかし、施工管理技士になるためには、資格を取得する必要があります。

年単位の時間を要することから、このまま目指していいのか悩む中卒者もいるのではないでしょうか。

ここでは、中卒で施工管理技士になるメリット・デメリットを具体的に解説します。

中卒で施工管理技士になるメリット	中卒で施工管理技士になるデメリット
「監理技術者」または「主任技術者」になれる	資格取得までに時間がかかる
大幅な昇給や昇進が期待できる	休日出勤や残業が発生する場合がある
将来性がある	転勤や出張が発生する場合がある

中卒で施工管理技士になるメリットは3つ

中卒で施工管理技士になるメリットは、以下の3つです。

施工管理技士の資格を取得することで、1級は監理技術者、2級は主任技術者として現場責任者を担えるメリットがあります。

とくに監理技術者は、下請契約の請負代金総額が4,000万円以上（建築一式工事は6,000万円以上）になる大規模工事を施工する際、専任で配置しなければいけないという決まりがあるため、建設業界において重宝されやすい人材です。

また、施工管理技士は、資格を持っていないとできない業務も担っているため、自分の成果次第で大幅に昇給できたり、昇進できたりするのも魅力です。学歴に左右されずキャリアアップを目指したい方に適した職業と言えます。

さらに、将来性が安定している点も施工管理になるメリットの一つです。国土交通省の発表によると、2040年には建設後50年を超える道路橋やトンネル、港湾岸壁が、全体の50%以上を占めると予想されています。

今後建物の老朽化対策が本格化し、インフラ整備の需要も高まっていくことから、施工管理技士のニーズはさらに上がっていくでしょう。

参考：国土交通省 インフラメンテナンス情報「社会資本の老朽化の現状と将来」（参照 2025-01-13）

中卒で施工管理技士になるデメリットは3つ

中卒で施工管理技士になるデメリットは、以下の3つです。

中卒で施工管理技士の資格を取得するためには、第一次検定に合格したあと、数年以上実務経験を積んで、第二次検定に合格することが求められます。第一次検定と第二次検定をそれぞれ突破するための勉強時間も必要なので、最低でも3年以上はかかります。

中卒で目指せる職業とはいえ、なるまでに時間を要する点はデメリットとなるでしょう。

また、建設業は年間休日がやや少ない傾向にあります。現場責任者を担う施工管理技士は、急なトラブルやスケジュール変更の対応に追われ、時には休日出勤や残業が発生するケースも珍しくありません。

最近では、働き方改革を進める企業も増えているものの、ワークライフバランスを確保できる働き方を求めている方にとって、難しい労働環境になる可能性があります。

さらに、全国各地に支店がある大手企業で働いている場合、転勤や出張が発生することもあります。大手企業は、全国各地に大規模工事や公共工事の案件を抱えているケースが多いです。

そのため、工事の規模を問わず施工管理ができる1級施工管理技士の需要が高く、県外への転勤や出張を命じられるパターンも少なくありません。

頻繁に住む場所が変わったり、地元の家族や友人に会えなくなったりすることにストレスを感じる方には、デメリットとなるでしょう。

施工管理技士以外で転職を検討するならナイト系がおすすめ

施工管理技士は、学歴を問わず目指せる職業です。しかし、施工管理技士になるためには、2回の検定に合格したり数年にわたって実務経験を積んだりして、資格を取得しなければいけません。

「資格いらずでキャリアアップが狙える仕事に転職したい」という中卒者には、ナイト系もおすすめです。

ナイト系は、実力主義を掲げているため、学歴や職歴、資格の有無を問わず早期の昇給・昇格が目指せる仕事が豊富にあります。そのため、自分の頑張り次第でスピード出世も可能です。

実際に、施工管理職も含めて建築業界から転職してキャリアアップを果たした人はたくさんいます。店長や幹部になれば、年収1,000万円になることも夢ではありません。

高校生を除く18歳以上であれば、未経験でもチャレンジできる業界なので、早期のキャリアアップを目指す方は、ぜひ一度ナイト系の求人情報をチェックしてみてください。

中卒で施工管理技士になるためのおさらい

最後に、中卒者が施工管理技士になるためのポイントをまとめます。

施工管理技士は学歴に関係なくチャレンジできる職業です。資格取得までには時間がかかりますが、実務経験を積みながら着実にキャリアアップできる点が魅力です。

また、1級土木施工管理技士の資格を取得すると、「監理技術者」として大規模工事の現場責任者になれたり、昇進・昇給が期待できたりします。

施工管理技士を目指す方は、ぜひ本記事を参考にさっそく準備を始めてみましょう！