ビジネスシーンで相手に「理由を教えてください」と尋ねたい場面は度々出てきますが、言い方ひとつで印象が変わります。
例えば「理由を教えてください」とそのまま送ってしまうと、ぶっきらぼうな印象を与えてしまうことがあります。特に上司や取引先といった目上の人が相手の場合、失礼にあたる表現なので注意が必要です。
この記事では「理由を教えてください」の適切な敬語表現や、ビジネスシーンで使える言い換えなどを解説します。
少し言い方を工夫するだけで、あなたの印象はグッと良くなりますよ。適切な表現を把握して、円滑なコミュニケーションを目指しましょう!
「理由を教えてください」は上司や目上の人に使用するのはNG

「理由を教えてください」は、言い方によって命令口調のような印象を与えてしまうことがあります。
そのため、上司や取引先など目上の人に使う際は注意が必要です。
例えば、「ご事情をお伺いできますでしょうか」や「差し支えなければ理由をお聞かせいただけますと幸いです」といった表現だと、柔らかく丁寧な印象になります。
ビジネスシーンで理由を尋ねることは、物事の背景を理解し、次のアクションを決めるための大切なプロセスです。
相手に配慮し伝え方を工夫することが、信頼を得るビジネスメールの基本といえます。
「理由を教えてください」の意味と語源

「理由を教えてください」という表現は、物事がそうなった根拠や事情、背景を尋ねる際に使われます。
相手に説明を求める点では直接的ですが、ビジネスでは敬意を示して「教えてください」と表現することで、柔らかく問いかける意図があります。
- 【理由の語源】
- 「理由」という言葉は、中国古典「論語」や「孟子」に登場する「理(ことわり)」と「由(よりどころ)」に由来し、「筋道のある原因」という意味を持ちます。奈良時代に日本へ伝わり、江戸時代には合理的思考を表す重要語として定着しました。
ビジネスでは、プロジェクトの遅れや方針決定の背景理解、顧客対応やトラブル解消など、状況把握や問題解決が必要な場面で使われている言葉です。
理由を教えてほしい時の正しい敬語表現

「理由を教えてください」と尋ねたいときには、相手によって配慮のある表現に言い換えるのが適切です。
たとえば、取引相手の場合、「教えてください」を以下のように敬意を示す表現に変えてみると、相手に配慮しつつ理由を教えてほしいことを伝えられます。
- 参考
- 【文例】
Aさん:「本日は当社製品〇〇の価格改定についてご連絡申し上げます」
Bさん:「価格改定のご連絡ありがとうございます。差し支えなければ、価格改定の理由についてご教示(きょうじ)いただけますと幸いです」
他にも、相手を気遣いながらお願いをする際に適した「差し支えなければ」をクッション言葉として使うのもおすすめです。
ただし、社内向けのビジネスメールで、同僚や部下に尊敬語やクッション言葉を使用すると、大げさな印象を与えてしまいます。
ビジネスメールを送る際には、相手との距離感に合わせて、適切な言葉選びを意識することが大切です。
「理由を教えてください」を使う際の注意点

「理由を教えてください」はそのままだと、相手との関係性によっては失礼と受け取られかねない表現です。
そのため、ビジネスで理由を尋ねる際には、いくつかのポイントを押さえることが大切です。
- ビジネスメールを送る相手によって適切な敬語に言い換える
- 疑問に思ったその時に尋ねる
- 責めるニュアンスにならないよう心がける
ここからは相手に配慮しつつスムーズに尋ねるポイントを詳しく解説します。
①ビジネスメールを送る相手によって適切な敬語に言い換える
「理由を教えてください」は、相手との関係性によって適切な敬語への言い換えが必要です。
上司や取引先、顧客へ送るビジネスメールでは以下のような丁寧な表現をするといいでしょう。
- 参考
- 【直属の上司宛ての例文】
ご事情をお聞きしてもよろしいでしょうか。
【取引先や顧客宛ての例文】
大変恐縮なのですが、〇〇の背景についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
「大変恐縮なのですが」以外にも「もし差し支えなければ」「お手数をおかけいたしますが」などのクッション言葉を添えることで、柔らかく丁寧な印象を与えられます。
②疑問に思ったその時に尋ねる
「理由を教えてください」と尋ねる際は、疑問に思った時点で伝えるのが理想です。
早いタイミングで尋ねることで、「今気づいたから確認しているだけなんだな」と受け取ってもらいやすく、相手も責められたように感じず、やり取りができます。
たとえば、制作物の納期変更や対応の遅延、資料内容の修正などは、ビジネスメールを受け取ったあとなるべく早めに理由を聞くのがおすすめです。
また、理由を尋ねることはクライアントの真意を把握し、提案や対応の質を上げることにもつながります。
つまり、早めの質問は、仕事のクオリティアップにも欠かせないプロセスといえるでしょう。
③責めるニュアンスにならないよう心がける
何気ない質問でも意図しない責めるニュアンスを含まないように、書き方には注意が必要です。
たとえば、「なぜ遅れましたか?」「どういうことですか?」といった直接的な尋ね方は、詰問(きつもん)や指摘のように感じさせてしまう可能性があります。
そのため、理由を尋ねる際は、柔らかい表現を心がけましょう。
- 参考
- 【柔らかい表現の例】
・「恐れ入りますが」「念のための確認なのですが」などのクッション言葉を添える
・「ご教示いただけますでしょうか」といった敬意を示すフレーズを加える
これらを使えば「責める意図はなく確認しているだけ」という意図が伝わりやすくなります。
相手の立場を尊重しつつ、冷静に状況を確認する姿勢がビジネス上の信頼関係を保つポイントです。
「理由を教えてください」を言い換えたビジネスメールの例文

ビジネスメールで「理由を教えてください」と伝える際は、相手との距離感や関係性、メールの温度感に応じた表現の言い換えが大切です。
正しい表現を使えば、相手に不快感を与えずに理由を尋ねられます。
ここからは実際のビジネスシーンで使える社内向け・社外向けのビジネスメール例文と、適切な表現について解説します。
【例文1】社内向けビジネスメール
社内ポリシーや方針の変更理由を上司に確認するシーンを想定した、社内向けビジネスメールを紹介します。
小売業などでスタッフへの周知を担当する立場の人が、現場での説明を的確に行うために、上司に背景を確認する目的で使用する例文です。
「どういった経緯で〜伺えますでしょうか」は敬意を保ちつつ、相手の都合を尊重して事情を尋ねられるので、上司や目上の人に使いやすい表現です。
- 参考
- 件名:社内ポリシー変更の背景について確認のお願い
〇〇部長
お疲れさまです。△△部の□□です。
先日ご案内のありました社内ポリシーの変更につきまして、スタッフへの説明を行うにあたり、内容を正確に把握しておきたいと考えております。
つきましては、今回の変更に至った背景や目的など、簡単にお伺いしてもよろしいでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが、ご教示いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
――――
□□(署名)
【例文2】社外向けビジネスメール
建設会社の担当者が取引先に建材の価格変更理由を確認するシーンを想定した、社外向けビジネスメールを紹介します。
例文ではクッション言葉の「差し支えなければ」を添えつつ、「ご教示いただけますと幸いです」と最上級に丁寧な表現を使っています。
「理由を教えてください」よりも格調高い表現なので、特別に丁寧な対応が必要な相手へ送るのに適しています。
- 参考
- 件名:建材価格変更の件について確認のお願い
〇〇株式会社 〇〇様
いつも大変お世話になっております。□□建設の△△でございます。
先日ご案内いただきました建材の価格改定につきまして、社内で予算調整を進めるにあたり、変更の背景をお伺いできればと存じます。
大変恐縮ではございますが、差し支えない範囲で理由をお伺いしてもよろしいでしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認の上ご返信をお願いいたします。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
□□建設株式会社
営業部 △△
「理由を教えてください」以外の類似表現
ここからは「理由を教えてください」の類似表現をいくつか紹介します。
以下のような表現を状況や相手に応じて上手に使い分けましょう。
- ご事情をお聞かせいただけますと幸いです
- 恐れ入りますが、背景についてご教示いただけますとありがたく存じます
- どういった経緯があったか伺えますでしょうか
微妙なニュアンスの違いでも、知っていればビジネスメールを作成する際に適した表現を選べます。
①ご事情をお聞かせいただけますと幸いです
「ご事情をお聞かせいただけますと幸いです」は丁寧かつ柔らかいニュアンスで尋ねたい場合に適した表現です。
「理由を教えてください」が直接的でややカジュアルな印象なのに対し、「幸いです」を用いることで、教えるかどうかを相手の都合に委ねる尋ね方になっています。
- 参考
- 【ビジネスシーンでの使用例】
差し支えなければ、今回の仕様変更のご事情をお聞かせいただけますと幸いです。
特に、ある程度対等もしくは若干上の立場の相手に対して使いやすい表現です。
②恐れ入りますが、背景についてご教示いただけますとありがたく存じます
目上の人や取引先に最大限に気を配りながら情報を求める場面では、「恐れ入りますが、背景についてご教示いただけますとありがたく存じます」が適しています。
ここでのポイントはクッション言葉の「恐れ入りますが」です。
クッション言葉を添えると、「お手間を取らせて申し訳ありません」という気持ちを前置きとして示せます。
また、「教えてください」を最上級に丁寧にした「ご教示いただけますと」も併せて使うことで、情報を尋ねる意図は損なわずに柔らかい印象にしています。
- 参考
- 【ビジネスシーンでの使用例】
恐れ入りますが、今回の仕様変更の背景についてご教示いただけますとありがたく存じます。
ちなみに「ご教授」は、レクチャーや授業のように時間をかける教え方を希望する際に使用します。「ちょっとした情報」を尋ねる場合は「ご教示」を使いましょう。
③どういった経緯があったか伺えますでしょうか
「どういった経緯があったか伺えますでしょうか」は、「理由を教えてください」よりも丁寧で控えめなニュアンスを持ちます。
「伺えますでしょうか」は教えるのを断られる可能性も踏まえた上で、相手に判断を委ねて都合や立場を尊重する表現です。
そのため、フォーマルな場面で上司や顧客などの目上の人に尋ねるようなビジネスシーンに適しています。
- 参考
- 【ビジネスシーンでの使用例】
今回の納期変更について、どういった経緯があったか伺えますでしょうか。
相手の事情に配慮しながら確認したいとき、「理由を教えてください」より柔らかく穏やかな印象を与えられます。
「理由を教えてください」の英語表現をご紹介

ビジネスや日常会話で「理由を教えてください」と伝えたいとき、英語では状況や相手に応じていくつかの表現があります。
ニュアンスを理解して使い分ければ、丁寧かつスムーズに質問できるでしょう。
- I would appreciate it if you could kindly let me know the background for this change.
- Could you please let me know the reason for this change?
- If it is not too much trouble, may I ask about the circumstances regarding this matter?
ここからは、例文も交えて3つの英語表現を解説します。
英語圏でのビジネスシーンでぜひ役立ててください。
①I would appreciate it if you could kindly let me know the background for this change.
- 【フォーマルな英語表現】
- I would appreciate it if you could kindly let me know the background for this change.
(よろしければ、この変更の理由をお教えいただけるとありがたいです)
これは「理由を教えてください」を英語でフォーマルに伝える際に使える表現です。
「I would appreciate it if you could(よろしければ)」は、相手に何かをお願いするときの非常に丁寧な言い回しです。
「background(背景・経緯)」は相手に「状況を理解したい」という姿勢を示す際に使われます。
また、この文章は「the 〇〇 for this change.」を変えることでニュアンスの調整ができます。
- 「background」で尋ねるのは背景全体
- 「reason」で尋ねるのは直接的な一つの理由
- 「circumstances」で尋ねるのは直近の経緯
②Could you please let me know the reason for this change?
- 【社内で理由を尋ねる場合の英語表現】
- Could you please let me know the reason for this change?
(この変更の理由を教えていただけますか?)
社内メールや業務チャットで、比較的親しい関係の上司やチームメンバーに情報を確認する際に適した英語表現です。
「Could you?」は、もともと「can」の過去形ですが、英語圏では丁寧な表現として「〜していただけますか?」の意味で使われます。
「the reason for this change?」は「reason」が使われているので変更に至った直接的な理由を尋ねています。
また、「let me know(教えていただけますか)」は「今すぐに情報が得られなくても構わない」というニュアンスを含むので、相手の都合に配慮した柔らかい尋ね方です。
③If it is not too much trouble, may I ask about the circumstances regarding this matter?
- 【クッション言葉を用いて尋ねる場合の英語表現】
- If it is not too much trouble, may I ask about the circumstances regarding this matter?
(差し支えなければ、この件に関する事情をお伺いしてもよろしいでしょうか)
クッション言葉+許可を求める構成で、やや日本語的な丁寧さを持つ英語表現です。
「If it is not too much trouble,」は「ご迷惑でなければ/差し支えなければ」という意味なのでクッション言葉に該当します。
相手に手間や負担をかける可能性がある依頼の前に使うことで、柔らかい印象を与えます。
「may I ask about〜」は「〜をお伺いしてもよろしいでしょうか」に近い意味で、新規顧客や目上の人、取引先に対しても使える表現です。
「理由を教えてください」は相手に合わせて正しい敬語表現で伝えよう

ビジネスメールを送る相手によっては、「理由を教えてください」と書くと直接的で圧迫感を与える場合があるため注意が必要です。
上司や取引先には距離感や関係性を踏まえて「ご事情をお伺いできますでしょうか」「差し支えなければご教示いただけますと幸いです」といった柔らかい敬語表現の使用が望ましいでしょう。
理由を尋ねることは、仕事のクオリティを上げ、ビジネスを円滑に進める上で欠かせない重要なプロセスです。
そのため、丁寧かつ配慮のある表現で確認することが、円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築につながります。


