「ご教示いただきありがとうございます」は、ビジネスコミュニケーションにおいてよく使われる表現です。
主に、アドバイスを受けたり情報を提供してもらったりした際に感謝の気持ちを示す言葉として使用されますが、正しい意味や適切な使用場面がわからず、悩んだ経験がある人もいるのではないでしょうか。
また「ご教示」と似ている表現として「ご教授」という言葉もあり、どんな違いがあるのかも気になるところです。
本記事では「ご教示いただきありがとうございます」の意味、使用してもいい相手や場面、使用時の注意点などを、例文も交えながらわかりやすく解説します。
言い換え例や英語での表現も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
「ご教示いただきありがとうございます」は上司や目上の人に使用して良い
「ご教示いただきありがとうございます」は、職場の上司や先輩といった目上の人に使用できます。
この言葉は相手からのアドバイスを受け取った時に、感謝の気持ちを込めて使われることが多いです。
謙虚な態度や相手を尊敬する姿勢も表現できる言葉なので、感謝の気持ちだけでなく敬意も示せます。
なお、「ご教示くださりありがとうございます」も相手の教えに感謝する言葉ですが、「くださる」と「いただく」では意味のニュアンスがやや異なります。
「くださる」は主に上位者から下位者に使われる表現であり、「いただく」は下位者から上位者に使われるのが一般的です。
そのため、「ご教示いただきありがとうございます」は目上の人に、「ご教示くださりありがとうございます」は目下の人に対して使用しましょう。
なお、「ご教示いただきありがとうございます」は、メールやチャットといったテキスト上でやりとりするシーンで使われるのが一般的です。
「ご教示いただきありがとうございます」の意味と語源
「ご教示いただきありがとうございます」は「教示」「いただく」「ありがとう」という3つの言葉から成り立っています。
『デジタル大辞泉』によると「教示」の意味は以下の通りです。
出典: コトバンク(デジタル大辞泉)「教示」(参照 2024-09-09)知識や方法などを教え示すこと。示教。
「ご教示」は、「教える」と「示す」の2つの意味を持つ言葉であり、接続語の「ご」を付けることで敬語表現になります。
そして「いただく」は「もらう」の謙譲語です。本来「頂く(いただく)」は、「物を受け取る」「飲む」「食べる」の謙譲語として使われます。
今回のように、「教示+いただく」という補助動詞として使用する場合、動詞本来の意味がほぼなくなり、相手の行為に対して敬意を示す表現となります。
最後の「ありがとうございます」は、感謝の気持ちを示す「ありがとう」の丁寧語です。
つまり「ご教示いただきありがとうございます」は、相手に敬意を示しながら「教え示してもらったことに感謝します」という意味になります。
「教授」と「教示」の違い
ビジネスシーンでは、「ご教授いただきありがとうございます」という表現も使用されます。
「教授」と「教示」は響きが似ていることから、2つの言葉の違いをいまいち認識できていない方も多いのではないでしょうか。
「教授」と「教示」の違いは、主に教わった時間の長さが大きく関係しています。
先述した通り、「教示」は教え示すという意味であるため、仕事のやり方やちょっとしたアドバイスなど、比較的簡単な内容をその場で教えてもらった際に用いるのが一般的です。
ビジネスの場合、業務内容や手順、仕事のスケジュールなどの確認をその場で教えてもらった際に「ご教示いただきありがとうございます」を使います。そのため、ビジネスシーンにおいて、「ご教示」の使用頻度は高いです。
対して「教授」は、教え授けることを意味しています。
専門的なスキルや知識を相手に伝授するには時間がかかるので、「教授」はある程度の期間を設けて教えてもらった際に用いるのが基本です。
ビジネスシーンにおいて、「ご教授いただきありがとうございます」は、長年指導を受けた方に感謝する場面でよく使用されます。
「教示」と「教授」は、どちらも教えてもらうことを意味していますが、教わった時間の長さで使い分けるようにしましょう。
「ご教示いただきありがとうございます」をビジネスで使う時の注意点
「ご教示いただきありがとうございます」は、ビジネスシーンにおいて使用頻度の高い敬語表現です。
しかし、タイミングによっては使用するのに適さなかったり、使用すると相手に違和感を与えてしまったりする場合があります。
ここでは、「ご指摘ありがとうございます」をビジネスで使う際の注意点について解説します。使いどころや状況を見極めて、正しく使用しましょう。
【注意点1】アドバイスを受けたあとに使う
「ご教示いただきありがとうございます」は、アドバイスを受けたり不明点を教えてもらったりしたあとに使用するのが基本です。
この表現は、教えられた内容に対して感謝の意を示す場合に使う言葉なので、教わる前に「ご教示いただきありがとうございます」と言うのは不適切です。
万が一教わる前に使ってしまうと、「まだ何も教えていないのに?」と相手を混乱させるほか、「教えてもらうのが当然」という圧力のようなものを与えてしまい、威圧的だと思われてしまう可能性があります。
「ご教示いただきありがとうございます」には、感謝の気持ちだけでなく謙虚な姿勢や相手への敬意も含まれているので、話を聞き終えてから使うようにしましょう。
また「ご教示いただきありがとうございます」が使えるのは、相手から教えやアドバイスなどを提供された時だけです。
たとえ目上の人から何かを提供してもらったとしても、それが教えやアドバイス以外の情報だった場合、使用しないのが適切と言えます。
【注意点2】口頭で伝える時は別の表現に言い換える
前述のとおり「ご教示いただきありがとうございます」は、主にビジネスメールやチャットでのやりとりの際に用いられるため、口頭でのコミュニケーションで使用するのは避けましょう。
言語には「話し言葉」と「書き言葉」があり、「ご教示」は書き言葉に分類されます。
書き言葉は、意味が正確に伝わりやすい一方で、やや堅苦しい表現なのが特徴です。
そのため、口頭で会話をしている最中に書き言葉である「ご教示」をうっかり使ってしまうと、どこかよそよそしく冷たい印象を与える可能性があります。
口頭で「ご教示いただきありがとうございます」と同じ意味を示したい場合、「教えていただきありがとうございます」「ご指導いただきありがとうございます」といった話し言葉で伝えるのが適切です。
ビジネスメールでの「ご教示いただきありがとうございます」の使用例文
「ご教示いただきありがとうございます」は、上司や先輩、取引先に対して使われるのが一般的で、相手から何かを教わった時や、アドバイスをもらった時に感謝の気持ちを伝えるために用いられます。
使用する際は、感謝の意を示すと同時に教わった内容をこれからどう活かしていくのかも伝えておけば、助言を素直に受け入れる姿勢や相手への敬意をより表現できるので、相手に好印象を与えられます。
また、先述した通り、「ご教示」は書き言葉に分類されるので、「ご教示いただきありがとうございます」はビジネスメールやチャットで使うのが基本です。
「ご教示いただきありがとうございます」のビジネスメールでの使用例は以下の通りです。
- 参考
- マーケティング部 〇〇部長
お疲れ様です。△△です。
先日は、過去プロジェクトの成功事例や具体的な戦略をご教示いただきありがとうございます。
成功ノウハウや戦略の立て方を〇〇部長の実体験から学ぶことができ、とても勉強になりました。
この学びを今後の仕事に活かしてまいります。
このように「ご教示いただきありがとうございます」は、上司から仕事を教わった時に感謝の気持ちを丁寧に伝えることができます。
さらに、社外の人から情報共有してもらう場面でも使えます。たとえば、取引先とアポイントを取るために日程を聞いた際のお礼メールは以下の通りです。
- 参考
- 〇〇様
お世話になっております。
株式会社△△の●●です。
ご多忙にもかかわらずご教示いただきありがとうございます。
お申し付けいただいた通り、下記日時で貴社にお伺いいたします。
日時:〇月〇日(■)15:00~
場所:貴社5階
打合せは1時間を予定しております。
それでは当日お会いできることを楽しみにしております。
よろしくお願いいたします。
口頭での「ご教示いただきありがとうございます」を言い換えた使用例
「ご教示いただきありがとうございます」は、以下の表現に言い換えられます。
- 教えていただきありがとうございます
ここからは、口頭で「ご教示いただきありがとうございます」と同じ意味を伝えたい場合の言い換え例を紹介します。
また、「ご教示」と似たような言葉でありながら、言い換えるのに適していない表現も併せて解説するので、ぜひご覧ください。
【例文1】教えていただきありがとうございます
「教えていただきありがとうございます」は、主に第三者から新しい知識やスキルを教わった時に感謝の気持ちを伝えられる表現です。
「教えていただく」は、情報を提供してくれたことに対して敬意を示す意味も含まれており、目上の人にも使用できます。さらに、「深く理解できました」といった教わったことで自分がどう感じたのか一言添えておくと、より相手に好印象を与えられます。
「教えていただきありがとうございます」の使用例は以下の通りです。
-
上司:「このように作業してください」
-
Aさん:「お忙しい中、作業フローを詳しく教えていただきありがとうございます。おかげさまで、作業についてより理解を深めることができました。」
なお、「教えていただきありがとうございます」は、比較的カジュアルな雰囲気のビジネストークで使われやすい表現です。そのため、硬い場面では「お教えいただき感謝いたします」とより丁寧な言い回しを心がけるようにしましょう。
【例文2】「ご指導ありがとうございます」
「ご指導ありがとうございます」は、目上の人から受けた指導やアドバイス、指摘に対して感謝を示す表現です。
また、相手が自分に貢献してくれたことを高く評価したい時にも適しています。
「ご指導ありがとうございます」の使用例は以下の通りです。
-
上司:「報告書はこう書いた方がわかりやすいのでは?」
-
Aさん:「貴重なアドバイスとご指導いただき、ありがとうございます。ご指摘いただいた点を踏まえて内容を修正し、改めて提出いたします。」
さらに、「ご指導ありがとうございます」の前に「温かい」を付け足すと、より感謝や尊敬の気持ちを表現できます。
「温かい」を付けた場合の使用例は以下の通りです。
- お忙しい中、温かいご指導をいただき感謝申し上げます。
- 旧年中は公私にわたり、温かいご指導ありがとうございました。
【番外編】「ご助言ありがとうございます」は使わない
「ご助言ありがとうございます」は、「ご教示いただきありがとうございます」の言い換え表現としては適していません。
「ご助言」は、「ご助言をお願いします」「ご助言をいただけませんか」のように、社内にいる目上の人にアドバイスをお願いしたい時に使用します。
しかし、「ご助言ありがとうございます」だけだと、教えやアドバイスを受けたことへの敬意を示すのには不十分です。
お礼を伝えるシーンで「ご助言ありがとうございます」のフレーズを使ってしまうと、相手から「そこまで役立つアドバイスではなかったのか」という解釈で受け取られてしまう可能性があります。感謝の気持ちを伝えるなら、「ありがとうございます」のみで十分です。
相手を不快な気持ちにさせないためにも、「ご助言」の使い方に注意しましょう。
「ご助言」を使って感謝の気持ちを伝えたい場合、以下のように「助言をお願いした結果、どのような成果を挙げられたのか」と結果を伝えるのがおすすめです。
- 先日、〇〇部長よりご助言いただいた結果、無事●●社との契約が成立しました。セールストークについて有益なアドバイスもいただき、ありがとうございます。
ちなみに、仕事内容によっては、社外の人にアドバイスを求める場面が多数出てきます。社外の人に対して安易に「助言」をお願いする行為は、「自分で解決策を見出そうとしない」といった無責任な印象を与えかねません。
そのため、社外の人に対して、むやみに「助言」という言葉を使うのは避けておくのが無難です。
「ご教示いただきありがとうございます」の英語表現をご紹介
「ご教示いただきありがとうございます」を英語で表現すると「Thank you for your instruction.」になります。
ビジネス英語において「instruction」とは、他人に物事を教え示すという意味です。
よって「Thank you for your instruction」を直訳すると「あなたの教示に感謝する」という意味になり、「ご教示いただきありがとうございます」とほぼ同じニュアンスと言えます。
他にも「ご教示いただきありがとうございます」と似た意味を持つ英語表現がいくつかあります。
- Thank you for your kind instruction.
- Thank you for teaching me.
- Thank you for letting me know.
「親切」の意味を持つ「kind」を使用すると、「丁寧に教えてくれてありがとう」という英語表現になります。
「Thank you for teaching me.」は、「教えてくれてありがとう」という意味です。主に、学びを得た時に使われる機会が多く、「Thank you for your instruction.」よりややフランクな表現になります。
「Thank you for letting me know.」は、情報を共有してくれた相手に「知らせてくれてありがとう」「教えてくれてありがとう」と伝えたい時に適しています。
「ご教示いただきありがとうございます」はチャットやメールのみで使おう
「ご教示いただきありがとうございます」は、目上の人からアドバイスを受けた時、指導に対して感謝の気持ちを伝えられる表現です。
適切な場面できちんと言えるようになれれば、目上の人とより良好な関係が築けるきっかけにつながります。
「ご教示いただきありがとうございます」を適切に使えるようになるためのポイントは以下の通りです。
- 「ご教示いただきありがとうございます」が使えるのはチャットやメールなどのテキスト上のみ
- アドバイスを受けたあとに使用する
- 「ご教授」「ご指導」など、状況に応じて似た意味を持つ別の表現に言い換えるのも可
正しく敬語が使えると、相手に好印象を与えます。この記事を参考に言葉遣いを見直し、より仕事を円滑に進めていきましょう。