出張へ行く上司や目上の人を送り出す際に、ビジネスメールに「気を付けて」と書いていいのか迷ったことはありませんか?
「気を付けて」は日常でもよく使われる言葉ですが、ビジネスシーンで使う際は少し注意が必要になり、いくつかポイントがあります。
この記事では、「気を付けて」の意味や敬語表現、注意点、言い換え、英語表現などを詳しく解説します。
相手に失礼のない言葉遣いを身につけ、信頼されるビジネスマンを目指しましょう。
出張に行く上司や目上の人に「気を付けて」を使用するのはNG

「気を付けて」という言葉をそのまま使うのは、上司や取引先などの目上の人に対しては不適切とされることが多いです。
「気を付けて」は本来「注意しなさい」という意味を含むため、命令口調に聞こえる可能性があります。
もし出張や外出などで相手を送り出す際には、相手の体調や移動中の安全を気遣う言葉に言い換えるのがベターです。
相手の状況に合わせて、次のような丁寧なフレーズを使いましょう。
- 【例文】
- ・長距離のご移動かと存じます。どうぞ道中お気を付けください。
・ご出張、お気を付けて行ってらっしゃいませ。どうぞご無理をなさらぬようご自愛ください。
・荒天の予報が出ておりますので、道中はくれぐれもお気を付けください。
このように「具体的に何に気を付けてほしいのか」を具体的に伝えると、相手への思いやりがより明確に伝わります。
単に「気を付けて」と言うよりも、丁寧で温かみのある印象を与えることができます。
「気を付けて」の意味と語源

「気を付けて」は、もともと「注意を払う」「意識を向ける」という意味で使われる言葉です。
- ポイント
- 「気」:意識や精神を表す
「付ける」:働きを起こす、動きを発動させるという意味を持つ
この2つが合わさり、「心を相手や物事に向けて慎重に行動する」という意味になります。
また、「無事を祈る」というニュアンスも含まれているので、「お気を付けください」といった敬語表現に言い換えて使われる場合が多いです。
なお、「気を付ける」という言葉の語源は明確ではありませんが、14世紀ごろの軍記物語『太平記』にも登場しており、当時は「気づかせる」「思い出させる」といった意味で使われていたという説があります。
正しい敬語表現は「お気を付けください」

出張へ向かう上司や目上の人に「気を付けて」と伝える場合は、「お気を付けください」が正しい敬語表現です。
「お〜ください」は尊敬語にあたる言い回しで、相手への敬意と気づかいをしっかりと示すことができます。
ビジネスシーンでは、次のように会話の流れに合わせて自然に使うのがポイントです。
- 参考
- 【会話例】
上司:「来週、福岡へ出張に行ってくるよ」
部下:「東京からだと長距離のご移動になりますね。どうぞ道中お気を付けください」
上司:「月曜日から1週間、北海道に出張だからその間は頼むよ」
部下:「北海道はもう雪の季節だそうですから、お足元にお気を付けください」
このように、相手の状況に合わせたひと言を添えることで、より丁寧で思いやりのある印象になります。
単に「お気を付けください」と言うよりも、体調・天候・移動距離などに触れることで、気づかいの深さが伝わります。
また、場面によっては「お気を付けください」以外にも「道中の安全をお祈り申し上げます」のような表現もあるので、必要に応じて使い分けましょう。
出張に行く人へ「気を付けて」を使う際の注意点

出張へ行く相手を思いやる言葉として「気を付けて」は便利な表現です。
しかし、ビジネスシーンでは相手に合わせた表現ができていないと、相手に誤解を与える可能性があります。
特に出張へ行く上司や取引先など、立場が上の相手に対しては、配慮のある言葉遣いが必要です。
- 相手の体調や状況に配慮した一文を添える
- 活躍を祈る一文を添える
- 「頑張ってください」は使用しない
ビジネスメールを書く際の3つの注意点を押さえて、失礼のない伝え方を身につけましょう。
①相手の体調や状況に配慮した一文を添える
出張へ行く上司や目上の人に言葉をかけるときは、相手の体調や状況に寄り添った一文を加えるのがポイントです。
形式的な言葉だけで終わらせず、相手の出張先や天候などに合わせて内容を変えると、印象がぐっと良くなります。
- 参考
- 【例文】
・本州では春めいてきましたが、北海道はまだ冷え込むようです。どうぞご自愛くださいませ。
・悪天候の予報が出ております。くれぐれも無理をなさらず、安全第一でお過ごしください。
このように、相手の状況に寄り添った一文を加えると、挨拶が形式的になりすぎず、温かみのあるビジネスコミュニケーションが可能です。
②活躍を祈る一文を添える
上司や目上の人の体調に特別な心配がない場合は、業務での活躍や成功を祈る一文を添えると良い印象を与えられます。
「お気を付けて」という言葉に加えて、相手の成果を願う気持ちを伝えることで、形式的にならず、前向きで温かみのある挨拶になります。
- 参考
- 【例文】
・ご出張、お気を付けて行ってらっしゃいませ。現地でのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
・ご出張先でのご成功をお祈りいたします。お気を付けてお出かけください。
出張の理由が学会への出席や報告会の場合は、「実りあるご出張になりますようお祈り申し上げます」と添えるのも良いでしょう。
③「頑張ってください」は使用しない
出張へ向かう上司や目上の人に対して「頑張ってください」と伝えるのは、避けたほうが無難です。
「頑張る」という言葉には「困難に耐えて努力する」というニュアンスがあり、上から目線の激励として受け取られることがあります。
そのため、ビジネスシーンでは「応援する言葉」や「成功を祈る言葉」に言い換えるのが基本です。
- 参考
- 【例文】
・ご出張が実り多いものとなりますよう、心よりお祈り申し上げます。
・ご出張が滞りなく進み、素晴らしい成果を収められますようお祈りいたします。
相手への敬意を保ちながらも、応援の気持ちや期待を自然に伝えられる表現を使ってください。
出張に行く人への「気を付けて」を言い換えたビジネスメールの例文

先に説明したとおり、「気を付けて」は相手を思いやる表現です。
その考え方はビジネスメールにおいても同じで、上司や取引先など目上の相手には「お気を付けください」などより丁寧な言い回しを用いるのが適切です。
ここでは、ビジネスで使える言い換え表現と好印象を与える文例を紹介します。メール作成の参考にしてください。
【例文1】社内向けビジネスメール
こちらは夏に東京から大阪へ上司が商談出張に向かう場合を想定した、社内向けビジネスメールの例文です。
体調や移動への配慮を込めて「お気を付けて」を使っています。
また、基本に則って暑さや移動距離に配慮しつつ、簡潔に気遣いを伝えています。
社内向けメールでは、過度な敬語よりも自然な敬意を意識し、業務連絡とねぎらいの一言をバランスよく組み合わせると好印象です。
- 参考
- ○○部長
ご出張お疲れ様です。暑さの厳しいなかでのご移動かと存じますので、どうぞお気を付けて行ってらっしゃいませ。
現地でのご商談が実りあるものとなりますよう、お祈り申し上げます。
なお、○○の件につきましては、部長のご不在中も滞りなく進めてまいります。
【例文2】社外向けビジネスメール
こちらは、取引先の担当者から「出張で不在」と連絡を受けた際に返信する社外向けビジネスメールの例文です。
訪問先や目的が不明な場合でも、相手の立場を尊重しつつ安全を気遣う一文を添えることで、丁寧で信頼感のある文章にできます。
社外向けビジネスメールでは、直接的な指示や馴れ馴れしさを避ける書き方が無難です。
「お気を付けて」と伝えつつも文語調でまとめると、より洗練された印象の文にまとめられます。
- 参考
- ○○株式会社
○○様
いつも大変お世話になっております。
ご出張のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
ご多忙の折とは存じますが、どうぞお気を付けてお出かけくださいませ。
ご出張先でのご対応が円滑に進みますよう、心よりお祈り申し上げます。
「気を付けて」以外の類似表現

出張や移動をする人を送り出す丁寧な表現は、「気を付けて」以外にもいくつかあります。
状況や関係性に合わせて言葉を選ぶと、より自然に敬意を示せる伝え方ができます。
- ご自愛くださいませ
- 道中の無事をお祈り申し上げます
- くれぐれも無理をなさらず
これらはすべて「気を付けて」と同様に相手を思いやる気持ちを伝える表現です。ビジネスシーンではTPOに合わせて使い分けましょう。
①ご自愛くださいませ
相手の健康や体調を気遣う場合では、「ご自愛くださいませ」と言い換えることができます。
主に、出張などで多忙な相手へのねぎらいの言葉としてよく使われます。
また、長距離の移動や寒暖差のある地域への出張など、環境の変化に対する体調を気遣う際にも適した表現です。
- 参考
- 【例文】
・長距離のご移動かと存じます。どうぞご自愛くださいませ。
・昼夜の気温差が大きいようですので、どうぞご自愛くださいませ。
「ご自愛くださいませ」は、フォーマルながらも温かみのある言葉であり、さまざまなビジネスシーンで使える汎用性の高い表現です。
ちなみに、出張から帰ってきた相手に対しては、「どうぞごゆっくりお体をお労(いたわ)りください」と伝えるのもおすすめです。
相手の体の回復を祈る言葉なので、出張帰りの人にも適しています。
②道中の無事をお祈り申し上げます
「道中の無事をお祈り申し上げます」は、出張などで長距離の移動を伴う相手に対して、安全を願うときに適した丁寧な表現です。
また、海外をはじめ治安や環境が大きく異なる場所に出張に行く場合にも使えます。
- 参考
- 【例文】
・長旅になるかと存じます。道中の無事をお祈り申し上げます。
・海外へのご出張とのことで、道中の無事をお祈り申し上げます。
「道中の無事をお祈り申し上げます」はフォーマルで改まった印象を与えるため、取引先や目上の人へのメールにも適しています。
③くれぐれも無理をなさらず
相手の体調や負担を気遣うだけでなく、あえて念を押して注意を促すニュアンスなら、「くれぐれも無理をなさらず」がおすすめです。
「くれぐれも」には「重ね重ね」「特に」という強調の意味があり、相手に対して丁寧に注意を伝えたいときに使えます。
- 参考
- 【例文】
・ご多忙のことと存じますが、くれぐれも無理をなさらずお過ごしくださいませ。
・長距離のご移動かと存じます。くれぐれも無理をなさらず、どうぞお気を付けて行ってらっしゃいませ。
「くれぐれも」は、ビジネスでも日常でもよく使われる副詞表現です。
かしこまったビジネスシーンでも活用できますが、相手への忠告や懇願の意味合いが強いので、ここぞというときに使うのがおすすめです。
出張に行く人へ「気を付けて」と伝える英語表現をご紹介

ここでは、出張や移動の際に使える「気を付けて」の英語表現をピックアップし、それぞれのニュアンスや使い方を解説します。
- Wishing you a safe and successful trip.
- Safe travels, and take good care.
- Wishing you safety and success throughout your trip.
状況に応じた英語表現を選ぶことで、たとえ母語が違っても、相手に思いやりの気持ちをしっかり伝えられます。
①Wishing you a safe and successful trip.
- 【活躍や成果を願う英語表現】
- Wishing you a safe and successful trip.
(安全で実りある出張になることをお祈りします。)
「successful」には「成功した」「上出来の」という意味があります。
出張中の安全だけでなく、仕事の成果や良い経験を願うニュアンスを含む表現です。
- 参考
- 【会話例】
A:I’ll be on a business trip next week.(来週は出張なんです。)
B:Wishing you a safe and successful trip.(安全で実りある出張になりますように。)
ビジネスでは「trip」だけで「出張」という意味が通じますが、より明確に伝えたい場合は「business trip」を使うと良いでしょう。
よりカジュアルに「楽しい旅を」という場合は、「safe and pleasant trip」への言い換えもできます。
②Safe travels, and take good care.
- 【道中の安全を祈る英語表現】
- Safe travels, and take good care.
(道中の無事を祈っています。どうかお気を付けて。)
この表現は、長距離の移動を伴う出張や、天候が荒れそうな時期に使いやすい英語のフレーズです。
「Safe travels」は直訳すると「安全な旅を」ですが、英語圏では「道中お気を付けて」という自然な挨拶としてよく使われます。
「take good care」には「体を大切に」「気を付けて過ごして」という意味があり、相手の健康や安全を願うニュアンスを柔らかく伝えます。
- 参考
- 【会話例】
A:The weather looks bad for tomorrow’s flight.(明日のフライト、天気が悪そうですね。)
B:Safe travels, and take good care.(道中お気を付けて。どうぞご無事で。)
フォーマルすぎず、温かみのある言葉として、ビジネスだけでなくカジュアルな場面でも使える便利な表現です。
③Wishing you safety and success throughout your trip.
- 【長期間の出張の安全を祈る英語表現】
- Wishing you safety and success throughout your trip.
(出張の間、ずっと安全と成功を祈っています。)
相手が数週間から数か月にわたる長期出張に行くなら、こちらの英語フレーズがおすすめです。
「throughout your trip」には「出張期間を通じてずっと」「その間終始」という意味があり、旅の始まりから帰国までを気遣うニュアンスを含みます。
つまり、単なる挨拶ではなく、長期にわたり健康と成果を願っていることも伝えられます。
- 参考
- 【会話例】
A:I’ll be staying in Singapore for two months for a project.(2か月ほどシンガポールに滞在する予定です。)
B:Wishing you safety and success throughout your trip.(ご出張中の安全と成功をお祈りしています。)
フォーマルな印象を保ちつつ、相手への敬意と気遣いを含む表現です。
出張に行く人へ「気を付けて」と伝える際は表現を工夫しよう

「気を付けて」はもともと相手への注意喚起の言葉です。
ビジネスでは、相手の無事や成功を祈る気持ちを込めて使われる傾向にあります。
上司や取引先など目上の人に対しては、「お気を付けください」と敬語表現に言い換えるのが基本です。
また、「ご無理なさらず」「ご活躍をお祈りしております」など、相手の体調や状況に配慮した一文を添えれば、より温かみのある印象を与えられます。
相手を気遣うひと言は信頼の第一歩です。今日から意識して、より丁寧なコミュニケーションを心がけてみましょう。
