「お待たせして申し訳ございません」は、ビジネスシーンでよく使用される謝罪の表現です。
ビジネスでは、約束の時間に遅れて取引先との商談を急ぎ足でやらざるを得なかったり、納品物の提出期限に間に合わずプロジェクトの進行を止めてしまったり、待たせてしまうことで業務に支障が出る場面はたくさんあります。
そんな時に、「お待たせして申し訳ございません」と使うことで、待たせてしまった相手に謝りたい気持ちを伝えられるのです。
しかし「関係性を問わず誰にでも使える言葉なのか」「そもそも正しい敬語なのか」など、使い方について考えたことがある人もいるのではないでしょうか。
本記事では「お待たせして申し訳ございません」の意味や使用例、注意点などを解説します。言い換え表現や英語での例文も紹介するので、正しい使い方をマスターしましょう。
「お待たせして申し訳ございません」は上司や目上の人に使用して良い
「お待たせして申し訳ございません」は、ビジネスシーンにおいて上司や先輩、取引先といった目上の人に使用できます。このフレーズは、目上の人を自分の都合で長く待たせてしまった時に、謝罪する意味で用いる言葉です。
目上の人を待たせてしまった際、家族や友達に言うように「待たせてごめん」とラフな言葉を使うわけにはいきません。
礼儀正しく、相手に不快感を与えないように謝る方法として「お待たせして申し訳ございません」を使います。
言い方や状況次第では目上の人の逆林に触れるケースもあるため、なかなか「お待たせして申し訳ございません」と言うタイミングが分からなくなってしまう人もいるかもしれません。しかし、謝罪の言葉を伝えないまま謝るタイミングを逃してしまうと、相手から悪い印象を持たれ、信頼関係に亀裂が入ってしまいます。
「お待たせして申し訳ございません」とスムーズに言えるよう、次の項目で解説する正しい意味と語源も覚えておきましょう。
「お待たせして申し訳ございません」の意味と語源
「お待たせして申し訳ございません」は「お待たせする」と「申し訳ございません」の2つのフレーズから成り立っています。
『goo辞書』によると「待つ」の意味は以下の通りです。
出典: goo国語辞書「待つ(まつ) とは? 意味・読み方・使い方」(参照 2024-10-02)物事・人・時が来るのを予期し、願い望みながら、それまでの時間を過ごす。また、用意して備える。
「待たせる」は、動詞「待つ」の未然形である「待た」と、使役の助動詞にあたる「せる」を合わせた言葉です。そこに、相手への敬意を表す「お」を最初につけることで、「お待たせする」という丁寧かつ敬意を示せる表現になります。
ちなみに、「待」という漢字は、道の脇に立っている人の象形文字から派生したとされており、何かを手に持った状態で足を止める様子を表現しているのが語源となっています。
そして「申し訳ございません」は、形容詞である「申し訳ない」に、「ありません」の丁寧語にあたる「ございません」を組み合わせた言葉で、心をこめて丁寧に謝罪したい時に適しています。
「申し訳ない」は「言い訳のしようがない、弁解の余地がない」という意味の相手に詫びを入れる時の言葉です。
つまり「お待たせして申し訳ございません」は、「期待させる時間を過ごさせてしまったことに対して深く謝罪する」という意味になります。
なお、このフレーズを使う相手は、上司や先輩、取引先、顧客といった目上の人限定です。同僚や後輩に使ってしまうと、相手によそよそしい印象を与えてしまうので、「待たせてすみません」などラフな表現に言い換えましょう。
「お待たせして申し訳ありません」とはどう違う?
「お待たせして申し訳ありません」は、「お待たせして申し訳ございません」と同様に、自分の都合で待たせてしまった相手に謝罪する表現です。
とてもよく似た表現ですが、「ありません」「ございません」とでは「丁寧さ」が異なるので、使うシーンに注意が必要です。
「申し訳ありません」は、「申し訳ない」をより丁寧にした謝罪表現で、ビジネスシーンを含むさまざまな場面で使われます。「申し訳ございません」は、先述した通り「申し訳ありません」をさらに丁寧にした言葉で、さらに丁寧かつフォーマルな印象になります。
そのため、丁寧さの度合いは、「ありません」より「ございません」のほうが強いです。
ビジネスの場合、基本的にシーンを問わず「お待たせして申し訳ありません」を使っても問題ありません。
ただし、「待たせてしまったばかりに業務に支障が出るほど相手に迷惑をかけてしまった」といった軽い謝罪だけでは済まされないような事態が起きた際は、「お待たせして申し訳ございません」を使うのが適切と言えます。
謝らなければいけない状況や相手との関係性に応じて、「ありません」と「ございません」を上手く使い分けていくのがポイントです。
「お待たせして申し訳ございません」の使用例
「お待たせして申し訳ございません」は、自分の都合で待たせてしまった目上の人に対して使うのが一般的です。
「お待たせして申し訳ございません」の使用例は以下の通りです
・現在店内は大変混み合っておりますので、ご案内までに30分ほどお時間をいただいております。お待たせして申し訳ございません。
・現在システム障害が発生しております。お待たせして申し訳ございませんが、復旧まで今しばらくお待ちいただけますと幸いです。
・お待たせして申し訳ございません。こちらがお品物になります。
このフレーズを使う際に適した場面は、主に2通りあります。
- 待たせている相手に事情を説明する時
- 相手を待たせている状況が終わることを伝える時
ビジネスをするうえで、待たせている相手が「なぜ待たされているのか」「いつまで待てばいいのか」といった疑問を抱く状況を作るのは、信頼関係にヒビが入る原因になりうるため、なるべく避けなければいけません。
今後のビジネスに支障をきたす事態が起きないように、待たせてしまった経緯や現時点で分かっている情報などを説明して、相手の不安を取り除くことを心がけましょう。
待たせている相手に事情を説明する際に、「お待たせして申し訳ございません」を使ったチャット・メールの例文は、以下の通りです。
- 参考
- 〇〇部長
お疲れ様です。△△です。
本日15時からの会議ですが、ただいま●●社との商談が長引いており、30分ほど遅れる見込みです。
私のスケジュール管理の甘さにより、お待たせして申し訳ございません。
今後は、前後にゆとりを持ったスケジュールを組んでまいります。
ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。
また、「お待たせして申し訳ございません」は、待たせている状況が終わる旨を相手に伝える際の前置きとして謝罪の言葉を添えたい時にも使用できます。
「お待たせして申し訳ございません」を使って相手を待たせている状況が終わることを伝えられるチャット・メールの例文は、以下の通りです。
- 参考
- 〇〇様
お世話になっております。
株式会社△△の●●です。
お問い合わせいただいた件に関しまして、お待たせして申し訳ございません。
ご要望のデータを添付ファイルにてお送りいたします。
ご不明点やご質問等ございましたら、本メールに返信いただきますようお願い申し上げます。
「お待たせして申し訳ございません」をビジネスで使う時の注意点
「お待たせして申し訳ございません」は、自分の都合で遅れたことで謝罪が必要なシーンでよく使われるフレーズです。
しかし、使用する相手を間違えたり言葉足らずだったりすると、逆に相手を不快にさせてしまう可能性があるため、決して「万能な謝罪表現」ではない点は理解しておきましょう。
ここでは、「お待たせして申し訳ございません」をビジネスで使う際の注意点を解説します。注意点をしっかり押さえて、使い方をマスターしましょう。
【注意点1】上司や目上の人に限定して使用する
先述した通り、「お待たせして申し訳ございません」を使うのは、上司や先輩、取引先、お客様など、目上の人限定です。
同僚や後輩、友人などに対して「お待たせして申し訳ございません」と言うと、仰々しい印象を持たれたり、丁寧すぎて逆に嫌味だと思われたりする可能性があるので注意してください。
対等な人や目下の人には、「待たせてすみません」「待たせてごめんね」のようなややカジュアルな表現を使ったほうが自然です。
なお、相手との親密度によっては、たとえ目上の人であっても普段から砕けた敬語で会話をしている場合もあります。距離感の近い目上の人に対しても、「お待たせして申し訳ございません」とかしこまった言い方をしたほうがいいのか悩む人もいるのではないでしょうか。
その場合、謝罪する状況によって表現方法を変えるのがおすすめです。
たとえば、職場の飲み会に仕事の都合で上司より遅く合流した場合、「お待たせしてすいません!」とフランク気味に伝えれば、場の空気を変えずにさらっと謝罪できます。
一方で、期限内に資料を作成できない状況を上司に報告する場合の「お待たせして申し訳ございません」は、自分の都合で上司の手を煩わせてしまうことへの深い謝罪表現として適しています。
「親しき中にも礼儀あり」という言葉があるように、普段はフランクな言葉を混ぜて話している間柄でも、必要に応じて丁寧な言葉遣いもできるように意識しましょう。
【注意点2】どのくらい待たせてしまうのか目安も一緒に伝える
待たせている以上「お待たせして申し訳ございません」と謝罪するだけでなく、いつまで待つ必要があるのかも併せて伝えましょう。
・お待たせして申し訳ございません。〇日までにお届けします。
・お待たせして申し訳ございません。〇時頃に到着いたします。
・お待たせして申し訳ございません。確認後、本日〇時までに回答いたします。
もちろん謝罪の言葉も大切ですが、待たされる側が知りたいのは「いつまで待てばいいのか」です。そのため、「謝罪+お待たせする期間の目安」を伝えれば、相手はまだ寛大な対応をしようと思えます。
とは言え、現時点ではどのくらい待たせてしまうのかが分からないケースも珍しくありません。
おおよその期間も伝えられない場合、現状相手にどのくらい待ってもらうのか分からない旨を正直に伝えたうえで、「正確な日時(期間)が分かり次第、早急にご連絡いたします」と分かった時点ですぐに共有することを伝えてください。
また、状況が変わり待たせる期間も変更になった時は、その都度連絡を入れるのも重要です。
待たせてしまった相手に気の利いた一言が言えるようになれれば、自分の評判が下がる可能性を最小限に抑えられるでしょう。
ビジネスメールでの「お待たせして申し訳ございません」を言い換えた使用例文
「お待たせして申し訳ございません」は、以下の表現に言い換えられます。
- 大変お待たせして申し訳ございません
- お時間を頂戴し申し訳ございません
- お待たせいたしました
ビジネスシーンにおいて、謝罪の言葉のバリエーションを広げていくことはとても重要です。
ここでは、ビジネスメールで使える「お待たせして申し訳ございません」の言い換え表現を紹介します。どのようなシーンで使うのに適しているかも解説するので、状況に応じて使い分けましょう。
【例文1】「大変お待たせして申し訳ございません」
「大変お待たせして申し訳ございません」は、相手を待たせてしまった事実を深く謝罪する時に適した言葉です。
ここでの「大変」は「程度がはなはだしいさま」という意味を持ち、最初に付けることで対象の事柄の程度をより強調できます。似た表現として、「とても」「非常に」「甚(はなは)だ」などが挙げられます。
「待たせてしまい大変(非常に)申し訳なく思っている」旨を丁重に伝えたいシーンにぴったりです。
また、先に相手から待たされていることを主張された場合、「大変お待たせして申し訳ございません」はなるべく文の最初に入れて、先に謝罪の気持ちを強く示すのもおすすめです。
さらに、長時間相手を待たせてしまった場合は「大変長らくお待たせしました」とすることで、長い時間待たせてしまったことに対する遺憾の意も示せます。
ここでは、上司からプロジェクトの進捗報告の催促メールが来た時の返信メールの例文を紹介します。
- 参考
- 〇〇部長
お疲れ様です。△△です。
大変お待たせして申し訳ございません。
●●のプロジェクトの進捗状況を報告いたします。
現在の進捗状況は以下の通りです。
{略}
ご確認のほどよろしくお願いいたします。
【例文2】「お時間を頂戴し申し訳ございません」
「お時間を頂戴し申し訳ございません」は、相手に時間をいただいている状況を謝罪する時によく使われるフレーズです。
「相手の貴重な時間をいただく=相手を待たせる」という意味も含まれるため、謝罪の気持ちを表すのと同時に、時間をもらっていることに対する敬意も示せます。
ちなみに、「お時間を要して」は「お時間を頂戴し」と同じような意味を持ちますが、「要して(要する)」自体は敬意を表す言葉ではありません。「お時間を頂戴して~」の「頂戴」は「もらう」「受け取る」の謙譲語のため、「お時間を要して」より丁寧でかしこまった印象になります。
待たせてしまうのが確定した時点で「お時間を頂戴し申し訳ございません」や「お時間をいただき申し訳ございません」などを使えば、相手に最大限の謝罪と敬意を伝えられるでしょう。
ここでは、システム障害の復旧を待つ顧客に向けたメールの例文を紹介します。
- 参考
- 〇〇様
いつも弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
本日発生したシステム障害のため、現在サービスをご利用いただけない状況が続いております。
多大なるご迷惑をおかけしていること、深くお詫び申し上げます。
現在復旧作業を進めており、復旧の見込みについては本日夕方頃を予定しております。
お時間を頂戴し申し訳ございませんが、今しばらくお待ちいただけますと幸いです。
【例文3】「お待たせいたしました」
「お待たせいたしました」は、待たせたことを詫びるシンプルな表現です。
相手を待たせてしまったあと、対応を始める直前に用いる言葉であり、基本的に今後待ち時間が発生する可能性がある場合は使用しません。
また、「お待たせいたしました」には「申し訳ございません」や「お詫び申し上げます」のような明確な謝罪表現が入っていません。そのため、大々的に「申し訳ありません」と謝罪するほどではない場面で使うのに適しています。
「お待たせいたしました」を使ってしっかり謝罪の気持ちを表現したい場合は、併せて「遅くなり申し訳ございません」のような言葉を付け加えるのがおすすめです。
ここでは、上司に発注完了の報告をする場面でのメール例文を紹介します。
- 参考
- 〇〇部長
お疲れ様です。△△です。
お待たせいたしました。
先日ご依頼いただいた●●の発注手続きが完了いたしました。
取り急ぎメールにてご報告いたします。
今後何か進展がありましたら、随時ご報告いたします。
「お待たせして申し訳ございません」の英語表現をご紹介
「お待たせして申し訳ございません」を英語で表現すると「I am sorry for keeping you waiting.」もしくは「I am sorry to have kept you waiting. 」になります。
「sorry for ~ing」と「sorry to」は、謝罪する対象によって使い分けます。
【sorry for ~ing】
すでに起きてしまった事実に対して「~して申し訳ない」と明確な理由も添えて謝罪する時に適しています。「sorry for keeping you waiting.」は「待たせてしまって申し訳ない」という意味になり、会話の最後に使われるのが一般的です。
【sorry to】
リアルタイムに起きている行動や今後迷惑をかけることに対する謝罪を示します。「sorry to have kept you waiting.」は「待たせる行為が続いて申し訳ない」という意味になり、会話の最初に使われる場合が多いです。
他にも「お待たせして申し訳ございません」と似た意味を持つ英語表現がいくつかあるので、チェックしておきましょう。
I apologize for taking your time.(お時間を頂戴し申し訳ございません)
I apologize for the delay.(遅れて申し訳ありません)
I am sorry for the long wait.(長くお待たせして申し訳ありません)
「apologize」は日本語で「謝る」を意味するため、「I apologize for taking your time.」は「お時間を頂戴し申し訳ございません」という意味になります。
また、待たせたことを「遅れ」を意味する「delay」で表現して謝罪するのも一般的です。
そして、「I am sorry for the long wait.」は長時間待たせた時に使えるフレーズになります。
「お待たせして申し訳ございません」はチャットやメールのみで使おう
「お待たせして申し訳ございません」は、主に自分の都合で待たせてしまった目上の人に謝罪する時に用いる表現です。
ビジネスの場では、どうしても相手を待たせてしまうシーンも出てきてしまいがちです。そんな時に「お待たせして申し訳ございません」と適切に言えるようになれば、目上の人との関係を悪化させることなく仕事を円滑に進められます。
最後に、本記事の大切なポイントを振り返ります。
- 「お待たせして申し訳ございません」は、主に上司や目上の人に使う
- お待たせしている原因や待ち時間の目安を伝える
- 伝えるタイミングや待たせた時間に応じて、似たニュアンスを持つ別の表現を使い分ける
適切な場面で正しい謝罪を行えるのは、ビジネスマンとして重要なスキルの一つです。この記事を参考に、正しい敬語を習得して仕事に活かしていきましょう。