「左様でございます」(さようでございます)はビジネスでもよく使う、相手に対して同意を示す言葉です。
しかし、具体的にどのようなシーンで使えば良いのか、目上の人に対して使って良いのかなど、使い方に迷ってしまう方もいらっしゃるでしょう。
本記事では「左様でございます」の正しい意味や使用方法、適切な言い換え表現、さらには英語での表現方法について詳しく解説します。
特にビジネスシーンで使う際は、相手とのコミュニケーションを円滑にするために、注意点も理解しておく必要があります。
ぜひ最後までお読みいただき、「左様でございます」という言葉の活用法を身につけてください。
「左様でございます」は目上の人に使用して良い
「左様でございます」は、ビジネスシーンにおいて上司や取引先などの目上の人に使用しても問題ありません。
このフレーズは、「そのとおりでございます」や「おっしゃるとおりでございます」と同じ意味を持つ類語で、相手の発言や確認事項などに対して同意をする際に用いられます。
かなり丁寧でかしこまった敬語ですが、二重敬語には当たらない正しい敬語のため、目上の人に使用しても失礼にはなりません。
また、会話はもちろん、電話やメールでも使える表現で、顧客対応やフォーマルな場でも使用できます。
相手の意見や指示に対して「そのとおりです」と丁寧に同意を示せると、円滑なコミュニケーションを図れます。
的確なタイミングで相手に同意を示すことはビジネスにおいて非常に重要なので、状況に応じて使っていきましょう。
「左様でございます」の意味
「左様でございます」は、相手の発言に同意や肯定を示す際に使用される敬語表現です。
主に「そのとおりです」や「そうです」といった意味合いで用いられ、ビジネスシーンやフォーマルな場面でよく使われています。
『デジタル大辞泉』によると、左様(然様)の意味は以下です。
出典: コトバンク(デジタル大辞泉)「然様」(参照 2024-10-21)1.そのよう。そのとおり。「―なことはございません」「はい、―でございます」
2.相手の言ったことを肯定したり、自分の思い出したことにうなずいて話し出したりするときに発する語。そう。「―、あれは去年の暮れのことであった」
ちなみに、左様の「左」の字は当て字で、本来は「然様」と書きます。
日本では、「左上右下」という伝統的な考え方があるように、古くから右よりも左を上位とするしきたりがあります。そのため、「そのとおり」という意味の「然」を「左」の当て字に置き換えて、相手に敬意を表しながら同意をする「左様」という書き方が生まれたといわれているのです。
とはいえ、「左様」自体は敬語表現ではないので、目上の人に使う場合は「ある」の丁寧語である「ございます」を付けると、敬意を込めた丁寧なニュアンスにすることができます。
「左様でございます」の使用例
「左様でございます」は、仕事上で上司や取引先、顧客の問い合わせや質問などに同意する際によく使われます。
ここではビジネスシーンを想定して、相手や状況に合わせた「左様でございます」の使用例を紹介します。
具体的な使用例は以下のとおりです。
【使用例1】
-
上司:「会議で使う資料の提出期限は来週でしたよね?」
-
Aさん:「左様でございます。今週末までに準備いたします。」
【使用例2】
-
取引先:「このプロジェクトの担当はAさんで合っていますか?」
-
Aさん:「左様でございます。そちらのプロジェクトの担当はAさんです。現在の進捗状況は〇〇です。」
使用の際は「左様でございます」と同意するだけなく、相手の確認事項を復唱したり、次にとる予定の内容を添えたりすると、より丁寧さが増します。
また、「左様でございます」は、最後に「か」をつけて「左様でございますか」とすることで、相手の発言を受け止めるあいづちの意味にもなります。
具体的な使用例は以下のとおりです。
【使用例】
-
取引先:「契約条件について不備があるように思います。ご認いただけますか。」
-
あなた:「左様でございますか。大変申し訳ございません。至急確認いたします。」
「左様でございますか」を使って一度相手の言い分を肯定することで、丁寧に相手の意見に向き合おうとする姿勢を示せます。
「左様でございます」と「おっしゃるとおりでございます」の違い
「左様でございます」と「おっしゃるとおりでございます」は、どちらも相手の発言に同意を示す敬語表現で、ほぼ言い換え表現として使用可能ですが、ニュアンスに若干の違いがあります。
「左様でございます」は、相手の発言への同意を丁寧に伝える際に使用される言葉ですが、「おっしゃるとおりでございます」は「言う」の尊敬語である「おっしゃる」を使用していることから、より相手に対する敬意や同意の気持ちを強調できる表現です。
「おっしゃるとおりでございます」は相手の意見に強く同意し、さらにその意見を尊重するという意図を含んでいるので、相手の発言に対して深い賛同を示したいときに使うのがおすすめです。
【使用例1】
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取引先:「このプロジェクトはA案を採用することになったのでしたよね?」
-
Aさん:「左様でございます。早速対応いたします。」
【使用例2】
-
上司:「資料のミスが多いので、チェック体制を見直した方が良さそうですね。」
-
Aさん:「部長のおっしゃるとおりでございます。同様のミスが生じないようにダブルチェックを徹底してまいります。」
伝えたいニュアンスや状況に応じてより適切な表現を使い分けましょう。
「左様でございます」をビジネスで使う時の注意点
ビジネスシーンにおいて「左様でございます」と丁寧に同意をすると、円滑なコミュニケーションの一助となります。
しかし、誤った使い方をしてしまえば、かえって相手に不快感を与えてしまう可能性があるので注意が必要です。
ここでは「左様でございます」をビジネスで使用する際の注意点を2つご紹介します。
- 相手との関係性を考慮する
- 何度も使うのは避ける
これらの注意点について、詳しく見ていきましょう。
【注意点1】相手との関係性を考慮する
「左様でございます」は、上司や取引先といった目上の人に対して使用できる、かなり丁寧な印象を与えられる敬語表現です。
しかし、「左様でございます」は古典的で形式ばった表現でもあるため、日常会話やカジュアルな場面では適切ではありません。
ビジネスにおいても親しい関係性の相手に対して使うと、不自然な印象を与えてしまうケースがあります。
親しい上司などに使ってしまうと、距離があるように思われてしまったり嫌味と捉えられてしまったりする恐れがあるので、状況に応じて「おっしゃるとおりでございます」「ごもっともです」「はい、そのとおりです」など、より現代的で柔らかい言い換えを検討することが重要です。
また、たとえ取引先であっても、相手がフレンドリーなコミュニケーションを望んでいるという場合は、使用が適切かどうかを一度検討してみましょう。
【注意点2】何度も使うのは避ける
「左様でございます」は何度も繰り返し使用すると、くどい印象を与えてしまう可能性があります。
同じ表現を連続して使うと、相手に対する敬意が薄れてしまうばかりか、機械的に答えていると思われてしまう恐れもあり、受け手に不快感を与えてしまいかねません。
連発しそうになってしまう場合は、適度に他の表現と組み合わせて使用することが望ましいです。
「おっしゃるとおりでございます」「ご認識のとおりでございます」「ご指摘のとおりでございます」といった類語や、「承知いたしました」や「かしこまりました」といった相手の言い分を受け入れる表現を交えると、文章全体に変化をつけられます。
バリエーション豊かな言葉遣いを心がけることで、丁寧な表現である「左様でございます」がより効果的になります。
ビジネスメールでの「左様でございます」を言い換えた使用例文
ここでは、ビジネスメールで使える「左様でございます」の言い換え例を紹介します。
「左様でございます」は、似たニュアンスを持つ以下のような表現に言い換えられます。
- おっしゃるとおりでございます
- ご認識のとおりでございます
- ご指摘のとおりでございます
- ごもっともでございます
「左様でございます」を連発してしまう、もう少しやわらかい表現を使いたいという場合は、言い換えをすることが大切です。
相手の意見、確認事項に応じて適切な表現を選んで返答し、円滑なコミュニケーションを図りましょう。
【例文1】おっしゃるとおりでございます
「おっしゃるとおりでございます」は、相手の意見や提案を尊重し、強く同意したい際に使用される表現です。
相手の考えをしっかりと受け入れていることを示せるので、提案や指示に対して積極的な賛同を示したい場合に使えます。
以下は、ビジネスメールで「おっしゃるとおりでございます」を使用する例文です。
- 参考
- 〇〇部長
お疲れ様です。営業部の△△です。
ご提案いただいた新しいマーケティング戦略の調整案につきまして、詳細にご説明くださりありがとうございます。
部長のおっしゃるとおりでございます。早速、チームに内容を共有し、実行に移してまいります。
今後ともご指導のほど何卒よろしくお願いいたします。
このように「おっしゃるとおりでございます」を使用することで、相手の意見に対する深い賛同と尊重の気持ちを効果的に伝えられます。
ビジネスシーンにおいて、円滑なコミュニケーションを図るために適切な言葉遣いを心がけましょう。
【例文2】ご認識のとおりでございます
「ご認識のとおりでございます」は、相手の認識に対して同意を示す際に使用される表現です。
相手がすでに知っている情報や持っている意見に対して賛同をする場合に適しています。
また、相手の意見を尊重し、自分が共通の理解を持っていることを強調できる効果もあります。
以下は、ビジネスメールで「ご認識のとおりでございます」を使用する例文です。
- 参考
- 〇〇部長
お疲れ様です。営業部の△△です。
先日のミーティングにおいてご質問いただいた新しい販売戦略について、ご認識のとおりでございます。
ターゲット市場の拡大とオンライン販売の強化が重要なポイントですので、これに基づいてチーム一同で具体的な実施計画を策定し、今月中に再度ご報告いたします。
お待たせしてしまい申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。
「ご認識のとおりでございます」を使う際には、念のために相手が認識している内容を改めて具体的に述べ、誤解を防ぎスムーズなコミュニケーションを図ることも重要です。
【例文3】ご指摘のとおりでございます
「ご指摘のとおりでございます」は、相手から受けた指摘やアドバイスに対して同意し、受け入れる際に使用される表現です。特に、ミスや問題点を指摘された場合に適しています。
この表現を用いると、相手の指摘内容を認識し、さらに改善の意志があることも示せます。
以下は、ビジネスメールで「ご指摘のとおりでございます」を使用する例文です。
- 参考
- 〇〇部長
お疲れ様です。営業部の△△です。
先日お送りした報告書につきまして、ご指摘のとおりでございます。
誤りを訂正し、再度添付いたしました。今後はこのようなミスがないよう、細心の注意を払って業務に努めます。
お忙しいところ恐縮ですが、改めましてご確認いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
このように、「ご指摘のとおりでございます」を使用する際は、今後の対応策も添えることで、相手の指摘内容を深く受け止め、改善しようする意欲がある点を伝えられます。
【例文4】ごもっともでございます
「ごもっともでございます」は、相手の意見や主張に対して強く同意し、納得していることを示す表現で、相手の意見を全面的に支持しているニュアンスを与えられます。
特に、会議やディスカッションで提案や意見に賛同したり、取引先や顧客から改善要望を受けてその内容に共感を示したりする場面で使われます。
以下は、ビジネスメールで「ごもっともでございます」を使用する例文です。
- 参考
- 〇〇部長
お疲れ様です。営業部の△△です。
先日のミーティングにおいてご提案いただいた新しい販売戦略について、ごもっともでございます。
市場の動向を踏まえた戦略は非常に効果的であると考えておりますので、早速チームに共有し、具体的な実施計画を策定いたします。
今後とも何卒ご指導のほどよろしくお願いいたします。
このように「ごもっともでございます」を使用することで、相手の意見に対する深い賛同と尊重の意思を伝えることができます。
ちなみに、相手の意見を尊重しながらも、異なる意見を主張したいときは「ごもっともですが~」と表現する場合もあります。
【番外編】そうですか・そうなんですね・初めて知りました
「そうですか」「そうなんですね」「初めて知りました」は、「左様でございます」「左様でございますか」のカジュアルな言い換え表現として使用されます。
これらの表現は、日常会話や親しい間柄での口語のコミュニケーションに適しており、軽い同意や驚きを示してあいづちとして使用する際に便利です。
これらの表現は砕けた印象を与えるので、ビジネスメールやフォーマルな場面では避けるべきです。
ビジネスシーンでは、相手に対する敬意を示すために、より丁寧で正式な表現を選ぶことが求められます。
たとえば、「そうですか」や「そうなんですね」は「左様でございますか」や「かしこまりました」「承知いたしました」といった、同意の表現を使用するのが無難です。
また、「初めて知りました」は「新たな情報をご共有くださりありがとうございます」「初めて伺いました」といった、適切な敬語表現に言い換えられます。
相手との関係性や状況に応じた言葉遣いを心がけることで、誤解や不快感を避けられます。
いくつか類似の表現を把握しておき、使い分けるようにしていきましょう。
「左様でございます」の英語表現をご紹介
「左様でございます」を英語で表現すると、「You are right.(That’s right)」や「You are correct.(That’s correct. )」「You are true.(That’s true.)」「exactly.」「absolutely.」「definitely.」「certainly.」「precisely.」などが適切です。
「左様でございます」を英語で表現する際は、状況やニュアンスに応じて適切なフレーズを選ぶことが重要です。
「You are right.(That’s right)」や「You are correct.(That’s correct. )」「You are true.(That’s true.)」は、いずれも相手が言っていることを正しいと認める時に使える一般的な同意表現であり、日常会話からビジネスシーンまで幅広く使用できます。
ただし、同意する内容については、下記のようにニュアンスが若干異なるので注意しましょう。
- right: 社会的や道義的に正しい。意見や判断などが正しい
- correct: 欠点・間違いなどがなく正しい、正確な、正解である
- true: 真実の、偽りのない
「exactly.」「absolutely.」「definitely.」「certainly.」「precisely.」といった一単語のみで同意を示せる表現も、その場の状況に応じて使用可能です。
「exactly.」や「precisely.」は「正確に」「ぴったり」「的確に」といった意味で、相手の言い分が正確なときによく使われます。
「definitely.」「absolutely.」「certainly.」はかなり強い同意の表現で、疑いようのない事実や「まったくもってそのとおり」と強く賛同したいときに使われる言葉です。「自分もそうだと思う」という、自分自身の信念も込めたいときは「certainly.」が適しています。
また、かなりフォーマルな場面で格調高い表現を使用したいときは「Indeed」も候補に挙がります。年配の人が使うような堅い表現なので、年齢がかなり上の相手や重役に就いている上司、重要な取引先に対して使うことが多いです。
以下は、「左様でございます」の英語表現を使用した例文です。
- 参考
- ・Thank you for your suggestion. You are correct. We will deal with this immediately. (ご提案ありがとうございます。おっしゃるとおりでございます。ただちに対応いたします。)
・That’s true. We need to align our strategies to make this project a success. (左様でございます。私たちはこのプロジェクトを成功させるために、戦略を合わせる必要があります。)
・Exactly. Your insights are valuable to our project. (そのとおりでございます。あなたの洞察は我々のプロジェクトにとって貴重です。)
・Indeed, we need to focus on improving customer satisfaction. (左様でございます。私たちは顧客満足度の向上に注力する必要がございます。)
また「そうですか」「そうなんですね」といったあいづちの意味で「左様でございます」を使う場合は、「Is that so?」や「I see.」などの表現がよく選ばれます。
「左様でございます」は相手の発言や意見への同意を伝える表現
おさらい
- 「左様でございます」は相手の意見や発言に同意を示す際に使える
- ビジネスメールや会議など、フォーマルな場面で効果的に使用できる
- 状況や相手に応じて適切な言い回しを選ぶことが重要
「左様でございます」は、相手の発言や意見に対して同意を示す際に使用される敬語表現です。
ビジネスシーンやフォーマルな場面で上司や取引先といった目上の人との信頼関係を築くうえで、非常に有用な表現です。
相手の意見に正しく同意を示すことで、円滑なコミュニケーションが可能となり、信頼関係を強化することができます。
しかし、使い方を誤ると形式的すぎたり、冷たく感じられたりする場合があるので、適切な場面とタイミングで使用することが重要です。
また、相手の意見に対する真摯な姿勢を示すために、単に同意するだけでなく、内容の復唱や次のアクションの内容を添えると、より丁寧さを伝えられます。
正しい言葉遣いを習得し、ビジネスに活かしていきましょう。