「その節は」という表現は、日常シーンやビジネスシーンでよく使われるものの、正確な意味や使い方について悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、使用に適切なタイミングや、相手に失礼にならないように使うにはどうしたら良いかといった点に不安を感じやすいかもしれません。
本記事では、「その節は」の正しい意味、ビジネスシーンでの使用例や類語、英語での表現などを解説します。
実際にビジネスメールやチャットで使える具体的な使用例も紹介しますので、適切な使い方をマスターし、ビジネスでの円滑なコミュニケーションに役立ててください。
「その節は」は目上の人に使用して良い
「その節は」(そのせつは)というフレーズは、ビジネスシーンにおいて上司や取引先、顧客といった目上の人に使用しても問題ありません。
「その節は」は過去の特定の出来事や時期について話題に出すときに使う言葉です。
フランクな場面でもよく使う「あの時は」「この前は」と比べると、「その折は」「その際は」と同じように、相手に丁寧な印象を与えられる表現でもあります。
ビジネスにおいては、過去に起こったやり取りや特定の時期を振り返りつつ、相手にお世話になった出来事への感謝の意を示したり、迷惑をかけてしまった際の謝罪の意を示したりするときによく使われます。
「その節は」という言葉自体は敬語ではないので、目上の人へ使う場合は失礼に当たらないように、前後の文脈も十分に考えたうえで用いることが重要です。
「その節は」の詳しいニュアンスやビジネスでの具体的な使用例を学び、ビジネスシーンでの円滑なコミュニケーションに使っていきましょう。
「その節は」の意味
「その節は」は、ビジネスにおいて礼儀正しい態度で過去の出来事を振り返りたいときによく使用される表現です。
辞書を引くと、「節」という言葉は以下のように説明されています。
出典: コトバンク デジタル大辞泉「「節」の意味・読み・例文・類語」(参照 2024-11-20)時間的な経過のくぎりめ、または一時期。
「節」とは、「過去のある時点・出来事」を指し、これに「その」という代名詞を加えることで、話し手と聞き手が共に関わっていた事柄を表します。
具体的な日時ではなく「話題に上がっている特定の時期や出来事」を指す言葉であると同時に、対象となるのは、話し手と聞き手双方に接点があった出来事や時期のみに限られます。
その時期全体を振り返って感謝を述べたり謝罪をしたりすることもできるので、ある程度連続した期間内の出来事をひっくるめて話題にしたいときにも便利です。
また、「その節は」自体は敬語表現ではありませんが、前後の表現を敬語にすると、かなり丁寧で礼儀正しい表現になります。
たとえば、以前の出来事について謝罪をしたいときは「この前はすみませんでした」よりも「その節は申し訳ございませんでした」の方が丁寧な表現です。
ちなみに、「その節は」は「そのせつは」と読み、「そのふしは」などの読み方をすることはないので注意しましょう。
「その節は」の使用例
「その節は」は丁寧で礼儀正しい印象を与える表現で、ビジネスシーンでは上司や取引先、顧客などに対して使うケースが多いです。
過去の出来事や時期を振り返って感謝や謝罪をする際に、クッション言葉として使われます。
しかし、何の前置きもなく「その節は」と切り出してしまうと、何を指しているのかわかりにくく、誤解が生まれやすいです。
使用する際は、どの時期や出来事について言及しているのか理解しやすいように、事前に具体的な状況や日時を明示しておくことが重要です。
具体的な使用例は以下の通りです。
【使用例1】
-
取引先:先週の会議は大変お世話になりました。
-
Bさん:こちらこそ、その節は大変お世話になりました。ありがとうございました。ご協力いただいたおかげで、現在予定通りにプロジェクトが進行しております。今後もどうぞよろしくお願いいたします。
【使用例2】
-
上司:前回のプロジェクトでのサポートは大変だったね。サポートしてくれて助かったよ。
-
Cさん:その節はご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。ご指導いただき、本当にありがとうございました。おかげさまで様々な事例を学ぶことができました。
このように、相手が話題に出した時期や出来事に対して「その節は」を使うと、過去に受けた協力や支援に対する感謝や、迷惑をかけてしまったことへの謝罪などを丁寧に伝えられます。
「その節は」「その折は」「その際は」の違い
「その節は」「その折は」「その際は」はいずれも特定の時期や出来事を指す言葉ですが、使われる時制は下記のように違いがあります。
- その節は:比較的近い過去における特定の出来事や状況、期間を指す。
- その折は:過去や未来における特定の出来事や状況、期間を指す。
- その際は:未来における特定の出来事や状況、期間を指す。
「その節は」は現在から比較的近い過去を指す際に使う言葉で、未来の出来事や時期に対しては使えません。
また、「その際は」は未来のみに使える言葉で、「その際は~します」「その際は~してください」といったように、相手に自分の予定や指示、お願いを伝えるときによく使われます。
一方、「その折は」は過去に対しても未来に対しても使用できる万能な言葉です。比較的遠い過去の出来事を振り返る際にも使え、「その折は~します」という表現なら、未来の出来事について言及することも可能です。
このように、「その節は」「その折は」「その際は」は時制に応じて適切に使い分ける必要があります。
それぞれの言葉を正確に理解して場面に合った表現を使うと、相手に伝わりやすく丁寧なコミュニケーションを取れます。
「その節は」をビジネスで使う時の注意点
「その節は」は、過去の特定の出来事や時期について言及する際に使用する表現であり、ビジネスでの丁寧なコミュニケーションに役立つフレーズです。
しかし、適切な場面を選んで使わないと誤解を招く可能性があります。
ビジネスで「その節は」を使う際の注意点を3つご紹介します。
- 身内同士やカジュアルな場面向きの表現ではない
- 近い過去に対しての表現なので未来に対しては使用できない
- 何に言及しているかを一緒に伝える必要がある
一つずつ詳しく見ていきましょう。
【注意点1】身内同士やカジュアルな場面向きの表現ではない
「その節は」は、主にフォーマルな場や目上の人に対して使う丁寧な表現なので、家族や友人、親しい間柄の相手に使うと、必要以上に仰々しい印象を与えてしまう可能性があります。
丁寧な言葉ゆえに、特に対面での会話で使うと違和感を覚えやすく、日常的な会話やカジュアルな場面での使用には向いていません。
ビジネスシーンであっても、同僚や部下、直属の上司といった親しい間柄との会話で使うと、形式ばった印象になり、不自然に感じられる場合があります。
その場の雰囲気や相手との関係性に応じて適切なシーンで使うように心がけましょう。
ビジネスシーンでは、部署外の上司や役職がかなり上の上司、取引先、顧客などに対して使うことで、言葉の効果が最大限に発揮されます。
【注意点2】近い過去に対しての表現なので未来に対しては使用できない
先にもご紹介した通り、「その節は」は、比較的近い過去に対して使う表現です。
具体的には、数週間から数ヶ月前の出来事や時期を振り返る際に適しています。
そのため、未来の出来事に対して「その節は」を使用することはできません。「今後のプロジェクトが始まったら、その節はお世話になります」といった表現は不自然です。
未来の出来事や時期を予想して予定を話したり、相手にお願いをしたりしたいときは、「その際はよろしくお願いします」「その折は予定通りに動きます」といったように「その際は」「その折は」を使うのが望ましいです。
時制を誤ると、相手に違和感を抱かせてしまう恐れがあるため、適切なタイミングで使用するよう心がけましょう。
【注意点3】何に言及しているかを一緒に伝える必要がある
「その節はありがとうございました」や「その節は申し訳ございませんでした」といった表現だけだと、何に対して感謝や謝罪をしているのかが具体的に伝わらない場合があります。
基本的にはすでに相手と話題にしている事柄について使う機会が多いですが、こちらから話題を新たに出して使いたいときは、「その節は」の表現を使う前に、具体的な状況や出来事を伝える点が非常に重要です。
たとえば、「先日の打ち合わせではA様にご助言をいただきました。その節は大変お世話になりました。ありがとうございました」と伝えることで、感謝の対象が明確になり、誠意が伝わりやすくなります。
特にビジネスシーンでは、誤解を防ぐために具体的な説明を心がけることが円滑なコミュニケーションにつながります。
ビジネスメールでの「その節は」を言い換えた使用例文
「その節は」は、以下のような別の表現に言い換えることができます。
- その折は
- 先日は
- 先般は
- 以前は
これらの表現は、「その節は」と同様に、ビジネスにおいて特定の出来事や時期に対する感謝や謝罪の気持ちを丁寧に伝える際に適しています。
しかし、それぞれ対象とする時期や状況に応じて使い分けをする必要があります。
その場の状況や相手との関係性も考慮して適切な言葉を選び、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
【例文1】その折は
「その折は」は、過去や未来の特定の出来事において感謝や謝意を伝える際によく使われる表現です。
「その節は」と同じく、比較的フォーマルな言い回しであり、ビジネスシーンや公式的な場面で使用されます。
特に、取引先や顧客などに対して使用することで、相手に対する敬意がしっかりと伝わり、良好な関係を築けます。
また、「その節は」が過去の事柄にしか使えないのに対して、「その折は」未来の事柄に対しても使用可能です。
ちなみに、目上の人に未来の事柄について言及するときに使う場合は、「そのような折は」という表現にすると、より丁寧な言い回しになります。
以下に「その折は」を使ったビジネスメールの例文をご紹介します。
- 参考
- 〇〇部長
お世話になっております。営業部の△△です。
先日はご多忙の中、○○のプロジェクトについて詳細にご説明いただき、誠にありがとうございました。
その折にお話しした新製品に関する資料をお送りいたします。
いただいたご助言により、社内の協力体制も一層強化され、スムーズに進行中でございます。
お忙しいかと存じますが、引き続きご指導いただけますと幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【例文2】先日は
「先日は」は、比較的近い過去について言及する際の表現です。
「現在に近い過去のある日」「この間」「この前」といった意味合いの言葉で、2~3日前から1週間ほど前までを指す場合が多いです。
「先般」よりも柔らかい印象を与える表現なので、幅広いビジネスシーンで活用できます。
自然な形で具体的な出来事について言及できるほか、親しみやすさを保ちながらも礼儀正しさを示せる言葉です。
以下に「先日は」を使ったビジネスメールの例文をご紹介します。
- 参考
- 〇〇様
お世話になっております。マーケティング部の△△です。
先日はお忙しい中、ご足労いただき誠にありがとうございました。
ご教示いただいた内容をもとに、新たに提案書をまとめましたので、お手数ですが添付資料をご確認いただけますと幸いです。
また、ご指摘いただいた点については改善し、次回の会議でより効果的な提案ができるように尽力いたします。
今後も引き続きご助言をいただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
【例文3】先般は
「先般は」は、「この間」「先頃」といった意味のかなりフォーマルな表現で、口語ではほぼ使われず、ビジネス文書などで使用することが多いです。
現在から近い過去の出来事を指しますが、具体的に何日ぐらい前かといった定義はありません。
対外的な取引や公式な場面で、相手に敬意を示しつつ過去の出来事について振り返る場合に有用です。
「先日は」と似た意味の言葉ですが、「先日は」が「時間・日時」に重点を置いているのに対し、「先般は」は「出来事」に重点を置いているという微妙なニュアンスの違いがあります。
以下に「先般は」を使ったビジネスメールの例文をご紹介します。
- 参考
- 〇〇様
お世話になっております。総務部の△△です。
先般は、〇〇についてご指導いただき、誠にありがとうございました。
ご教示いただいた内容をもとに、改善策を実行に移し、社内の業務プロセスの見直しが順調に進んでおります。
また、ご指摘いただいた箇所につきましては、現場の意見を取り入れつつ、より具体的な改善を実施中です。
今後とも何かお気づきの点がございましたら、引き続きご教示いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
【例文4】以前は
「以前は」は、「その時よりも前」という意味の言葉で、過去に起きた出来事に言及する際に使われます。
ビジネスシーンや日常シーンを問わず使いやすい言葉で、口語でも文書でも使用可能です。
「先日は」や「先般は」が現在に近い過去を指すのに対し、「以前は」はかなり前のことを指す場合もあります。
また、「以前」の時期は起算点の日時を包括します。つまり、この言葉を使うときが起算点となるので、「現在を含めて前」というニュアンスになる点にも注意しましょう。
「現在よりも前」と言いたい場合には、この言葉は使えません。
特定の時期や出来事を指す「その節」「その折」と比べて、対象となる期間が長いので、長期にわたる出来事や時期を指したい際に便利です。
以下に「以前は」を使ったビジネスメールの例文をご紹介します。
- 参考
- 株式会社〇〇
〇〇部 〇〇様
お世話になっております。株式会社△△の△△です。
お待たせしており恐れ入りますが、
以前よりお問い合わせをいただいておりました新製品の資料が完成いたしました。
本メールに添付いたしますので、お手すきの際にご確認いただけますと幸いでございます。
お時間をいただいてしまい、大変申し訳ございませんでした。
今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
「その節は」の英語表現をご紹介
「その節は」を英語で表現すると「at that time」や「on that occasion」「back then」などになります。
これらの表現は過去の特定の時期や出来事を指し示す際に使われるため、「その節は」と似たニュアンスです。
たとえば、「その節は(助けてくれて)ありがとうございました」という感謝の表現は「Thank you for your help at that time.」、「その節はご迷惑をおかけしました」という謝罪の表現は「 I ‘m sorry to have troubled you on that occasion.」などと表せます。
「at that time」は、過去の特定の時期を振り返るときに使用され、「on that occasion」は特定の出来事ややりとりなどについて言及する際に使われます。また、「back then」は具体的な時間や特定の出来事などを指す言葉です。
また、「その折は」も同じように「at that time」「on that occasion」で表現することが可能です。
以下は「その節は」を使った英語の例文です。
- Thank you very much for all your help at that time. It helped a lot. (その節は多大なご支援をいただきまして誠にありがとうございました。大変助かりました。)
- Thank you for all your help on that occasion. I finished the work quickly. (その節はお世話になりました。おかげで早く仕事が終わりました。)
- I really appreciated your help back then. (その節は助けてくださってありがとうございました。)
「その節は」は過去の特定の出来事や時期に対する謝意を伝えるのに便利な表現
おさらい
- 「その節は」は過去に対して感謝やおわびの気持ちを表したいときに便利な表現
- ビジネスシーンで使う際には具体的な出来事を明確にすることが大切
- 状況に応じた適切な使い方を心がけることが大切
「その節は」という表現は、近い過去を振り返ってその時期や出来事について言及する際に使う表現です。
特にビジネスシーンでは、お世話になったことに対して感謝を伝えたり、迷惑をかけてしまったことに対して謝罪をしたりする際に使える便利なフレーズです。
「この前」「この間」よりも丁寧な表現なので、前後の文脈を敬語にすると、目上の人に対しても使用できます。
しかし、この表現は過去の具体的な出来事や時期に対して使用するものであり、相手が何を指しているのか明確でない場合や未来を指す場合は誤解を招いてしまうケースもあります。
正しい言葉遣いを習得し、ビジネスシーンでのコミュニケーションを円滑に進めていきましょう。